課題研究(第4回 5月28日)


『学習意欲の見方・導き方』 下山 剛 編
 1章 学習意欲の意味と理論
 2章 学習意欲の見方・とらえ方 
 3章 学習意欲の生かし方・育て方
 4章 学習意欲を育てる実践

上記の本を読んで、今回は、第1章を内容をまとめることにした。

第1章 学習意欲の意味と理論

1 学習意欲とは

学習意欲の意味
よく用いられているが、比較的あいまいであり、多様である

<意欲>「積極的に何かをしようとする気持ち」
    「種々の動機の中からある一つを選択してこれを目標とする能動的意思活動」

 (広辞苑)
学習意欲とは、積極的に学習しようとする気持ち。種々の動機の中から学習への動機   
を選択して、学習することを目的とする能動的な意志活動。                    


@<積極性・能動性> 
  他から言われたり、強制されたりするのではなく、自発的・積極的に学習に取り組もうとする

A<内発性>
  目標は学習すること自体にある。何かのためにということではなく、知りたい、わかりたい、学習したいという動  機から学習活動が内発するとういうものである

B<価値志向性>
  知らないことを知る、わからないことがわかる、できなかったことができるようになる、さらに、そうなることは   自分を伸ばし高めることになるという学ぶことの価値に志向した、あるいはそれに支えられたものである


動機づけと学習意欲

動機づけとは、「人に行動を起こさせ、一定の目標へ方向づけるもの 」という概念

すなわち、
行動を引き起こす原動力となる欲求・動機という内部的要因と行動を方向づける目標・誘因という要因、および両者の間に生じる行動の三者の関連を含んだ概念

┌───┐       
│ 欲求 │    →    目標
│ 動機 │        誘因 
└───┘
         行動 (強化)

学習行動にあてはめると、
何らかの学習行動が生じるためには、それを引き起こす動機とそれを方向づける目標が必要である。また、学習行動の結果、目標に到達した場合、学習行動が強められる

学習意欲を内面的にとらえると限定されたものになる

外的動機づけ・・・賞あるいは罰によって動機づけられるもので行動は目標に到達するための手段という意味

内発的動機づけ・・好奇心に基づく場合であり、行動すること自体が目標となっている

学習意欲は、その特質から言えば、内発的動機づけに基づいたもの

外的動機づけが学習への動機づけとして有効であるが(特に低学年児童)、学習意欲を育てることから言えば、乱用は問題がある。
用い方は、子どもを学習へと方向づけ、いずれはその子自身の学習意欲として内化されるような配慮がいる。


状況的意欲と特性的意欲

○ある状況において一時的に喚起される水準のもの
 教師の説明や教材が子どもの興味や好奇心を喚起する場合のように、そのときの状況の 刺激によって引き  起こされるもの (認知的動機づけの研究)

○特定の状況と関係なく比較的一貫し、持続している水準のもの
 個人における比較的固定的、持続的な態度や傾向、あるいは、性格特性といえるもの。 やる気がある子、な  い子という場合のように、意欲の個人差を意味するもの。
 (達成動機づけの研究)


2 学習意欲の理論

認知的動機づけの理論

@高等動物、特に人間は好奇心の強い存在であり、情報を求めてたえず環境に働きかけて いる。

A環境との情報的交渉、すなわち、情報処理には、最も快適と感じ取られる最適水準があり、この水準を維持 しようとするホメオスタシス的な傾向がある。

B認知的に不調和が生じると、それを低減しようとして情報収集活動が喚起される。

与えられた情報が、子どもの知識や予測と一致しない場合、「おかしいな」「どうしてだろう」という疑問や好奇心が喚起され、それを解消するための情報収集活動、たとえば、先生の説明をよく聞く、本で調べる、考える、などの学習行動が動機づけられる。

<不調和の大きさの問題>

*最適な不調和を引き起こすためには、
    今、何を知っているか、
    前に何を学習してきたか、
    どのように予測するか、
    などをふまえたうえで、適当なズレを生じさせる
      ような情報の呈示をする


<不調和が生じた場合、その解消に成功する経験の重要性>

不調和の解消 → 快をもたらし、情報収集活動、好奇心を満足させ強化する

不調和の解消のたび重なる失敗 → 好奇心を弱め、情報収集活動を抑制する

*不調和解消の経験の持ち方によって、好奇心の強い子、弱い子という意欲の個人差がつ くられる。

*不調和解消に成功するような配慮、たとえば、適切な教示や援助、必要な情報が与えら れるような応答的環 境の整備が重要である。


達成動機づけの理論

<アトキンソンの理論>

  達成傾向 = (成功動機−失敗回避動機) × (成功の予測×成功の魅力)

成功動機の強い者→ 成功を求めて課題達成に積極的であり、困難を克服してやりとげようとする傾向が強い

失敗回避動機の強い者→ 失敗を予測し恐れるあまり、課題達成に消極的になり、むしろそれを回避しようとする                 傾向が強い


有能感の理論

ホワイト(アメリカ)

