58号
小さいから楽しいホテルの経営』
                             平成16年12月10日
                                     vol058
                                   金曜日発行

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[小さいから楽しい。古いから味がある
         大きいホテルに負けるな!]
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             飲食サービス8
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今までは、レストランの運営委託契約についてお話してきました。
今回も前回の続きで、請負契約のことを少し詳しくお話します。
特にレストラン責任者との雇用関係を「請負契約」に変えた場合の
ことを検討してみます。

どこでも、レストランは「待ちの商売」になりがちです。
スタッフは、お客様がいてもいなくても、あらかじめ決められた
シフトに従って勤務します。

ホテルレストラン部門の調理人も、またホールのスタッフも、お客
様が来なくても自分の責任とは考えません。働いた時間だけ給料は
もらえます。

レストランの店長はお客様を獲得するために、いろいろ企画します。
しかし、売上が上がらなくても決められた給料は支払われます。

レストランで働く者は、売上を上げることは大事だとの認識はあり
ます。しかし、認識するだけでそれは自分のものになっていません。
経営者や支配人だけが悩みます。

そこで、ホテルの宿泊部門とレストラン部門の就業規則や給料体系
を違えることがポイントでないかと考えます。

宿泊の場合は前もって宿泊営業等の「種まきや工作」は比較的容易
に出来ます。そして予約ということで前もって稼働率の予想が立ち
ます。

しかし、レストランはほとんどの場合「その日暮らし的な営業」で
あると思います。だから「水物だ」といわれます。

季節ごとの「イベント企画」や「ファン作り」をしたり、新しい料
理メニューの開発に努めたりすることを、レストランの店長や調理
人はほとんどしてきませんでした。

そして、端的に言うと、小さいレストランの業績は調理人で決まり
と言っても過言ではないでしょう。

そこで、言われただけのことをすれば、自分の仕事は終わったと
いう調理人の考え方を変えなければ、利益体制は作れません。

部門別に就業規則や給料体系を変えるということは、大きなホテル
の場合は難しいでしょう。
しかし、小さなホテルの場合は比較的しやすいと思います。

それで調理人をレストランの責任者として決め、調理人個人と業務
の「請負契約」をするのです。

「請負契約」になると、会社と従業員という関係ではなく、事業主
と事業主との契約関係になります。
前回までお話していました「運営委託契約」と同じです。
ただ、この場合は相手が個人ということです。
この社員を「業務委託社員」と呼びます。

ホテル側は、この「業務委託社員」に対しては、法律上有給休暇も
与えず、また残業賃金を支払う必要もありません。
また社会保険料もホテル側は負担する必要はありません。
「業務委託社員」は一人の事業主なのです。

それでも、「業務委託社員」は設備投資も保証金もなく、自分のレ
ストランを運営出来るわけです。

普通、店舗を借りてレストランを始める時は、毎月の借家料の他、
設備投資資金、敷金や保証金が必要です。

調理人の中でヤル気のある人は、自分の奥さんや子供達の協力をも
らい、頑張れます。

社員のような安心感はなく、社会保険も国民保険になります。
休みも決まったようにもらえるわけではありません。
でも、頑張れば頑張るだけ自分の収入が増えるわけです。

独立志向の調理人は沢山います。「業務委託社員」制度はその人た
ちにその環境を提供することにもなります。

一般的に、レストランを賃貸で経営する時、賃貸料金が収入の10
%位であるのが理想といわれています。
でも、なかなかそのような条件の店舗物件を見つけるのは容易では
ありません

ですから、ホテル側に支払う施設使用料が、売上の10%でも決し
て大きな負担になるというわけではありません

ただし、注意しなければならないのは、この「業務委託社員」の契
約をしても実際の運用を間違えますと、「業務委託社員」ではなく
普通の「社員」としてみなされ、ホテル側が労働基準法違反とみな
される恐れがあります。

例えばホテル側がレストラン社員の休日を管理するとか、ホテル指
定の制服を着るとか、レストランの運営上、経営上の事柄に対して
管理しているとみなされると、「請負契約」ではなく、「雇用契約
関係」があるとみなされます。

ですから、ホテル側はレストランの「業務委託社員」との間に業務
取決め内容をあらかじめ文書にして取決めしておくことが大切です。

これまでホテルにおける「飲食」についてお話して来ました。
とりあえず「飲食」については今回で終わりますが、ホテル内のレ
ストランの活用について、以前から考えてきたことがあります。
次回はそのことについてお話します。


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□■編集後記■□
今回までレストランの運営のことについて、少し長く書いてきました。

私はホテルの支配人としてレストランを管理した経験の他に、20
年位前にホテルにある和食堂の店長をした経験がありました。
それで少し力が入りました。

それは新規ホテルのオープンに伴う和食堂の開業でした。
それまでサービス業の経験もなく、素人のような状態でこの業界に
入りました。
ですから、その時は年配の仲居さんや経験豊富な部下の助けを借り
てなんとか開業することが出来ました。

初めは、来店されるお客様の応対ばかりに追われていました。
そのうち、開業当初は来ていたお客様も、徐々に減ってゆきました。

その状態は「待ちの商売」そのもので、来店されたお客様へのサー
ビスだけを考えていました。積極的に集客の仕掛を作るとか、何か
をするということはありませんでした。
その時の調理人もレストランにお客様が入ろうが入らないだろうが
関係ないという態度でした。

その頃の調理人は、ほとんどが自分の調理の親方がいて、その親方
の指示で動いていました。職場として勝手にホテルやレストランを
選べると言うものではありませんでした。
親分・子分といった狭い世界で行きていました。

そのような特殊な世界では、ホテルの経営者はその親方に依頼して、
調理人の派遣をお願いするのです。

ですから調理人に対する人事権はホテル側にはありません。
会社の方針や指示にも、自分が納得しなければ従いません。

お客様の「美味しい」との評価に対しては喜びますが、反応に評価
が悪いと、「素人に何がわかるか」という言葉を平気で口に出しま
す。

ホテルの総支配人との意見が合わないということで、明日結婚式の
予約が入っているというのにもかかわらず、平気で「調理場総引き
揚げ」を行なうこともありました。

幸いにも、私がいたそのホテルではありませんでしたが、調理人が
皆いなくなり、大変な思いをしたホテルを何件も知っています。

ですから調理人がネックになって業務改革が出来ないということも
実感しました。

でも、その中にヤル気のある調理人はいます。
調理人の全ての人が、ホテルやレストランの調理長になれるわけで
はありません。
また、少し歳を取ると若い人にその座を渡さなければならない時も
あります。

そのような時も、ヤル気のある調理人にとっては独立して自分の店
を持つという夢はあります。
私が今回お話した「業務委託契約社員」という制度は充分な資金力
のない人にとっては遣り甲斐のあるものだと思います。

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