「数学のひろば」 12年の歩み



2004/01/30   掲載開始         .
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§1  奈良教育大学の「幾何学展」

 1982年、奈良教育大学に勤めていたとき、私は知恵の輪に関心を持ち、
自分で作ろうとしていた。工業技術の金属の先生にお願いして、スポッ
ト溶接を使わせてもらって、太い針金を切って、まげて、くっつけて、
紐の輪をはずせという知恵の輪を、何とか作り上げることができた。ゼ
ミ生がよく協力してくれた。

 円周率を6万桁だったか10万桁だったか、求めたことがあった。当
時は MS-DOS 上で動く N88BASIC で、マチン法を使った。1次元配列に
上限があったため、任意の桁まで求めよというプログラムにはできなか
った。クリスマスにスイッチをいれて、正月7日過ぎに出てきたら長い
連続紙に出力が印字されていた。9日間かかっていた。
 隣の研究室に若い代数の先生がいて、アセンブラ(機械語)で同じも
のを求めるプログラムを組んだ。2時間で結果が出て、しかも私の結果
と一致することまで確認できたという。「だから、菅原さんの結果は正
しかったよ。何桁でも求めることはできるけど、出しても比べるものが
ないからね」

 複素関数を、実部と虚部の等高線として、直交する縞模様で表すこと
に興味があった。実部の整数部分が偶数か奇数かを紅白の縞模様で表し、
虚部の整数部分が偶数か奇数かを青白の縞模様で表す。すると双方の縞
模様は互いに直交する。いわゆる「等角写像」である。
 対数関数は零点と無限遠点で同心円が現れるから、複素関数の前に対
数関数をつけると、零点を見つけることもできる。

 高次元の多面体は、そのころから、私が毎年卒論のテーマとして採用
していたものだった。3次元空間の普通の多面体を、2次元平面に表す
には
   1 見取り図   2 展開図  3 位相的展開図
の3通りが考えられる。4次元空間の多面体を3次元空間に表そうとす
ると、やはりこの3通りを試みることになる。これらは、抽象的な対象
である4次元空間を認識しようとする絶好の教材といえる。

幾何学展 
 幾何学展    奈良教育大学にて

幾何学展 
 幾何学展    奈良教育大学にて

 これらを数学の展示物に説明をつけて、展示会ができないだろうかと
考えた。大学祭の折、「幾何学展」と名づけて小さな教室に展示したが、
一般の人々が理解できる説明などというものは、そう簡単にできるもの
ではないことを思い知った。
     今宵ちょっぴりインテリジェンス
 私のところの院生がつけてくれた「幾何学展」のコピーである。




§2  長崎大学での「物理まつり」と学部紹介

 1992年、長崎大学に転勤した年の秋、第2回「物理まつり」が開催さ
れた。カップラーメンの容器をスピーカーにして有名になった福山先生
の主催という話を聞いて、ここにも似たことを考える先生がいらっしゃ
るとうれしくなった。理科教育を考える中学校の先生方が協力している
と聞いて、なるほど、そのくらいの組織力が必要だろうと思った。

 18歳人口が減っていて、どこの大学も学生の募集に苦労する時代が来
る。そこで学部紹介という行事を企画せよという指示が来た。見ただけ
である程度関心を引く教材を研究しておくことが不可欠であることは明
らかだった。来年の「物理まつり」に合わせて、「幾何学展」の続編を
開催することを考えていた。


§3  ひろばのあゆみ

 1993年 9月15日  51番教室  「物理まつり」と一緒に

 数学のひろばはこのとき呱呱の声を上げた。

 とにかく、みんな、何か自分の展示物をひとつずつ用意しようという
ことで始まった。

 黄金分割についての話題を集めた報告もあった。

 数学で使われる記号が、いつ、どこで、誰が、どういう機会に使い始
めたかというような話題で、模造紙いっぱいに説明があったりして、教
育学部らしいなあと思った記憶がある。理学部では、そういうことは、
専門の新しい概念について以外は、あまり問題にされない。

 植田先生が、「12枚の硬貨のうち1つだけ他と重さの違うものが混
ざっている。天秤を使って3回でそれを見つけよ。」というクイズを出
した。これはよく知られたクイズである。植田先生はさすが数学教育の
先生だと思い知らされたのは、実際に天秤と、12枚の硬貨に相当する
ものを用意されたことである。目の前にモデルがあることで、参加者の
態度はがらりと変わる。数学の教官は理屈で考えるから、モデルは却っ
てわずらわしいと思ってしまう。一般の人々の目の高さで見ることがで
きなければならない。





 1993年11月20日  51番教室
    11月21日  51番教室

 フラクタルを展示している。自己相似性のある図形である。UNIX 上
のC言語で、ジュリア集合の図を描いて、それを展示していた。川田君
がカリフラワーを展示したのが面白かった。

 針金の枠に石鹸膜を張る実験もここでやった。クーラン・ロビンスの
「数学とは何か」にのっている極小曲面の実験である。
 正3角形、正方形、正5角形、正6角形をつないで多面体をつくる工
作もここで採用している。ただし、材料は工作用紙であって、今日のよ
うなきれいな材料ではない。

