飛び乗り
あれは高校の何年生のときだったかなァ。
私は吹奏楽部に入っていて、毎日授業の前に朝練があった。もちろん自由参加だったけど、たしかコンクール前で練習に燃えてたんだ。
その日はちょっと寝坊していつもの電車にも乗れなかった。
「やばい!練習する時間がなくなる・・・」私は電車を降りると走った。
駅から学校までは結構ある。歩道も無い道なのに車の行き来は随分あって、走れる幅はあまりない。
反対に駅へと向かう人もいるから、縫うようにして走った。と言っても、凄い勢いで走ってくる女子高生に大抵の場合相手のほうが避けてくれる。
学校までの途中にわりと大きな交差点があった。
私は、車さえ来なければ信号無視する勢いで突入していった。
「早く行かなきゃ・・・早く行かなきゃ・・・」
頭の中はただそれだけ。
周りの音も景色も、目に入り、耳に入ってはいても見えていない、聞こえていない状態だった。
「はっ!!」
突然正気に返ったときはもうどうにも避けられなかった。
そこには自転車にまたがった中年のおじさんが、むこう向きに信号待ちで止まっていた。
止まることなどこれっぽっちも考えていない私がそれに気付いたのは、あともう一歩行ったら自転車にモロニぶつかるっ!!ってところだった。
人間の脳ってコンピューターより早く考えるもんだ。
とっさに思ったことは「このまま行ったら自転車にぶつかって脚はずたずたになる!!」だった。
で、どうしたか。勢いがついているから進路はもう変えられない。私は両足をがに股のように開いた・・・。
ど〜〜〜ん!!走ってきた勢いのままにおじさんの背中へ体当たり。でも、足は大丈夫。開いたから。
おじさんは、そりゃあ驚いたよなあ。
朝日の中をほのぼのと自転車こいできて、のんびり信号待ちしてたらイキナリ後ろからものすごい勢いでド突かれて、
何かと思って振り向いたら全く知らない女子高生が、自分の自転車の荷台にまたがってんだから・・・。
あのとき、私ちゃんと謝らなかったような気がする。
あんまり恥ずかしすぎて、失敗というには大胆すぎて。。。
すっごい状態なのに、次の瞬間には自転車から飛び降りてなんにも言わずに、更にスピードを上げて走り去った・・・と思う。
確かな記憶が無い。
通行人や車の人には見られたはずなんだ。なんと思われただろう。
おじさんは、何を思っただろう。
爆走女子高生?今でなくて良かった。今だったら通り魔と思われるかもしれない・・・。