サカナ 著者,ヤマモトユキコ



---------青く光る魚 名前も知らない魚--------
僕はただ 寂しさをぶつけるモノが欲しかった



見慣れた景色が変わっていく
時代とともに形を変える

昔は酒屋だったというのに何を思ったか
そこの主人はペットショップを始めた
それを聞いた僕はある日 興味本位でそこに向かった
中へ入るといくつも並べられた水槽やビンには
様々な生物が踊るように泳ぎまわり
そして別の一角にはプレリードッグやウサギが
この世界の不満さえも知らないような顔で
無邪気に柵の中で遊んでいた
僕はというと それをただ少し眺めて
「自分の世話もできないのに生き物を買う資格なんてないか」と
呟いて その場を去ったのだった


 そして数日後、その店の事をふと思い出した
1人暮しをはじめてからすっかり何も無い部屋に
ため息をこぼしていた僕にとってその記憶は明るい光が見えたように思えたのだ
たった一瞬の決意で魚でも買ってみるか...と家を出たが
店に着くなり どの熱帯魚にも水質、温度などがかいてあり
もともとあまりまめではない自分には向いてないなとあきらめかけていた
すると店の主人はそんな僕の心を読み取ったかのように
小さなビンに入った1匹の魚を手に取り
『この魚は手間がかからなくていいよ』
なんて勧めてきた
言われるままに覗きこんでみると 青く美しいその魚は僕の目に焼きついた
少し照れつつ「いくら?」と問いただすと『五百円』と答えた主人に向かって
すぐに「買います」と笑みを浮かべた
コップで飼える魚なんているんだな...と少し呆然としていたが
その1匹の魚は僕の部屋に怪しくも美しい空間を創った
名前をつけるわけでもなく 見惚れていた僕は
円を描いては止まる
そんな演技にも思える動き一つ一つが日々の孤独を忘れさせた




オドレ オドレ 舞い上がれ...




水面を軽やかにジャンプし またマワル 魚
いつまでも見ていたい・・・そんな気分だった

そんな毎日が続く中 僕の胸にアツク燃えるものが現れた
[いっそこのままサカナになってしまいたい]
泳ぎつづけ、疲れたときは立ち止まり この世をくるくる廻っていようか
サカナは渦巻きをつくり天に向かって飛び上がった
その瞬間僕の体が軽くなり水の中にいるような感覚を覚えた



今僕は光の渦にのまれて宙に浮かぶ・・・・・
軽やかに足をくねらせては夢のような世界へと・・・・・
泡になってしまえ・・そして消えてしまうんだ・・・
安らかに 眠れ オドレ 舞いあがり 消えてしまえ・・・・



////////目をあけた瞬間現実に戻された//////
だけど 大丈夫 僕はあの感覚を今でも思い出せるのだから
変わってしまったモノ?
青く光るその魚は 僕の中に入りこんでしまったってことかな。
そして悲しい知らせは夢をみていたあの日に起こっていた・・・
あのペットショップの主人は何を思ったか水槽を壊し
水浸しの床であの世へと消えていった
ピチピチと音をたてたサカナ達に埋もれて・・・
でもきっと悲しい出来事なんかじゃないんだ
彼は笑みを浮かべていた。きっとサカナになったのさ!
きっと今ごろどこかで泳ぎまわり、そして疲れたら立ち止まり
彼は泳ぎつづけているのだから。