6号
『小さいから楽しいホテルの経営』
vol006
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具体的なお客様の作り方2
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『5号』の続きです。
◆3・ニューシニア向け商品の開発
●これからますます定年で退職される60歳以上の人達が増えて
きます。60歳以上の人達はお金がある年齢層です。
日本人の個人金融資産は1300〜1400兆円と言われていま
す。その約72%を50歳以上の世代が保有して、60歳以上だ
けでも47%を占めるとのことです。(1995年度)
●今までのお年寄はあまりお金を使わないで、節約をしてきた人
達が多いかと思います。子供や孫のために残していたのでしょう。
●でも団塊の世代がその年齢層になっていくと、ニューシニア層
と言われ、もっと自分のためにお金を使って、楽しく生きたいと
思っている人達が増えてきます。
●その人達は今までと違って、自分流の生活を好みます。
旅行もいろいろ経験してきた中から、自分に合った旅行をしたい
と思っている人たちが多いはずです。
●このニューシニア層をターゲットにした商品作りが新しい客層
開発になりそうです。
●これまでの旅行の主流は「パック旅行」と言われる団体旅行で
した。
この旅行は価格は安いのですが、時間に追われながらのモノなの
で、自由が利きませんでした。
●[パック旅行]に飽きた人にとっては、「自由な個人旅行」が
魅力的になると思います。
特にこれからは、滞在型の旅行が増えるのではないかと思って
います。
時間が充分あるのですから、じっくり腰をすえて、その土地の雰
囲気に浸って生活するという体験旅行です。
●例えば東京を取り上げますと、東京といっても近代的な新丸の
内ビルや六本木のショッピング・ファッションの街があると思え
ば、上野を中心とした美術館や博物館などの文化施設。
浅草を中心とした江戸の雰囲気のある浅草寺付近など、奥の深い
観光が出来るところです。
短い間にそれを満喫することは出来ません。
●そのような旅行は、じっくりと週単位・月単位で一つの場所に
滞在し、そこの生活に溶け込んで、暮らしているような、今まで
と違った体験を味わうことが出来ます。
●また夏の観光で人気の北海道も、阿寒湖や摩周湖等のような
観光地回りをする、従来からの観光では物足りなくなって来まし
た。
それよりは、秋に鮭が上って来る知床の海で鮭釣りを楽しみ、山
ではキノコ狩りなどして北海道の秋を体験し、「道産子」になる
のもいいでしょう。
ゆっくり北海道の大自然を満喫するには1ヵ月位滞在が必要かも
しれませんする。
●そんな滞在型の宿泊客を取り込む工夫をすれば、日本各地でそ
の地域にあったいろいろは企画が考えられるはずです。
その地域に適したプランを探し出し、そのホテル独自で考えて商
品化してみてはいかがでしょうか。
インターネットという情報伝達手段も有ります。出来ますよ。
●そのような宿泊客にとっては、その地域の生活情報を教えて上
げる事が出来き、親身になって相談に乗ってくれるアドバイザー
の仕事も、ホテルマンの仕事の一つになっていくでしょう。
●出来ればもう一歩進めて地域密着の生活を味わっていただくた
めには、ホテルと地域のお店との連携を図ってはどうでしょう。
●レストランや床屋、銭湯などの生活に密着したお店と連携して
ホテル宿泊客を共通のお客様として迎える体制を作ると、より
密度の濃いサービスが出来ると思います。
この時、中心になるのはやはりホテルになります。
●このサービスが充実するとニューシニア層のお客様ばかりでな
く、外国人観光客にも喜ばれますし、町おこしの起爆剤にもなる
と思います。
◆4・同じ趣味の人たちの集まりの場を作ってみます。
(1・と同じようですが)
●今、絵手紙を書く人が増えています。
ホテルのオーナー・支配人がそれに興味があるのなら、宿泊のお
礼状を絵手紙にして、お客様に出したら喜ばれると思います。他
のホテルが出す礼状と違う「ぬくもり」のある礼状になると思い
ます。
