課題研究 (第5回 6月1日)

第2章 学習意欲の見方・とらえ方

学習意欲の意味、要因、および構造に基づいて、質問紙でとらえられうる要素を選定し、種々検討した結果、8要素40項目からなる質問紙検査を作成

GMAI(学芸大式学習意欲検査:Gakugeidai Academic Motivation Iventory)

1 学習意欲検査(GAMI)の内容と方法

学習意欲検査(GAMI)の作成過程

「学習意欲とは、種々の動機の中から学習への動機を選択して、これを目標とする能動的 意志活動をおこさせるもの」

学習意欲を構成していると考えられる要素

 30要素
  ↓
17の要素

17の要素に対して各11〜12項目、総数248項目からなる質問紙

( 都内・埼玉   小学校4校 3〜6年  男 161名  女 148名 ) 


応答率などの分析

105項目へ整理

(都内・埼玉 小学校6校 4〜6年 男 427名 女 396名)

因子分析などの統計処理を行って
8要素53項目の質問紙検査(研究版)

↓ 現場での検査実施や処理の簡便さを考慮

8要素40項目の検査(簡易版)

<因子分析>とは、
多くの変数間相互に何らかの関係があると予想される時に使用される分析方法の一つ。この方法を使用すると、各変数の間に共通に含まれる潜在的な因子によって、それらの変数の相互関係を解き明かすことができる。


学習意欲の要素

@自主的学習態度

 自主的に学習目標や学習計画を立てて、自主的に学習しようとする態度

A達成志向

 目標達成に努力したり、困難な課題に挑戦したり、目標ができるまでがんばったりする 傾向性

B責任感

 やるべき学習課題を自己の責任をもってなしとげようとする態度

C従順性
 
 学習を進めるうえや、あるいは学力向上のために有効な他者(教師や父母など)からの 助言や援助を素直に 受け入れようとする態度

D自己評価

 自分の学力や成績などの学習場面における自分の力量を自分なりに評価したりする能力 や習慣

E失敗回避傾向

 テスト不安などのように、テストや学習について失敗を恐れるあまりに、学習に集中で きなかったり、学習場面から逃避しようとするような傾向性

F持続性の欠如

 勉強を持続して行ったり、遊びやテレビを見るのを途中でやめて、勉強に取りかかる決 断が遅いか、できにくいような傾向性をいい、学習における意志薄弱性と考えられる

G学習価値観の欠如

 学習に対する必要性や価値を認めないで、学習に対する反感や嫌悪感が強いというよう な傾向性


検査方法
・担任教師が手引きに従って実施
・各項目を担任教師が読み上げて、そのつど児童・生徒に評定させる


検査の採点法
各項目に
「とてもよくあてはまる」      ・・・・4点
「どちらかといえばあてはまる」 ・・・・3点
「どちらかといえばあてはまらない」 ・2点
「まったくあてはまらない」 ・・・・・・・・1点

各要素ごとの合計点を求める


検査結果の基準

GAMIの尺度作成

* 都内・埼玉   小学校 7校 中学校 4校  高校 1校
小学生男 629名
小学生女 631名
中学生男 529名 
中学生女 528名
高校生男 199名
高校生女 179名

各要素の平均得点を学年間で検討すると、
学年差が見られるのは2学年以上離れた場合であった

小学3・4年、小学5・6年、中学1年、中2〜高校生の4つに分け、
得点の平均と標準偏差に基づいて尺度を構成


検査結果の表示法

4学年段階別に、それぞれの基準をもとに、各要素の得点を標準得点化と5段階の段階点化して,結果をプロフィールに表示する (図2−2 2−3)

 標準得点のうち
34点以下を・・・・・1
35〜44点・・・・・2
45〜54点・・・・・3
55〜64点・・・・・4
65点以上・・・・・・5

@自主的学習態度からD自己評価までの要素は得点が高い方が各要素の傾向が強い
 →より望ましい態度

E失敗回避傾向からG学習価値観の欠如までのの各要素においても、得点が高い方が各要 素の傾向が強い
→より望ましくない態度


2 学習意欲のタイプ分け

促進傾向と抑制傾向

学習意欲検査(GAMI)から得られた8要素によるプロフィールは、学習意欲のどの要素に問題があるかを示してくれるが、全体像を直観的に診断するためには、やや細かすぎる
   ↓
プロフィールの形から、学習意欲の特性を示すいくつかの型(タイプ)を分けることを
検討

8要素の結果をクラスター分析にかけて分析

2つのクラスター(群)が得られる


*クラスター分析 ・・・変数間やケース間の類似関係に基づいて、変数やケースの数より少ないカテゴリーに分類するための方法

@自主的学習態度                     E失敗回避傾向
A達成志向                         F持続性の欠如
B責任感                          G学習価値観の欠如
C従順性
D自己評価

学習活動を高める積極的                 学習活動を阻害する消極的
あるいは促進的側面                    あるいいは抑制的側面
(P傾向:促進傾向)                     (N傾向:抑制傾向)


タイプの判定

この促進傾向と抑制傾向の組み合わせによるタイプ分けを検討

促進傾向の各要素の得点を合計して促進の得点(P得点)

抑制傾向の各要素の得点を合計して抑制の得点(N得点)

