「家庭科でパジャマを作ります」


中学の家庭科でパジャマを作ることになった。
友だちとお互いに採寸しデザインを決め型紙をおこす。ここで先生のチェックを受けOKなら生地を買って
いよいよ製作だ。
私の持っていった型紙を見て「いいわよ。素敵なのが出来そうね。最後にみんなでファッションショーをするから
頑張ってね。」と先生が言った。

「今度パジャマを作るから、生地買って。」
「うちにあるかもしれないから、ソコ見てごらん。」
前はよく私の服を縫ってくれた母はアマリ布の入った箱を指差した。
探してみると可愛らしい柄や地味な柄、薄手の生地やジャケットにするような厚手の生地、随分いろいろあった。
作るのはパジャマだから上下で相当な生地がいる。
「あっ!コレ可愛い!!・・・けど、足りない。」「あっ!・・・あ、コレも・・・。」・・・
ぜ〜んぶ見てもちょうどいい生地は無かった。
「ヤッパリ無いから買って。」
しかし「こんなにイッパイあるじゃない!」という、母の言葉に「???」

母は少し大きめな生地をいくつか出して「これで後ろ身ごろができるでしょ、コレとコレで前身ごろのコッチとコッチができるでしょ、
袖はコレとコレ、ズボンはコレと・・・」
「嘘!!」思わず私は叫んだ。
「そんなの作れるわけ無いじゃない!」裁縫の時間になると自分の着物の裾を解いては縫っていた母に対して、
説得力がある発言とは思えなかったが、言わずにはいられなかった。
(素敵なのが出来そうって言われたのに・・・ファッションショーだってするのに・・・)
母は「大丈夫よ、パジャマはうちで着るもんだし。これで上手に出来たら次は新しい生地を買って縫えば?」
「ぜったいだめ!!買って!!無駄にはしないから、ちゃんと着るから!」
この言い合いは2週間ぐらい続いた。憂鬱な日々が・・・

その日学校から帰ると大きな袋に入った生地が置いてあった。
「買ってくれたの?!ありがとう!」「それでいい?」「いい、いい!!」
私の決めたデザインは半そでの夏物だったが、その生地は少し厚かった。色も思っていたのとはまるで違っていた。
それでもありがたかった。いやだなんて言える筈もなかった。

パジャマ製作に取り掛かると、結構難しかった。
でも、これっきりの生地だから、なんとしても成功させなければならなかった。
少し変なところもあったがとにかくパジャマが出来上がった。

ゆがんだり、いびつだったり、生地が厚すぎたりしていても
私はそのパジャマを着続けた。
着なければならない義理もあったし、意地もあった。
実家の押入れには、今もあのパジャマがしまってある。