英語ではお代わりを a second というが、当地にはその名も『お代わり』というカフェがある。昨日、晩飯に誘ったものの風邪っぴきのジェイに振られたわたしは、その痛手を勉強で癒すべく図書館に向かった。途中、サンドウィッチ・チェーンのサブウェイに寄った。わたしとしては珍しく、ボーナス・スタンプを集めており、6インチのサンドウィッチが無料になった。ジェイに振られた分を少し取り戻した気がした。図書館の閉館時間までミーちゃんの比較政治の文献を読む。ヨーロッパ統合をめぐる各国の合従連衡を分析するには、左派―右派と超国家主義―国家主義という二つの軸が有効、というお話である。アイデアをめぐる合従連衡と読み替えることも出来よう…。土曜日の図書館は9時45分に閉館である。向学心に燃えるわたしはこのまま帰宅するにはもったいない気がして、カフェで読書を続けることにした。聖通りの『お代わり』に行く。24時間営業の店である。大変込んでいたが、カウンターに一人分の空席を見つけて、早速読書を再開した。
そうではないのだ。わたしは、こう言うべきだったのだ。さっきはコーヒーをありがとう。何時に仕事が終わるの?よかったら、朝食を食べにいきませんか。今度はわたしがおごります…。わたしという男は、まったく気が利かない。このようにして人生は過ぎていくのであろうか。村上春樹の短編小説『On Seeing A One Hundred Percent Perfect Girl One Beautiful April Morning』を読みたくなるのは、こんなときである。
Y parlent avec des mots precis フランス人ってさ、きちんとした言葉づかいで話すし
Puis y prononcent toutes leurs syllabes 全部の音節を発音するのよね。
A tout bout d'champ, y s'donnent des bis 何かにつけてはキスするし、
Y passent leurs grandes journees a table 一日中何か食べてる。
Y ont des menus qu'on comprend pas 私たちの知らないメニューもあるし、
Y boivent du vin comme si c'etait d'l'eau 水のようにワインを飲んで
Y mangent du pain pis du foie gras パンとフォアグラを食べるのよ。
En trouvant l'moyen d'pas etre gros でも太らない方法を知ってるの。
Y font des manifs aux quart d'heure 街のいたるところで
A tous les maudits coins d'rue しょっちゅうデモ行進してるわ。
Tous les taxis ont des chauffeurs タクシーの運転手は乱暴な運転で、
Qui roulent en fous, qui collent au cul 前の車にぶつかりそうなくらいよ。
Et quand y parlent de venir chez nous そんなフランス人がケベックに来る目的は
C'est pour l'hiver ou les indiens 冬とインディアンしかないの。
Les longues promenades en Ski-doo スノーモービルか
Ou encore en traineau a chiens 犬ぞりで長いお散歩よ。
Ils ont des tasses minuscules フランス人ってさ、とっても小さなカップと
Et des immenses cendriers とっても大きな灰皿を持ってるのよね。
Y font du vrai cafe d'adulte 大人しか飲めない苦いエスプレッソを淹れて
Ils avalent ca en deux gorgees ふたくちで飲み干すの。
On trouve leurs gros bergers allemands フランスでは、大きなシェパードや
Et leurs petits caniches cheris ちっちゃなプードルを
Sur les planchers des restaurants レストランや食料品店、
Des epiceries, des pharmacies 薬局の床で見かけるわ。
Y disent qu'y dinent quand y soupent フランス人ってさ、夕ごはんのことを昼ごはんって言うし
Et y est deux heures quand y dejeunent 朝ごはんは昼の2時なのよね。
Au petit matin, ca sent l'yaourt 朝はヨーグルトのにおいでいっぱいだし、
Y connaissent pas les oufs-bacon ベーコンエッグを知らないのよ、彼ら。
En fin d'soiree, c'est plus choucroute 夜のお食事はザウアクラウト、
Maigret d'canard ou escargots アヒルの赤みかエスカルゴから始まって
Tout s'deroule bien jusqu'a c'qu'on goute すべては気味の悪い子牛の頭を
A leur putain de tete de veau 味わうまで続くの。
Un bout d'paupiere, un bout d'gencive まぶたのかけらに歯茎のかけら
Un bout d'oreille, un bout d'museau 耳のかけらに鼻面のかけら
Pour des papilles gustatives ケベック人の舌には
De quebecois, c'est un peu trop ちょっときついはね。
Puis, y nous prennent pour un martien フランス人ってさ、私たちのことを火星人だと思うのよ
Quand on commande un verre de lait 一杯の牛乳を頼んだり
Ou quand on demande : La salle de bain 洗面所はどこですか?