「環境に積極的に働きかけ、自分にとって効果的な変化を生じさせようとする能力、その 際に感じられる満足感、および、それをさらに求めていこうとする傾向」

「有能感」 「効力感」

本来的に備わっていと思われる有能感も、種々の生活経験を通して、強められたり阻害 されたりしていく。



原因帰属の理論

原因帰属・・・ある課題の達成に成功した時、あるいは失敗した時に、その原因をどこに求めるかとい うこと


達成感の強い人・・・ 成功の原因を能力や努力、失敗の原因を 努力が足りなかった       → 努力しよう
達成感の弱い人 ・・ 成功の原因を運がよい・やさしかった 、失敗の原因を能力がないから    →あきらめる

*成功の原因を自分自身の内的要因に、失敗原因を不安定な(変化しうる)内的要因に帰属することが意欲が   強い人の特性であり、意欲を喚起する条件


自己原因性の理論

ド・シャーム(アメリカ)

「人は自己の環境に効果的な変化をもたらしたいとする行動において自己がその主体であ り原因でありたいとする傾向」

将棋になぞらえて、自己原因性が高い特性を指し手、それが低い特性をコマとし、いかにして指し手的な特性を高めるかが子どもの意欲開発の原理である

<訓練プログラム>
@内的コントロール:すべての思考、意志決定、活動、知覚、課題解決の試みが個人の内 から発生し、内的に コントロールされているという意識をもつこと。

A自発的目標設定:目標が自己の環境を支配しているのは自分であるという意識に基づいて自発的の設定され ること。

B内発的手段活動:目標達成のための手段的活動卯が内発的に決定されること。

C現実性の自覚:自己の環境における位置づけ、可能性、能力、および問題などについて 正当な認識をもつこ と

D自己責任性:自分の行為や自分の目標達成、要求の充足、課題解決などの結果に対し、 自らの責任である と認識すること。

E自信:自分が成功することや自分の環境を変化させることについて、自分自身の力に信 頼をもつこと。

*子どもたちの主体的・自主的行動をできるだけ促進し、自分自身の行動に対する責任感 を強化するということ


3 学習意欲の要因

プラス要素  「成功動機」「有能感」「自己責任性」「学習価値観」

マイナス要素 「失敗回避動機」 


成功経験

ある程度の努力によって達成できたときにもたらされるもの

目標を現実的水準に設定できるような指導や環境
・自己の能力によって自由に課題や目標を選べる学習形態
・成功への見通しやそのための努力を促す指導
・具体的な学習方法の指導
・少しの進歩でも評価され、励まされるという配慮
・適切な学習方法やヒントを教えるきめ細かい指導


失敗への耐性

適度の失敗は、反省や奮起を促したり、次の試みに成功するための手がかりを与える。
「失敗は成功の母」

失敗が過度に、連続的にならないように配慮。失敗を克服する強さ、すなわち、失敗への耐性を養うような配慮。

失敗への耐性を強めるには、

(1)失敗恐怖を刺激するようなフィードバックや評価をしない

*結果をただ否定的に評価するのではなく、なぜ失敗したのか、成功するためにはどうしたらよいのか、をわから せるような手がかりを含んだ積極的な評価をする。

(2)成功への見通しを失わせない(成功したいという気持ちを持たせ続ける)

*単に結果が目標に到達しなかったことを知らせるのではなく、目標にどれだけ近づいたか、少しの進歩でもわ   かるようなフィードバックが与えられる。

(3)失敗の原因を自分の努力不足ややり方のまずさに帰属させる

*努力することの価値を教える。結果のみを評価するのではなく、その過程をも評価する工夫する。


自主性・自発性

自己の行為に対して自らの責任性を認識する
(自己の責任性)

*自主的に考えたやり方、計画、目標が認められ、生かされる指導や環境が与えられる


受容・承認・期待

┌──────────────────────┐
│ 相手から受容されたい、承認されたいという欲求  │
└──────────────────────┘
満たされない → 自信を失い、精神的に不安定、何事にも消極的、逃避的になっていく

満たされる  → 自信が強まり、精神的に安定、自己を向上させようとする積極的傾向が生じる

  *小・中学生においてはこの欲求は特に強い。

  *意欲に問題のある子どもは、親、教師、友人との関係においてこの欲求が十分に充足されていない。

  *教師のちょっとした受容、承認的態度がやる気のなかった子どもを意欲的にさせたという事例もよくある。

「ピグマリオン効果」とも関係
人は相手から期待されていると、自然にその期待に合った行動をするようになる

  *どんな子どもに対しても「もっとよくなる」という肯定的な期待をもつことが、親としても教師としても重要な姿   勢である。


4 学習意欲の診断

学習意欲の測定・診断

測定方法
・行動観察による評定  (授業中の行動・日常行動)
・質問紙検査による評定

*信頼性があり弁別力がある行動のリストや質問項目

*限界があること

   行動観察・・・表面的な行動レベル
   質問紙・・・・ある程度内面的、意識的レベルはとらえることはできても、すべての面をとらえることはできな    い。

  *学習意欲を多面的かつ総合的に診断するためには、多くの方法を用いて、欠落する部分を補い合っていく    という配慮が必要