3 自己責任性を高める
自己責任性について
ある行動が自分自身の意志・決定によるものであると思えるならば、その行動の結果についての原因は、自分自身にあると意識される。このような行動の結果の原因を自己に求める意識が自己責任性、自己原因性である。
学校・家庭での子どもたちによる行動の結果の反省(帰属)のしかたを自己責任性の概念に基づいてとらえる
↓
同じような状況下での思考や・行動を予測し理解するのに役立つ
学習意欲の高い子どもの原因帰属
学習意欲の低い子どもの原因帰属
努力要因の帰属
ドヴェック(Dweck,C.S.)の実験
無気力な子どもに対して、原因帰属のしかたを変えさせることによっって、意欲を引き出すことに成功した
失敗経験後、急にやる気をなくす子どもたち
失敗の原因を自分の能力不足に帰属する傾向
<成功経験をできるだけさせ、自信をつけさせる群>
やる気を効果的に起こさせる方法として従来より用いられている方法
<原因帰属のしかたを変えさせる群>
帰属理論から、失敗の際、それが本人の努力不足によることを教える方法
算数の課題を毎日解く(25日間)
<成功経験群>
必ずいつも成功するように課題の難易度を操作
↓
・失敗経験をすると、以前のように力を発揮できなくなる傾向
・失敗の原因を自分の能力不足とする傾向の強いまま
<原因帰属群>
時々難問を準備し、失敗の経験もさせ、それが本人の努力不足であったことを教え、もう少しの努力でできたことを強調
↓
・失敗経験をしても、急に問題が解けなくなって、成績の下がるものがなくなる
・失敗の原因として、自分の努力不足をあげる傾向
┌─────────────────────────────────┐
│ 単に成功経験をだけを保障しただけでは、失敗経験を有効に生かす視点を │
│ 子どもに生じさせえない │
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指導の実際
<まず>
・子どもの現状態を正確に把握する(「できる」「わかる」こととは何か)
<指導の初期(やる気のない段階)>
・小刻みな下位目標を無理なくパスさせ、成功経験を味わわせる
<やる気が少し出てきた段階>
・時々、失敗経験をさせ、帰属のしかたの変更を指導
・失敗してもくじけないような自己概念を育成する
<やがて>
・できるだけ子ども自身で目標を立たせるようにし、それを実行する過程で自分のペース をつかませ、進度を定期的に教師−子どもの相互で確認する
波多野らは『無気力の心理学』(中央公論、1981)において、「失敗がすべて本人の努力不足のせいにされると、何ともやりきれない状況をつくり出す」と述べ批判している
<努力万能主義に頼らず、自分の努力に依存しながら、能力を発揮する視点>
★自分にあった分野、自分が特に力を発揮できそうな分野を探すように奨励すること
★どのように努力するのか、そのやり方を工夫することに重点を置く
4 学習への方向づけ
個人の興味を生かす
<小学6年生の男子>
・アマチュア無線に興味があり熱中
・狭い範囲だけの交信ではつまらなくなって1級免許を取りたい
・難しい機械構造などの課目
・自主的の講習会などで勉強し、免許を取った
・外国との交信もできるので語学への関心度も高まる
・学校での学習効果も上がった
<数学の苦手な中学1年生の男子>
・失敗経験の積み重ねで、数学は難しいものだ
・文章題は、何を尋ねられているかわからない
・サッカーは好きで、サッカーのことなら生き生きと話をする
数学の文章題の内容をサッカーゲームに変えて指導
↓
・ポイントをおさえることができる
・「数学って、わりと簡単だったんだね」
★授業の導入時にちょっと工夫して「あれ何だろう」というように知的好奇心をくすぐる
★クイズ形式にするなど楽しい雰囲気
<漢字の学習>
・漢字のへん、つくり、かんむりをばらばらに、カードに書く
・花札ゲームのように2枚合わせて漢字ができるともらえる
・一番多く作ったものが勝ちと決める
・学級内を5〜6人ずつグループ分けしゲームを行い、各グループごとに賞状をあげる
・一定期間ごとに各グループの上位・中位・下位を集めて編成しなおし、同じ力の子ど もたち同士で競わせる
↓
当用漢字以外のものを覚える
新聞も熱心に読む
学習目標を把握させる
┌──────────────────────────┐
│ 何について学習しているのか │
│ どういう結果になれば目標が達成されたことになるのか │
└──────────────────────────┘
↓
子どもにわかるような形にする
★自分は目標をどれくらい達成できているかを評価できるようにする
★目標を自分に適したように立てること
★結果を本人によくわかるような形にすること
学習の価値・必要性を把握させる
┌─────────────────────────────────────┐
│ 学習目標をしっかり把握させても、本人が学習そのものに対しての価値や必要性を │
│ 見出せなかったら、学習意欲は高まらない │
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<中学2年女子>
・学習習慣はある素直な子だが、漢字の読み書きが苦手
・繰り返し練習して覚えることが機械的でつまらない
短文による漢字練習をしながら、その漢字の語源や熟語の意味などの学習を進める指導 ↓
・読書が楽しくなる
・くだらないと思っていた漢字の書き取り練習がだったが、知っていくといろいろな意味 が分かる
・作文でも言葉が増え、気持ちをよく伝えられるようになったみたい
・自信がついた
★実際の生活の中でどうのように生かされているのかを知らせる
↓
<「割合」の指導>
・割引の値段での買い物をする
・内容量と値段のちがうお菓子を比べてどちらが安いか
★興味がある事柄を達成するために必要性を感じ、学習への方向づけがなされる
喜びの体験
┌──────────────────────────────────────┐
│ 「楽しかった」「おもしろかった」というような体験ができれば、その教科の関心度 │
│ も高まるし、長い目で見れば、学習意欲の向上にもつながる │
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<低学年の図工で箱づくりの工作>
