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雑記帳

研ぎ澄まされて



周りを見回した。仲間はざっと15人。皆、食い入るように前を見つめている。
俺達は皆、来るべく‘奴’との戦いに向けて万全の体制を敷いているはずだった。
‘奴’は、手強い。それは、俺達の誰もが知っていた。負けられない。誰もがそう思っていたはずだ。

静かだった。
ともすると何一つ危険のない平穏な空気にも見えなくもなかった。
前方である男の声が聞こえていた。覇気のある声ではない。だが、それを追うことが俺達の唯一の使命だった。
俺達は必死で耳を澄まし、その声を辿っていた。
ほかに物音はなく、むしろ静けさという壁が俺達一人一人を孤立させているようにも感じられた。
まだ、‘奴’は来ない。
それは、油断だったのかもしれない。

誰一人として、言葉を発するものはいなかった。声を辿るのに必死だったのだ。
俺はもう一度、仲間を見渡した。
後方にいたはずの仲間がひとり、倒れていた。‘奴’が、来た。
俺は身を硬くした。
負けるわけにはいかないのだ。

再び、沈黙が俺達を包んだ。
…3分…5分……10分………
ふいに、目の前にいた仲間がが首からゆっくりと崩れていった。
またひとり、やられた。
次は、俺だろうか。
考える暇は、無かった。‘奴’は次の獲物を俺に定めたようだ。

負けたくない。負けるわけにはいかない。
‘奴’との戦いは、気力の勝負で負けてしまったら終わりだということは充分に分かっていたはずだ。
だが、‘奴’は強力だった。そして、無情だった。

目に写る世界が傾いていくのを感じた。
俺は、負けるのか。
はたしてそうだと、意識したのか。
考えるだけの時間すらなかったかもしれない。

俺は、意識を失った。







目を覚ましたのは、男が授業終了の合図を出したときだった。


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