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雑記帳

なんでもないことだけど


「今日、仕事遅くなるからカレーでも作って食べてて」
そんなことをいわれたある日のこと。

5時半、それじゃ作りましょうかね、と重い腰をあげる。
このときの私の考えは「まぁカレーくらい、市販のルーを使うんだから誰がやったってそこそこ食えるものができるさ〜」と楽観。(実際、食えないほどマズイ料理を作れるのはそれはそれですごいことだと思う…)はたしてどうなることやら。

台所に入って、はてジャガイモとタマネギの置き場はどこだっけと思案。広くもない台所を一周してやっと床下収納の存在に気付き事なきを得る。
次なる問題は、このジャガイモとタマネギ、どれくらい使えばいいんだ?見当がつかない。

この時点で私は、「今の自分は全くと言っていいほど料理ができない」ということに気付き途方にくれる。一人暮らしの人ならこのくらい当然なことなんだろうが…自分の分の食事くらい、しかも毎日つくって献立のレパートリーに困るとか、買い物する時点から何を作ろうか考えるとか、そういうところならまだしも、今の私は『カレーを作る』『材料はそろってる』そこまできてまだ作れないでいるのだから…

それで結局どうしたかと言うと、当然のことながら大抵のカレールウの箱には標準的な作り方の指示が書いてあるわけで、それに気付いた私は自分の無能さ加減に辟易しながらも先へ進むことができたのである。
何々、ルウを半箱使うとすると…タマネギ300グラムのジャガイモ150グラム、ニンジン100グラムか。台秤で量ると皮付きの状態でそれぞれタマネギが400グラム弱、ジャガイモ200グラム。ちょっと多いがまぁいいか。その分ニンジン(使いかけ)が80グラムしかないけど。差し引きすれば丁度いいくらいでしょ、と都合よく解釈。
まず、皮をむく。皮むき器なるものがウチにはあるのさ〜と引出しから取り出し、まずニンジンの皮をむき始める。どうもうまくいかない。試しに包丁を取り出して包丁で皮むきを始めると、そっちの方がだいぶ効率がいい。調子に乗ってジャガイモも包丁でむき始めたが、今度は皮むき器の方がやりやすい。文明の利器も使い様であるなと実感。(もちろん、ジャガイモの芽取りは包丁でやった訳だが…)
包丁使いが下手な人が包丁で皮むきをすると皮が分厚くむけてしまうらしいが、私の場合はそんなことはない。廃棄率はかなり低めに抑えられたはずである。ただうまい人と違うのは、その所要時間であろう。

野菜を切り終わってから、冷蔵庫から豚バラ肉を取り出してくる。チルド室に入れてあった肉は凍ってしまって歯が立たない。こんなことならもうちょっと早く室温に出しておくべきだった…
凍った肉を無理矢理引き剥がし、ナベで野菜と肉を炒める。…炒め終わってから、「そういや油はナベ熱する前、バターは熱してからだったな〜」なんていう話を思い出した私。とりあえず熱する前に全部放り込んだから、その点だけは一応間違えてない。ただし全部一辺でよかったのか?という疑問は残る。

箱の指示どおり700mlの水を加え、煮込みに入る。ただし、今回使ったナベは圧力鍋。「やわらかくなるまで中火でコトコト…」は必要ないのさ♪
…とはいうものの、当然ながら圧力鍋を使っての調理なんてやったことがない。使い方くらいはみようみまねでできるとしても時間はどのくらいかければいいんだ?
えいやっ、と蓋をして、火をつける。行き当たりばったりでもいいじゃないか、どうせ食べるのは私だ。蒸気抜きの錘が回転を始めてから1分半でとりあえず火を止めてみる。どんなもんだろう、と気にはなるがここですぐ蓋を開けることはできない。まだ中が高圧だから開けようにも開けられないし、無理にあければ火傷は必須。それくらいは心得てるさ…とはいうものの圧力下がるまで何をして待とう?なんとなく気になってしまって他のことが手につかない。とりあえず今日の夕刊でも読むか。

夕刊を読み終える頃には圧力も下がり、蓋が開けられる状態になっていたので恐る恐る開けてみる。
…ジャガイモが、ない。…まぁ、あるといえばあるのだが原形をとどめていない。だいぶ煮崩れてしまったようだ。ニンジンをかじってみる。うん、充分やわらかい。
ルウを割りいれて溶かす。やっと見た目がカレーらしくなった。かき混ぜたせいでさらにジャガイモが崩壊したが気にしない。冷凍してあったご飯をレンジで温めて皿にのせ、カレーをかける。

ハイ、「冷凍してあったご飯」が気になったアナタ。別に楽したかったからじゃないんだよ。母親の「カレーでも作って」のセリフの中には当然「ご飯を炊いて」という意味も含んでいたらしい(あとで母自身がそう言っていた)が、たまたま冷凍庫に残り物のご飯が冷凍してあるのを発見しそれを使ったまでである。どうやら母はその冷凍ご飯の存在を忘れていたらしいので、悪くなる前に食べてしまってむしろ良かったみたい。
一応言っておくけどね、いくら料理ができないって言ったって、ご飯ぐらい炊けます。磨いで、水入れて、炊飯器のボタン押すだけなんだから…
もう一つ言うとね、私、ナベでご飯炊くこともできます。焚き火で飯盒で炊くことだってできます。中学高校の家庭科、調理実習でこれだけは毎回誉められたんだぞ…ホントだってば(ちょっと見栄を張る)

カレーを皿に盛り付け、テーブルを片付けてその皿を持っていくも、4人用ダイニングテーブルにカレーの皿ひとつはあまりにむなしい。サラダでも作るか、と今更思い立つ。どうせなら圧力鍋を待ってる間に作っておくんだった。その辺の要領の悪さが、慣れてる人との違いであろう。
冷倉庫の野菜室からレタスとキュウリを取り出す。ついでにおさかなソーセージと乾燥ワカメも発見。これくらいあれば何とか形になるか。
乾燥ワカメを水もどししながら、レタス、キュウリ、ソーセージを切る。自分で食べるんだから適当に切ればいいや、と思って切り始めるも、途中で気が変わって今度はキュウリの飾り切りに挑戦する。高校の時の家庭科でやったはずなんだが…どうも美しくない。そうこうするうちに、キュウリ一本なんてすぐに切り終わる。一人分にしては、キュウリ一本はちょっと多いかな。
小皿にレタス、キュウリ、ソーセージを乗せて、一番上にワカメを積み、テーブルに運ぶ。

この時思った。ダイニングテーブルにカレー一皿はむなしいが、いい加減なサラダ一皿足したところであんまりむなしさに変わりはない。
いいさ。一人で食べることには慣れてる。

食べ終わってふっと時計を見る。7時を過ぎている。カレー一つ作るのに2時間近くかかったのか…我ながら、手際悪過ぎだよ、と酷評の一つも言いたくなる
こんな状態で一人暮らしなんか始めたら、私は生活成り立つんだろうか



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