フクロウが繁殖する小屋の中に、ビデオを設置した観察記録です。
竹林の物置小屋(2×3m位)にしている所でフクロウが繁殖している。というのを
家内の叔父が教えてくれました。
小屋の中でホームビデオを設置する距離もあるので、かねてより知りたかったフクロ
ウの巣の様子の撮影を試みました。
毎年、小屋の隅においてある藁の上で産卵しているそうです。(この年も同じ場所)
初卵日は、4月7日(異常に遅い産卵でした。今年は、繁殖しないのかと思っていま
した。こちらの早いところでは2月下旬に産卵したところもあったようです。)以
後、8、9、10日と1卵ずつ計4ケ産卵です。
文献では抱卵日数は30日となっているので、孵化予定日は5月7日。
5月7日に訪れると、小屋の中で「ピチッ、ピチッ」という声がするので、孵化した
のかと思い、親がいない間に覗くと、まだ卵!。因みに予定より3日遅れて5月10
日に2羽、12日に1羽の計3羽孵化。
素早く、ビデオをセットして退散。予め、抱卵中にビデオで写して、なおかつ、ラジ
コンで懐中電灯のON、OFF信号を送り、懐中電灯の光に警戒しないというのは、
ビデオの様子から確認しています。(突然、懐中電灯の光が点けば、一瞬緊張してい
るのは、体の様子から解りますが、すぐに元の状態に戻っていました。)
なお、ビデオといってもホームビデオでテープも最長6時間です。
>以下、親と卵の会話!
卵 「ピチッ、ピチッ」
親(雌と断定します) 体を少し浮かせて転卵しながら「ゴゴゴゴゴッ」
卵 「ピチッ、ピチッ」
親 お腹に卵を押しつけるようにして、直接皮膚を当てている。(この頃の雌はお腹
の羽が抜けて、皮膚が見えているのがスチール写真からも解る。卵に体温が直接、伝
わっているためと言われている。)目を細めて喉を膨らませて小声で鳴いているよう
だが、ビデオからは聞き取り不能。
同じような状況を動物写真家の宮崎学さんが出演して、「動物奇想天外」というTV
番組やっていました。
孵化場に勤めている友人の話しでは「鶏の雛でも孵化前から鳴いている」ということ
なので、鳥一般に孵化前から、鳴いて親子の会話をしているのでしょう。当たり前の
ことかも知れませんが、改めて驚きました。
また、雄と雌の声の違い。
抱卵しているのを雌とすると
遠くで雄が「ホーホー、ゴロッホ、ホーホー」と鳴くと、それまで、うつらうつら寝
ていた雌も「バシュー、バシュー」と鳴き出し、雄に答えます。
そして、雄の声が近づくにつれて、雌の声も激しさを増します。
その後、雌が巣から出て、雄から餌を貰う場合と、雄が巣に入って来て、雌に渡す場
合があります。
雄は巣に入って来ても雌に餌を渡すとすぐに出て行きます。
巣に入ってきた場合、雌も雄のような朗朗とではなく、風邪を引いた声のような感じ
で「ボーボー、ゴロッボー、ボーボー」と雄と鳴き合っていました。
雄から餌を貰った雌は、早速、餌(この場合はスズメ)を引き裂いていました。凄い
力で引き裂いている為か、ビデオにスズメの骨の裂ける(軋む)、バリバリという音
が入っていました。
孵化1週間位までは、保温の為に雛を抱いていますが、大きくなると(多分)雌は、
雛の横にいるだけで、雛は抱いていません。
そして、孵化2週間を過ぎると、スズメ位なら親から奪うようにして、頭から丸のみ
です。
断片的な観察ですが、何かの役に立てば、と思います。
以下は、出て来た当時の文書です。当時の「撮影に対する思い」も入れていますの
で、感想を下さい。
フクロウは一般に樹洞に営巣する場合が多いですが、タカの古巣、建物の隙間、縁
の下、岩の割れ目、壊れた巣箱、それに納屋の中等での例があります。イギリスでの
メンフクロウは農家の納屋の中で営巣してその生態の研究も進んでいます。日本の場
合は、樹洞での営巣例が多く、巣の中の様子を観察するには、営巣木を傷つけること
になるし、親鳥にも多大なストレスを与えることが予想されるので、ほとんど巣内で
の様子の観察はありませんでした。10年ほど前に愛媛県の研究家が巣箱を設置し
て、中の様子を横からビデオカメラに収めていました。おそらく横からの様子をビデ
オで収めたのは国内では、初めてでは無いかと思います。NHKの30分の番組でし
たが、貴重なデーターを得ることが出来ました。最近では、長野の動物写真家・宮崎
学氏が撮影しています。
納屋に営巣しているのを抱卵期から巣立ちまでをホームビデオに収めました。親鳥
のストレスを考えて照明は、薄暗い懐中電灯ですので、画質が悪くて見にくいです。
なお、懐中電灯やビデオの設置にあたり、繁殖の影響を十分に考慮しました。例え
ば、抱卵初期からビデオを設置すると、親鳥が驚いて巣に帰らなければ、卵は死んで