●絵手紙にこだわった企画としては、お客様に「ホテルに絵手紙
を出していただけませんか」と呼びかけては如何でしょうか。
その趣旨は絵手紙を通しての顧客作りです。
●その呼びかけのお願い文の中に「いただいた絵手紙はホテルの
ロビ―に展示させていただきます。」と書いておきます。
●お客様の中には絵手紙を書いていらっしゃる方結構いて、興味
を持って出していただける方は結構いらっしゃると思います。
●ロビーが展示でいっぱいになったら、客室の廊下に展示しても
良いのではないでしょうか。絵手紙を通して、自然と顧客作りに
なってゆきます。
●勿論絵手紙ばかりでなくオーナー・支配人に書道や絵画や刺繍
などの趣味が有りましたらそれでも良いのです。
●ここで大切なのはオーナーや支配人が興味を持っているものを
扱うことです。興味の無いものを扱うとその企画への熱意がお客
様に伝わらず、企画倒れになってしまいます。
●このようにして絵手紙を展示されたお客様は、きっとリピー
ターにもなるでしょう。そしてお客様がこのことを同じ趣味の仲
間内で話題にして、ホテルの宣伝をしていただけることで、新し
いお客様を連れて来てくれることもあります。
◆これまでお話ししたことは、お客様にホテルのことを話題にして
いただくための『材料を提供する』ことなのです。
◆『どのようにしたらホテルのことを口コミの話題にしていただけ
るか』それを考えることが大切なのです。
◆実際に企画し実施してみると、それを考えることが楽しくて、そ
してその効果が出るとまた大変嬉しくなります。
◆お客様にホテルの印象を強くする方法はその他にも数多くあるは
ずです。
それぞれのホテルの立地や客室構成、またオーナー・支配人の意向
などで決まってくるはずです。大切なのは面白いと思ったらやって
みることです。ダメだったらまた他のことをやればいいじゃないか
という、ポジティブな気持ちが大切です。
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■□ 次回はホテルの営業についてお話します。 □■
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■ご意見ご感想をお待ちしております。
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■発行者 SHCC
代表 山地伸幸
住所 札幌市西区発寒7条12丁目 潟jシモク内
■eメール shcc_j@ybb.ne.jp
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□■編集後記■□
12月4日の日経産業新聞によりますと、日経産業消費研究所が選
んだ第4四半期新製品ランキングで文化創造度1位は、ヒルトン東
京の「オペラ連携ディナー」であったと書いてありました。
正式には「ワイン&ダイン オペラの夕べ」との名前で、新国立劇
場が開催するオペラ公演と連携し、オペラをイメージした料理を出
して、出演歌手、指揮者と一緒に食べられるという企画商品だそう
です。。
ディナー料金は2万円とそれなりの値段がしますが、「出演者と身
近に接することが出来るなど、アピールするポイントが多い」と高
い評価を集めています。
今のところ毎回40人程度の参加者を集めており、ディナーには毎
回5人程度の出演者が同席しており、好評だそうです。
これはヒルトンホテルという大きなシティーホテルの話ですが、
規模は違っても、中小ホテルにとっても参考になる話だと思います。
新国立劇場に近いというホテルの地理的な特色を生かし、その上オ
ペラに造詣の深い担当責任者の熱意で企画された商品でしょう。
この企画商品は1回当たり40名の参加者ですから、80万円程度
の売上しかなく、その上飲食の材料費や出演者への謝礼などを差し
引くと利益はほとんど無いと思います。
それでも文化創造で1位と評価されれ、『ヒルトン東京=オペラ』
との認識が高まれば、他ホテルとの差別化の大きな武器になります。
同じことは私たち中小ホテルでは真似出来ませんが、「へえー」
「さすがだな」と思わせれ企画は参考になりますし、見習いたいと
ころです。