待合室


近所の病院の待合室は、いつもとても混んでいる。
そのときは、ぐりが風邪から肺炎を起こして、入院していた時だった。
「診察がありますから、外来に下りてください。」と、看護婦さんに言われて待合室にいた時である。

ものすごい混みようで、ガヤガヤとしていた。
ときおり放送で、「○○さ〜ん、○○ヨネさ〜ん・・・」と、会計をしているカウンターから声がかかる。

ぐりは、確か小学生だったかな。
腕には、点滴がついたままだった。

待合室の椅子に運良く座って、呼ばれるのを待っていたが、外来患者も多くてなかなか順番がこない。
そのとき、ふと前の長椅子に座ったおばあさん二人の会話が耳に入った。


A 「・・・そうですか〜。じゃあ、今日は?」
B 「ええ、今日はね、なんだか調べるって言われてねえ。チョウタンパをネ・・・。」
A 「そう・・・チョウタンパをねえ・・・。」



???チョウタンパ?
超音波じゃないのか?
ラジオじゃないんだから・・・。
私がくすくす笑っていると、ぐりも聞いていたらしく、こちらを見て声を殺して笑っている。
こうなると、もうその二人の会話から耳が離れられない。


A 「年取るといろいろねえ。」
B 「そうなのよ。うちのダンナもねえ、ほら、腎臓も悪いからずっと通ってるでしょう?大変よねえ。」
・・・・・・


二人の話は、ダンナのことから、孫のこと、近所の家のことまでとりとめも無く続く。
その間にも、「○○さ〜ん、○○ヨネさ〜ん・・・」の放送。この“ヨネさん”って、まだいないのかあ・・・。
待合室は、一向に空く気配はない。
「○○さ〜ん、○○ヨネさ〜ん・・・」・・・・。

二人の話は、まだ続く。


A 「病院って、時間がかかるからいやよねえ。」
B 「そうそう、診察してもらうのに随分待って、チョコット見ただけで、終わり。
      それで、薬でまた時間がかかるのよ。」
A 「そうよねえ。待ってる時間ばっかりよねえ。いろいろやる事だってあるってのにねえ。」


そうして、20分ぐらいした頃、片方のおばあさんが言った。

「ほんとにねえ・・・。っで、おたくお名前は?なんておっしゃるの?」

私とぐりは、顔を見合わせた。
今まで、こんなにもいろいろ喋ってて、結構家の中のことまで話し込んでいて、それなのに、友だちだったわけじゃないのかっ!?
どーゆーことよっ!私たちが目を丸くしているところに、更に追い討ちをかける言葉が聞こえてきた。


ヨネです。○○ヨネっていうの。

ええ〜っっっっ!?!?
さっきからズぅ〜ッと呼ばれてたんは、あんたかいっ!!


「・・・薬でまた時間がかかるのよ。」じゃあねい!!私たちがここに座ったときから、もうかれこれ30分は経っている。
その間、何度も呼ばれ続けていた名前じゃないかっ!

「さっきから呼ばれてますよ・・・」と、教えてあげようかとも思ったが、それどころではなかった。
私もぐりも、笑ってしまって笑ってしまって、どうにもならない状態になっていたし、あまりのおかしさをこらえる為に、
七転八倒していたぐりは点滴の管を血が逆流してしまっていた。

たのむよ・・・ほんと。