しまいます。いくら研究のためとはいえ、フクロウの繁殖を失敗さすようではだめで
す。ですから、卵の執着心が強くなる抱卵後期からダミーのビデオを設置し親鳥に慣
れて貰いました。一番心配したのは照明の問題です。かつて、巣箱にビデオを設置し
た愛媛の人に伺うと「機械などの光や音は大丈夫」との助言がありましたが、夜行性
のフクロウが懐中電灯の光を嫌うことが十分に考えられます。巣にビデオカメラを設
置して、納屋に帰ったのを、中に仕掛けたセンサーで確認して、最初は1分だけ懐中
電灯の光を光らせました。後ほどビデオでその様子を確認して、様子がどうもなけれ
ば、次の日は10分間隔で1分ずつ6回光らせます。これも同様に親鳥の様子を確認
して、次の日は、10分間光らせます。そうして時間を長くすることによっての親鳥
の反応を見て、最後は1晩中光らせました。親鳥の表情はビデオを見れば解ると思い
ますが、光は全然気にしていません。
・鳴いている卵。雌が卵に「ゴッゴッゴッ」と呼びかけると卵が「ピチッピチッ」と
答えている。卵のうちから親子の会話をしているのが解った。
・雌も囀る。一般にフクロウは「ゴロッホッ、ホーホー」と鳴きますが、私は雄、雌
ともに鳴いているような気がしてなりませんでした。それが今回は、画面で両性とも
に囀っているのが、撮されました。しかし、雌の囀りは雄のように朗々としたもので
はなくて、かすれている。
・雌と雄のやりとりの声。卵、(雛)を抱いている雌は、遠くで雄の声がすると、ウ
トウトしていたのが急に「ギャウー、ギャウー」と鳴きだしました。今まで巣の近く
でこんな声を聞いていたが、どういった意味を持っているのか、解らなかった。ビデ
オから雄を呼んでいる声というのが解った。雄と雌が鳴き合っている(呼び合ってい
る)のが、映像から確認出来た。
フクロウの巣の映像を公開することで鳥へのメリットはあるのか?単に人(撮影
者)の知的好奇心を満たすだけで、それ以外に何もないのではないか?
これを真似て、みんながフクロウ以外にも他の鳥を単なる好奇心だけで撮し始める
と、鳥たちの繁殖の失敗につながる恐れが十分にあります。結局、テープは、一般の
人の眼に触れること無く、お蔵入りしています。
今回の杉山さんのHPで初めて、巣の中の様子をみんなに公表するようになったの
です。
営巣中の鳥の撮影は野鳥保護の面から駄目だと言われている場合が多いですが、科
学的に鳥の生態を知るためには、素人でも十分に配慮しての撮影は許されるような気
がします。現にカッコウとか、その他の鳥でもビデオ撮影による手法が取り入れら
れ、生態の解明に多大に貢献しています。そういった撮影をして、科学的なデーター
蓄積があれば、将来的には鳥(フクロウ)の保護につながっていくと信じています。
しかし、私のように自称、科学者といっても一般には、ただのおっさんです。
自分では、「科学的」と言っても、他人から見れば「学会発表している訳でも無いの
に、何を言うとるだぁ。単なる好奇心から、撮しているだけではないのか?。おまえ
が撮すのと、アマチュアカメラマン(ワシら)が撮すのと、どう違うんじゃ!」と、
思われます。ここらあたりの線引きが難しいです。というより、線引きは不可能です
よね。撮影者のモラルによります。また、当然の事ながら鳥獣保護法により、鳥の体
は勿論のこと、卵や雛に触れるのも、違法行為になる(=以前に鳥へのストレスを考
えて下さい。)ので、十分気を付けて下さい。}
卵を産んだのは4月7、8、9、10日でした。ちなみに当地では、フクロウの産
卵は3月上旬から中旬にかけて行われます。この年は暖冬で2月28日、既に産卵し
ていた巣もあったようです。ここもこれで10年連続繁殖しているそうですが、96
年、97年とヘビによる被害で繁殖は失敗しているそうです。今までは、3月中旬に
産卵していたそうですが、98年は何故か異常に遅かったのです。抱卵期間は30
日、しかし孵化は5日10日の日中に2羽孵化して、12日に1羽孵化しました。
しかし残念なことに最後の一卵は孵化することなく、兄弟の雛に潰されてしまいまし
た。(無くなっていました。)雛は5月27日に見た時は2つに減っていました。後
に孵化した雛は、大きな雛に押さえ込まれるようにして、餌を十分に貰えず、死んで
しまったのでしょう。餌として運び込まれたヒミズの黒い体と死んだ雛の白い体が対
照的だったのが、眼に焼き付いています。生まれた時から生存競争が始まっているの
です。
結局、ここの巣は、6月7日に何者(犬か猫)に襲われて、雛が巣立ちは出来ませ
んでした。孵化後27日の短い命でした。99年には、出入り口の隙間を防ぎ(当
然、ビデオの設置も中止!)、外敵の侵入を防いだ為か無事、2羽の雛が巣立ちまし
た。
吉村(香川)