給食のパン


小学校に入った頃は、確かまだ弁当持参だった。
そもそも新しく出来たばかりの団地の中の小学校は、まだ校舎も無かったので近所の小学校の中に間借りしてたっけ。
給食になったのはいつからだったかハッキリしないんだけど、とにかく“給食センター”から運ばれる昼食は美味しくなかった。
特にパン。
今のように御飯やいろんなパンは無かった。毎日ひたすら食パン二枚。
時々おかずに“ソフト麺“なるものが登場したけど、それでも食パン二枚は出る。
麺をおかずにパンを食う。ありえない食生活を強いられていたわけ。
ボソボソした食パンが大の苦手だった。
おかずで誤魔化して牛乳で流し込む毎日だった。
冷めてても、御飯の弁当が恋しかった。

あるときその“パン“が問題になった。
なにやらの添加物が入ってるらしい。
噂ではそれを摂取し続けると禿げになるとかならぬとか。(真実かどうかはさだかではないが。)
母親は今で言うナチュラル志向だったから、“添加物”に反応した。
「給食のパンは混ぜ物があるって。おかずはいいとしてパンの替わりにおにぎり持っていく?
自分で決めていいけど・・・。あのパンは禿げるらしい。」
私は動揺した。

(それはつまり、みんながパンを食ってる教室で一人おにぎりを食うってことか??)

どう考えても私にはそんな状況は耐えられそうもないと思った。
「パンでいい」
「禿げるかもしれないんだよ?」と母。
私はない頭で必死に考えた。
「みんなパン食べてるモン。禿げるときもみんな一緒ならいい。」
当時の私にとっての“みんな”とは同級生の範囲だったから、社会に出てから禿げてない人の中で
生活する事になるかもしれないなどとは考えなかった。

三歳違いの弟は「おにぎりにする。」と言った。
後で聞いたら、友達にはいじめられたりしなかったけど、反対にみんながおにぎりを羨ましがって
クラス中が騒然とした為に、先生に一人図書室で食べさせられたらしい。
気の毒なことだ。
母もそれについては「かわいそうなことをした。」と言ってる。

幸い弟はそれがきっかけでグレたり、不登校になったりはしなかった。
一年ぐらいしてパンは改められ、弟のおにぎり持参は終わった。
ガンコにパンを食べつづけた私は・・・今のところは禿げて
はいない。