発端
2週間前の日曜日、ハイメは最新のお気に入り女性(アリシア。情け容赦のない実名報道)を我々のフラットに招き、のランチでもてなしていたようである。そこにアダムが加わり、3人でランチをつまんでいた。わたしは、本来ここの住人であるにも関わらず、招かれざる客のような気分になったし、勉強があるので図書館に向かった。008の典型行動の一つであるといってよい。夜10時過ぎに帰宅すると、彼らはどうやらアダムの部屋で映画鑑賞中のようであった。声から判断するに、女性が一人増えていた。後日かかってきた電話をわたしが取ったのだが、おそらくマリーという名であろう。アリシアとマリーは12時前後に帰っていった。ハイメは案の定、はしゃいでいた。彼は好意をもった女性に言及するとき、She is nice. とはしゃいで繰り返すので、分かりやすい。
わたしの月曜日は、今日が月曜日であると認識することから一日が始まる。なにしろ11時30分から17時30分まで二コマ・6時間連続の講義である。気力と体力の限界に挑む月曜日。ほんのわずかなバイオリズムの変化やフィジカルコンディションの調整の失敗がパフォーマンスの低下を招く。"Rainy Days and Monday"や"Manic Monday"など月曜日を主題とした歌があるが、これもバイオ―フィジカル・コアリレーション仮説と深い関係があるに違いない。というわけで、月曜日一発目、ジルちゃんの授業で発表した。この授業には5人しか登録しておらず、毎回全員発表が義務付けられている。人数は少ないし、ジルちゃんは寛容な先生なので、よい練習になると思ってやっている。さて、発表はと言えば、課題文献で扱った理論を任意の国に応用するのがその内容である。当然、わたしは日本を選んだ。当地に来て初めて比較優位を発揮できると踏んだのだ。今回は(というふうに過大評価させてくれ)、ちょっと準備不足だったので、グラフでごまかしつつ、アドリブで(シドロモドロともいう)あることないことをかまし、どうせみんな日本のことなんか知らないし、なんとか事なきを得た。質問も捌いた。気分はジョブトークである。が、授業の後、ジルちゃんに「とっても面白かったから、参考にした文献を読ませて」と言われ、手にしていたコピーを取り上げられてしまった。あちゃぁ。適当に端折って、正確に読み込んでないのがばれちゃうよん。まずいっす。ちゅうか、わたしの発表を聞いても分からなかったから、あえて文献で確かめたくなったのであろう。やがて悲しきプレゼンかな。
読者の皆さんは既にお忘れかもしれないが、本誌の最重要テーマは「教務助手の悲喜こもごもをリアルタイムで描き出すことにより、『土佐日記』から連綿と連なる日本日記文学の新たな可能性をネット時代に見出す文学的営為」である。わたし自身も今の今まで知らなかったが、そういうことである。なぜ、突然こんなことを言い出したかというと、今学期のTAスケジュールが決まったからだ。今学期は "Developing Areas/Introduction" でTAをやる。550人が登録している。採点の悪夢がよみがえる。カンファレンスはやはり4つ。木曜と金曜に二コマずつ。講師はセドリック。彼のことはクルマちゃんと呼ぶか、小公子と呼ぶか散々迷ったが、やはりクルマちゃんの勝ち。彼のレクチャーは大変わかりやすい。声は大きく、身振りも大きく、板書も大きい。大きいことはいいことである。大は小を兼ねると言うからな。アメリカの子供に大か小かを尋ねるときは、"Number 1 or Number 2 ?"と訊くらしい。元ルームメイトのマットが教えてくれた。もちろん、日本が誇る最良の中規模英和辞典、「リーダズ英和辞典+リーダズ・プラス」(研究社)にも載っている。1が小で2が大だ。make[go, do] number one/two.と言えばよい。両方したいときは、中を取って1.5なのか、足してナンバー3なのか、そこまでは教えてくれなかった。マットめ。中庸を旨とするわが儒教文化では1.5であると考えがちだが、累積に価値を見出す米国文化は3を取るのが正解である。管見では。ここ、大事ね。中間試験に出るかも。こういったことをカンファレンスの初日にレクチャーする予定である。楽しみ。うひ。
早いものでこのホームページを開設して二週間が過ぎた。一般にHPをもつ動機のひとつに、自己顕示欲を満たしたいという欲求があろう。HPを開設して間もないホームページビギナー(HPBs)は、たとえば google の検索で自分のページが引っかからないかな、などと思い立ち、いそいそと自分のページタイトルを打ち込みがちである。ビギナーズラックだよ。えへ。などと呟いているかもしれない。だがビギナーがそのような自己愛に満ちたウェッブ検索に走ったとしても責められまい。たとえ自分のページが引っかからなくても、自己愛を満たしてやることは、精神衛生上ないがしろにはできないのである。そして意外な発見があり、世界が広がるかもしれない。わたしの場合がそうであった。なんだよ、おまえもやったのかよ、自己愛検索。えへ。というわけで、わたしは『修士の異常な愛情』というコメディを上演する劇団が、この世に存在することを発見した。副題はもちろん「いかにしてわたしは心配するのをやめて喜劇を愛するようになったか」である。
風邪などをひいて、なおかつ、てんぱっていたのでスシは延期になった。ジェイにはすまないことをした。そういえば、去年もこの時期に風邪をひいた。鼻風邪だったのも同じだ。あなたは風邪で鼻が詰まった状態で飛行機に乗ったことがありますか。わたしはある。あれは地獄である。耳の奥から後頭部にかけて、バールのようなもので繰り返し殴られるような鋭い痛みを受けながら五大湖上空一万フィートを飛ぶのは心地よいものではない。スーパーマンだって風邪っぴきのときは空を飛ばないはずだ。It's not easy to be me. で、バールのようなものってなんだ。知らないのか。知りません。
それでも僕が下校時に娘を迎えに行くと、ダディといって抱きついてくるので、ささやかだけれど幸せな瞬間を味わえます。送り迎えの車の中では娘のお気に入りのブリットニー・スピアーズの歌を一緒に歌います。"I'm not so innocent"振り付きのやつ。ダディは発音が下手ね、とため息をつきやがる。ほっとけ。