ミチシルベ        著者.山本有希子


     コンクリートの上で うずくまってた


気がつくと僕の足跡はすっかり雨にうたれて消えていた
見渡すと空色の傘に包まれていて濡れることさえも許されなくなってた
きっと優しい君のことだから曇り空に気づいて風邪をひきやすい僕を気遣ってくれたんだろう
だけど今となってはその優しささえも僕が勝手に作り上げた思想であって
君の姿なんてどこにも見あたらない
目の前で死んだ 君は僕を置き去りにした

永遠が無いことを知った日
「いつか愛されなくなるのなら・・・」
そう呟くと隠しもっていたピストルを手に取り
僕を見つめてキミは知らない世界へと消えていった
その美しい瞳からは最後の涙が零れ落ち
僕はというと泣くことさえもできないまま
別れの言葉もなく 崩れるようにその体にしがみついていた

なぜ僕は彼女に云えなかったのだろう
たった一言の愛の言葉を
なぜ救えなかったのだろう
僕という存在で作られてしまった不安から・・

ゴミになってしまいたい いっそのことコンクリートの上
生きている事に罪悪感で押しつぶされる
だけど死ぬ勇気さえも持てずにいる僕はゴミにさえもなれないかもしれない
君なら僕にどうしてほしいというのだろう
国語で習ったあの名作のようにロマンチックに百年待っていられたならば
その不安を少しは軽くしてあげられたかい?
・・・・・・・・ねぇ、答えてよ
君の細い体では耐えられなかったのだろう?

過ごした日々をスローモーションで眺めている
あの空の向こうで君は僕を見てくれているだろうか
何か忘れ物をしていないかい?
僕の部屋に戻っておいでよ
君が大すきなバニラのお香も素敵な照明も君を待ってる
好きな音楽も何度だって流していいよ
そしておいしい料理を食べてドライブへ出かけよう
あの場所から見える夜景も君のためにあるってそう教えてあげるから
そうだ 君が欲しがっていたワンピースを買いに行かなきゃね
そして僕は君にいうんだ 「結婚しよう」って
永遠なんてなくたって僕らが作ればいいじゃない
2人で好きなだけ一緒にいたらいいじゃない
どんなに歳をとってもかまわない
君を置いてきぼりにはしないさ
1秒だって長く君との時間を作ろう
だから戻っておいで 僕のところへ

僕にとって君というミチシルベを失ったイマ
生きる理由がみつからない
この先の未来に矢印が書いてあったって君がいなきゃはじまらない
僕には君と過ごした時間を生きるしか見当たらないんだよ
それをもう一度まっすぐに伝えられたならば隣りにいてくれたよね


愚痴ばかりをこぼしていた けれど星が瞬きをした時決めたんだ


こうしちゃいられないな
旅にでることにするよ
君がもし僕のそばで見守ってくれているのなら
こうしちゃいられないな
何をもっていこう?

行き先は僕に任せてよ
見せたい景色が山ほどある
貯めておいた貯金も全部使って 世界中を一緒に見に行こう
何でだろう あのころよりも今、君を近くに感じられる
きっと君がいる場所は僕の心の中だと気づけたからだね
君は死んでなんかいない 君がこの世からいなくなるとすれば
僕がこの世を去る時だから わかるかい?
さぁ どこからいこうか・・・

      任せて 僕が君を連れていくから



END