 ゼミごとに出し物を用意したから、学生はかなりきつかったに違いな
い。いくつかの多面体で、立方体の容器の中を充填する遊びは、かなり
高度であった。

 51番教室で打ち上げ反省会をした。女子が焼きそばを作ってくれて
男子が手伝わなかったという印象がのこっている。





 1994年11月12日  工学実験教室
    11月13日  工学実験教室

 学生の準備にかける意欲は高く、会場の飾りつけなど、夜遅くまでか
かって準備していた。数式処理ソフト MATHEMATICA で作ったトーラスの
カラー拡大コピーの図がシンボルマークになった。
FA君が4年生と3年生を引っ張った。

 大学の先生方とその家族が見に来てくださった。これは全教官のメー
ルボックスへ案内を入れたため。それに反して、一般の小学生やそのお
父さんお母さんの参加がほとんどなかった。この時点では、小学校に大
量のチラシを配るという発想がなかった。
 知恵の輪を解く解説のビデオを作っている。放送部にいたというTM
さんが、ビデオカメラの扱いと、テープの編集の技術を持っていたので
これが可能になった。

 打ち上げ反省会は23番教室で、もつ鍋。これも計画の中に組み入れ
てあったからとてもスムーズにできた。撮影したビデオも、テレビを持
ち込んでみんなで見ることができた。

 




 1995年11月11日  工学実験教室
    11月12日  工学実験教室

 準備にエネルギーのすべてがとられて、宣伝が行き届かず、もっとも
一般の参加者の少ない開催となった。K君が自分のバイト先の生徒たち
を誘ってきてくれたのが大きな救いとなった。
 欠損チェス盤は面白い企画。数学的帰納法の考え方の教材になる。

 打ち上げ反省会はA君主導のキムチ鍋。

 「数学のひろば」の一番苦しい時期だった。






 1996年 8月 5日  長崎西高校
     8月 6日  長崎西高校

 日本数学教育学会全国大会が、長崎市で開催された。「数学のひろば」
は、会場のひとつである長崎西高校で、特別参加ということになった。
 長崎5高校から、それぞで約10名ずつ集まってもらい、その計約50
名の高校生に説明を担当してもらうことにした。説明を担当するからに
はまず内容を理解してもらわなければならない。いろいろな企画のそれ
ぞれを、全員に徹底するのはかなり難しく、しかし機械的に役割を割り
振るのも生徒の主体性を損ないそうな気がして、結局中途半端な状態で
本番に望むことになった。それでも、大学生と交流しながら、異なる高
校の生徒が、一同に会して数学の世界に浸った意義は多きかっただろう。

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 会場は風通しが悪く、異常に暑かった記憶が強い。しかし全国から集
まった小、中、高、大の数学の先生方に、「数学のひろば」を見ていた
だけたことはたいへん嬉しかった。

 スピログラフ。大きな円の中で、小さな円板を、歯車の歯がかみ合う
ように回転させる。小さな円板の中の小さな穴に入れた鉛筆の先が曲線
を描く。ユークリッド互除法とも関係の深い教材。パソコンでは、二つ
の円の歯の数の比を、自由に与えることができるので、会場にパソコン
を持ち込んで実験している。
 モアレ模様。二つの縞模様が干渉しあってつくる第3の縞模様。波の
ようでもあるし、木目の様でもある。

 奈良教育大学の卒業生が高校教師として顔をみせ、石鹸膜の実験が興
味深いといろいろ試していた。
 滋賀大学の院生3名が見に来てくれた。本学の院生H君S君や学生と、
西洋館の中の店で、交歓会がもてて、楽しかった。




 1996年11月16日  工学実験教室
    11月17日  工学実験教室








 1997年 8月11日  高校生 自然の家 参加25名
     8月12日

 長崎西高校で「数学のひろば」を開催した時に協力して下さった先生
方に、今後の進むべき方向を相談したとき、夏休みに諫早少年自然の家
で県下の高校生を集めて何か開催したらという案があった。
 
 それが実現したのが、翌年の夏である。
 参加は5つの高校から、計25名の参加があって、出だしはまずまずで
あった。
 










    10月10日  11番教室 朝日新聞
    10月11日

 1998年 8月10日  高校生 自然の家
     8月11日

    10月10日  11番教室  矢竹 秋宗 
    10月11日

 1999年 8月 6日  高校生 自然の家
     8月 7日

    10月27日  西高校 自然の家 
    10月28日

 2000年 6月25日  科学館

    10月23日  西高校 自然の家 平岡 福島
    10月24日

 2002年 1月20日  科学館
 
 2002年 6月23日  科学館

 2003年10月20日  西高校 自然の家 張 神埼 
    10月21日    

 2003年10月25日  11番教室 廣橋 神門

 2004年12月12日  11番教室 上杉 藤田

  「算数のひろば」 をご覧ください
 





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