with 落合朱美

深すぎた落とし穴   曼珠沙華   香   月の猫   
日向のねこ   海に咲く月   羊飼いの歌



 「深すぎた落とし穴」


  何度も交わり
  知り尽くした筈の
  お互いの躰の

  その中の心だけは
  見抜けなかった
  愚かなわたしたち

  もはや
  目を合わせることもなく
  それでもなお躰を重ね
  更に深く堕ちてゆく

  永遠に辿りつく事のない
  深みへと・・・

 
  
 
詩/落合朱美   画/さち





  「曼珠沙華」


  炎の王冠を身に付けて
  心の奥底に湧き上がる
  情念をひそやかに隠して
  貴女は立っており

  もしも手折ろうとする者が
  あるならば
  その手が痺れるほどに
  見つめている

  物云わぬ花の
  気高きプライド

  ・・・ごらん
  あんなに燃えているよ

 
   

詩/落合朱美   画/さち






     「香」


  白雪の

   ひるがえし
  
       裾の

      のぞきみる

          素肌の

             香立つ


     浅き夢
    
      泡沫に消え
      
        残る香に

           ふりつもる

 

  

詩/落合朱美   画/さち






  「月の猫」


  丸めた背がたおやかに弧を描く
  ベルベットの黒い肌
  じっとして
  夜の音を聴いている翠の瞳

  その上目遣いに映る
  榛色の上弦の月から雫が零れて
  猫の目から涙が堕ちる
  おまえは何を悲しんでいるの

  つと手を伸べて触れたぬくもりは
  意外なほど優しくて
  思わず抱きしめたら
  おまえは小さく鳴いた

  目に映る月に
  おまえはきっと
  故郷を見ているのだね
  生まれ出ずる前にいた処なんだね

  今宵はこうして私の腕に
  抱かれていてはくれまいか
  この手を放してしまったら
  おまえも私もまた独りぼっち


  
詩/落合朱美   画/さち






 
 
〜日向のねこ〜  


   お留守番のねこ
   ぽかぽかお日様
   ひとり遊びにも
   飽きてしまって
   たいくつなねこ

   にゃあとひと声
   鳴いてみたけど
   誰もいない家は
   がらんとしてて

   さみしいときは
   お昼寝にかぎる
   ひなたのねこは
   お留守番のねこ


    

詩/落合朱美   画/さち






    海に咲く月  


    静寂の海
    咲いて波間に
    ほの白い影を落とす月

    寄せる波は
    真夏の喧騒
    返す波は
    秋の訪れを
    それぞれに伝えて

    移ろう季節を人知れず
    見送り
    迎える

    久遠の光は
    我が身を誇るでもなく
    散ることもせずに
    ただ
    微笑を湛える

  


詩/落合朱美   画/さち






   「羊飼いの歌」


   帰り道に迷って
   泣いてる子羊
   あの空の羊雲は
   違うよ
   君の帰るところじゃない

   涙を拭いてよく見てごらん
   発見はいつも
   ほんの足元からはじまるんだ
   背伸びをしてると
   ほんとのことを見逃してしまうよ




詩/落合朱美   画/さち