簡単にできて見ばえのするような教材を用意
↓
少々無器用な子でも、ちゃんと作品になることがうれしくなり、
次も作りたいという意欲へ
<学習意欲が低い子どもたち>
クラス全体の雰囲気の中で喜びの体験
算数の計算や漢字の書き取りなどで、がんばれば100点が取れるような小テストを繰り返し行い、100点が取れれば発表してほめる
↓
・ほめられればうれしい
・努力すれば報われるようにすると、クラス全体の雰囲気も他人の成功(努力)に
素直に賞賛する
↓
喜びが自信につながる
やりがいが出てくる
定着
せっかく学んだことでも使わないでいると、その学習内容はすぐに色あせたものとなってくる
エビングハウス(Ebbinghaus,H)の実験
┌─────────────────────────────┐
│ 無意味なつながりの記憶では一晩寝ると約7割ほど忘れてしまう │
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学習内容の定着
↓
次の学習での成功経験も増し、それが強化となって学習意欲も高まる
興味・関心に合った楽しい体験が効果的
<小学3年のことわざの学習>
ことわざとその意味をカードにしてトランプやカルタ取りのようなゲームを行う
↓
子どもたちは、家からことわざ辞典を持ってきて覚えようとするようになり
学期末にはかなりの効果
・似たようなことわざを探す
・会話の中で使う
・言葉に対しての関心が高まる
5 グループ活動の活用
グループをつくることの意義と利用
<意義>
1 個々がバラバラでいるような孤独感を感じなくてすむようになり、グループに所属することによって精神的安定(安心感)が得られる
2 何らかの目的に向かって活動を始めると、グループ内の個々に役割が分担され、その責任を果たすことが要求される
3 協力、協調し合い互いに評価し合うなかで,しだいに自己評価できるようになり、価値に対する考え方も何らかの形で変化するようになる。
4 個人一人ひとりの単なる力の合計よりも、かなり大きな力を発揮することができる
<学習場面での利用>
1 グループの一人ひとりがもつ特性の利用をしていく方法
2 グループ発表
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│ グループには、責任感、協調性、自己評価、自主性などを強め、失敗回避傾向を │
│ 減少させる効果がある │
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グループづくり
よい機能を発揮できるグループ
<教科や場面ごとに等質のグループをつくる方法>
*小学校では、発達的に子どもが混乱し、無理な点が多い
<ポイントを限定してグループ分け>
*学力・運動・生活などのいずれかの面において他のグループと差を生じる場合がある
★男女同数であること
・異性理解
・男女相互主導権主張
★グループ人数の目安
・小学校低学年では4名前後
・小学校高学年・中学校では6〜8名くらい
リーダーの形態
<グループに数種類の機能が果たせるように、数種類のリーダーを設けてやる方法>
・生活面をつかさどるリーダーをチーフリーダー
・学習、運動面などの面をつかさどるサブリーダー
・責任分担や主導権を明確化
・りーダー同士の十分な話し合い
・男女各一人のリーダーを設けるなどして、両性平等かつ対等な意見交換
グループ活動の進め方
┌───────────────────────────────┐
│ リーダーに自覚を持たせ、グループの一人ひとりに実行感・生活感を │
│ 十分に感じさせること │
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<組織・形態を工夫>
・リーダー会(班長会)
学級の目標、行事・活動、問題について考えさせ、話し合い、行動するなかで、リーダ ーに自分がグループの 代表者であり、学級集団を動かしている中心の一人であることを自覚させる
・グループ会議や学級会
グループの一人ひとりの意見や考えを反映させ、生き生きと活動・行動していく場を保障していく
<教師の注意すること>
@学級全体あるいはグループが活動していることに問題がないか判断すること
(意味や価値)
A実行あるいは達成可能な目標を立てているか
B全員の考え、意見が出され、十分な話し合いがなされ、グループまたは学級全員に活動 の意義が自覚されているか
C多くの子どもが行動・活動していることの実感が味わえるように、多くの活動の場が、 その目標達成の中に設けられているか
D行動・活動が持続されるような工夫がなされているか
(目標などの掲示、朝の会、終わりの会・ショートホームルームの繰り返し連絡など)
評価のしかた
┌───────────────────────────────────┐
│ 何らかの活動をしたら、必ず評価することが、次の活動をより充実した活動に │
│ したり、活動に対する意欲を高めたりする
│
└───────────────────────────────────┘
個人 → グループ内 → リーダー会 → 学級全体 へと自分自身の評価をさせる
★感想のみの評価でなく、目標決定までの話し合い、実行(活動)の様子、結果の3段階に分けた詳細で分析的な評価
★活動が長期に及ぶ場合は、中間的な評価を行い、集団の活動の励みとしていく
★個人の非難に陥らないように、前向きにどうしたらよいかというような解決方法を考え る方向で評価
<教師>
客観的かつ分析的に評価する一方、子どもたちには、よい点をできるだけほめ、悪い点を示唆する程度にとどめ、リーダー等の子どもたちの意欲が高まるようにする
グループ活動における教師の位置
★どの程度まで活動に教師の指導を入れるか?
(目安)
小学校低学年 80〜90%
小学校高学年 30〜40%
中学校以上 20%以下
・常に子どもたちの活動の様子をしっかり観察
・活動をまかせる前に、その活動の価値や意味について考えさせ、価値判断の基準をもて るように日頃から指導
・活動中は、常に、よい方向性を示す
・活動の後は、しっかり評価
・信頼・尊敬されて効果
・自分自身の行動について自己評価を行い、教師自身の行動もよりよくするように努める
課題研究(第7回 6月15日)