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雑記帳

そのとき



桜を、待っていた

入道雲のように枝いっぱいに咲き誇る花でも

一面に広がる薄桃色の絨毯でもなく

風が吹き抜けていく

ふわりと射した陽に白く輝いたりしながら

はらはら

はらはらと

舞い踊るように、いくつもの花びらが目の前を行き過ぎてゆく

群れからはぐれた一枚が

膝元を掠めて

コンクリートにはらりと落ちた

指先でそっと摘みあげてみる

それはとてもはかなく

そして美しい

陽に透かしてみれば

わずかに見える命の脈

そのまま腕をいっぱいに伸ばし

高く高く掲げたその花びらをまた

行き過ぎる風に任せる

くるくる

ひらひらと

遠ざかるそれはいつしか

また、たくさんの花びらに紛れて

輝いては

消えてゆく



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