P得点とN得点との平均と標準偏差を求めて5段階の段階点化

段階点  4・5   高(H)
       3    中(M)
      2・1   低(L)

促進(P)と抑制(N)の得点の組み合わせによって9つのタイプに分ける

(P)−(N)
H − L 促進傾向強 − 抑制傾向弱
H − M 促進傾向強 − 抑制傾向中
H − H 促進傾向強 − 抑制傾向強
M − L 促進傾向中 − 抑制傾向弱
M − M 促進傾向中 − 抑制傾向中
M − H 促進傾向中 − 抑制傾向強
L − L 促進傾向弱 − 抑制傾向弱
L − M 促進傾向弱 − 抑制傾向中
L − H 促進傾向弱 − 抑制傾向強

3 学習意欲のタイプの特性

典型的なタイプとして5タイプを取り上げる

[H−L]促進傾向強で抑制傾向弱
総合的には学習意欲が最も強いと思われる

[H−H]促進傾向も強いが抑制傾向も強い
     両傾向の拮抗が最も強い      

[M−M]両傾向とも中間

[L−L]促進傾向は弱いが抑制傾向も弱い

[L−H]促進傾向弱で抑制傾向強
最も総合的に弱くなる


学習意欲のタイプと学力・知能との関係

「学習意欲があれば、学力は高くなる」?

学習意欲5つのタイプと学力・知能との関係(図2−7 表2−2)
H−L>H−H≒M−M>L−L≒L−H

@学習意欲の強さの得点の高低が、学力・知能の高低と強く関連している。

A学習を促進する要素の側面を高めることが学力向上に有効であるといえる。


学習意欲と学力との関係 (表2−4)

@知能と学力は密接に関連している

A知能の水準が同じであれば、学習意欲の強弱が学力をある程度規定するように作用する

BAの作用は、特に、学習を促進する要素の側面の強弱がより大きな影響を持っている

C知能の低い群では、Bの影響がさらに顕著に現れる
5つのタイプの行動特性

教室場面で認められる行動を、具体的な児童像としてまとめた
(表2−4)


4 学習意欲のタイプの具体例

プロフィールの基準表は、8要素の得点の大小により分類
(図2−9 図2−10)


(H−L)の事例
学習を促進する要素の側面が強く、抑制する要素の側面が弱いタイプ

・自主的学習が確立
・達成志向も責任感も強い
・他人の意見も受け入れる姿勢を示し、自己評価の能力も高い
・失敗しそうなことをすぐに避ける傾向は少なく、持続して物事に取り組める傾向がある・学習することの価値観、必用感も持っている

学習への意欲がありありと表れやすいタイプ
(適応的・安定的・積極的な行動)

*子どものふだんの様子を考えながら結果を読む

行動面においては、問題性が少ない。
友達との関係も良好であり、級友からも信頼されている。
授業中など積極的に参加する反面、課題を早めに終えた時や教師の説明についてすでに知っている時など、ほかの者に話しかけるといった行動も目につく。
そのため、不注意なミスをすることもよくある。


(L−H)の事例
学習を促進する要素の側面が弱く、抑制する要素の側面が強いタイプ

(H−L)と正反対の傾向

学習意欲をほとんど示さず、非活動的(消極的)・非生産的
不安定・不適応な行動
学習することの必要性や価値を見出せず、潜在的な能力を学業面で発揮できない状態。
友達はいるが、その関係は目的もなく、ただ集まって時間を過ごす(彼らなりの一定の心的安定は得られているが)というもの。
学校では、授業中、お客様といった状態が続き、すべてにおいて無気力と見られている。
子どもの社会的・心理的面での安定、家庭環境面での整理・改善が早急に必用と考えられる。

(M−M)の事例

行動面において問題性は少ない。
大勢の中では目立つほうではないが、特定の友達との間では明るくふるまっていて、他人(特に教師)に言われれば、答える・勉強するといった他律的な傾向が目につく。
興味を持ったことには、自分から積極的に傾向もある。


(H−H)の事例
行動面において問題は少ないが、行動の規範や評価の基準は他律的である。
友達関係においては、まわりに合わせているので、好感は持たれているが、消極的なかかわりしかできず、リーダー的役割などは苦手である。
新しい課題に対しては、失敗を恐れて、「自信がない」「わからない」と最初から逃げ腰である。
授業中の挙手など、ほとんどしない。
毎日、家庭学習をするとか、宿題を忘れない、決められた役割はきちんと果たすが、いろいろと心配し、気配りしている割には、不注意なミスが多い。
一般には、「しっかりしているようで、どことなく幼い」「努力しているのに、成績が伸びない」などといわれている子どもである。


(L−L)の事例
友人関係では、好き嫌いがはっきりしており、自分の敵か味方かといった観点からの評価をよく行う。
授業中などでは、ほとんど目立たない存在であり、課題には、あまりていねいに取り組まない。
意識の面では、学習の必要性・価値をわかっているが、学習習慣などの未形成、基礎学力の欠如のため、なかなか学習行動に結びつかない。
表面上は、穏やか、無気力に見えることもあるが、焦りやいらだちがかなり強く存在しているようである。

どの部分がずれているかを見極め、その子どものできるだけ多くの特性に関する資料と照らしあわせていくことが重要である。