椅 子
私・・・
どうしているのだろう
泣きたくて仕方ないのに
笑い方を教えて欲しいのに
私・・・
いつまでここにいるのだろう
・・・・ATUKO
あたしはあたしが大事だったから
あたしが壊れないように
壊れないように壊れないように
ただそれだけだったのに
ただそれだけだったから
ごめんね
・・・・海神いさな。
面影
この椅子にすわっていた人は
僕のとても大切な人だった
顔は覚えていないけれど
声も覚えていないけれど
忘れないようにと
好きだった緑のジャケットをかけてある
そのジャケットに顔をうずめると
懐かしい香りがしてくる
僕のとても大切だった人
僕を導いてください
僕に手を差し伸べてください
僕はそっと椅子を見つめる
弱い僕はまだこの椅子には座れない
まだ座れない
・・・・貴水水海
「片隅の椅子」
暗い部屋のその片隅で
椅子は主(あるじ)を待っている
主は後悔の中にいる
椅子は罪など問うたりしない
じっと帰りを待っている
主はやがて帰ってくる
肩をうなだれため息をつき
重い心で帰ってくる
椅子は罪など問うたりしない
主は椅子に縋りつき
やっと自分を取り戻す
椅子は主を抱きしめて
主はやがて眠りにつく
椅子は罪など問うたりしない
ただぬくもりで抱きしめる
・・・・ルナク
「穴」
穴があいてる
この心に、体に
私をえぐったその痛さが
一時
私に、生きる実感を与えはしたけれど…
冷えきっているわね
あなたのいた、その場所が
冷たくて
冷たくて…
手を伸ばす事が
怖くて出来ない
「…」
とても、たくさんの
おもいを抱えているけれど
言える所迄は
どうやればたどり着けるの…?
あなたの穴
あなたの形の穴が
元通りになってしまうのを…
「こんなものよ」と
私は、平気でいられない。
・・・・熱燗
ひそやかにあなたの上着掛けられて椅子はニ、三歩 歩いてみせる
・・・・ふるる
「指定席」
ちょっと出てくると言ったきり
この椅子に上着だけ残して
あなたはそれきり
どこへ行くとも言わないで
酒と煙草で色褪せた
しわくちゃのポケットには
今では珍しいマッチ箱
抱きしめられたとき
いつも感じたむせるような
あなたの匂いが懐かしい
帰ってくると思ってるのは
君だけじゃないんだよと
マスターは手も触れないまま
あなたの席はまだここにある
・・・・一筆