Est a quelle place, S.V.P ? って聞いたときに。
Et quand ils arrivent chez nous ケベックに着いたら
Y s'prennent une tuque et un Kanuk 毛糸の帽子とカナック の上着を奪い合うしさ、
Se mettent a chercher des igloos エスキモーの氷の家を探しに行って、
Finissent dans une cabane a sucre 結局メープル小屋にたどり着くのよね。
Y tombent en amour sur le coup ケベックの森と湖に
Avec nos forets et nos lacs 一目ぼれするし、
Et y s'mettent a parler comme nous ケベック方言で「くそったれ」ってどう言うかを
Apprennent a dire : Tabarnak まるで私たちに教えるかのように言うのよね。
Et bien saoules au caribou カリブー や
A la Molson et au gros gin モルソン、強いジンを飲んで酔っ払うし、
Y s'extasient sur nos ragouts 豚足のシチューと
D'pattes de cochon et nos plats d'binnes 豆料理にうっとりするの。
Vu qu'on n'a pas d'fromages qui puent ここには悪臭を放つチーズがないけど、
Y s'accommodent d'un vieux cheddar 古いチェダーチーズで我慢してくれるし、
Et y se plaignent pas trop non plus ケベックの代わり映えしないカフェにも
De notre petit cafe batard あまり文句は言わないの。
Quand leur sejour tire a sa fin 彼らの滞在が終わるころ
Ils ont compris qu'ils ont plus l'droit 私たちのことをカナダ人って呼んじゃいけない
De nous appeler les Canadiens ことの意味が分かるの。
Alors que l'on est quebecois だって私たちはケベック人だもの。
Y disent au revoir, les yeux tout trempes 目を潤ませて、また会いましょうって言うのよ、
L'sirop d'erable plein les bagages メープルシロップをかばんいっぱい詰め込んで。
On realise qu'on leur ressemble 私たちがフランス人に似ていることにふと気が付いて、
On leur souhaite bon voyage 彼らの旅の無事をお祈りするの。
On est rendu qu'on donne des becs 私たちも、いつものように
Comme si on l'avait toujours fait 彼らにキスするわ。
Y a comme un trou dans le Quebec でも、いまいましいフランス人がいっちゃうとさ、
Quand partent les maudits francais 何だかケベックにぽっかり穴が開いたようで寂しいわね。
Lynda Lemay の du coq a l'ame を手に入れた。聖通りのHMVに行ったのだが、なかなか人気のある歌手らしく、CD棚は三列もあった。早速ヘビーローテーションで聴いているが、軽快なポップスとして、Ailleurs は出色の出来である。一方で彼女はユーモアのセンスもあるようだ。 Les Maudits Francais という曲のライブ録音では、観客が大いに沸いていた。かいつまんで言えば、いや、わたくしのほぼゼロに近い公用語知識からして、かいつまむしか方法がないんですけどね。こんな所で見栄を張ってどうする。彼女はその歌の中で、日ごろから楓の葉っぱに愛着を持てず、異邦人の感覚を拭えない「王の娘」の末裔が、レストランで遭遇する悲喜こもごもを面白おかしく、かつ当地での悲哀を背景にしつつ、そのアンビバレントな感情をやや諦念がかったユーモアで客観化してみせている。見事としか言うほかあるまい。自らの境遇を一歩引いたところから客観化して笑いにするというのは、ダウンタウンをはじめとする一部の大阪芸人にしかできない高等技術である。アングロ=サクソンや東京の笑いは他人への嘲笑を共有するという一点に収斂するので、技術を必要としない。リンダ、おそるべし。吉本がスカウトに来るかも知れぬ。んなわけねぇよ。ともあれ、一節ごとに笑い声が起きるので、これは是非とも翻訳が望まれる。