3章 学習意欲の生かし方・育て方
1 成功経験を与える
成功経験は、「やればできるのだ」という有能感を育て、学習意欲の喚起に結びつく
成功の意味を考える
子どもたちにとって、成功したというのはどんな時?
・百点がとれた時
・人よりうまくできたとき
・人からほめられるくらいできたとき
・やろうと思ったことができたとき
(一つの問題点)
一般的な基準を目標として、それと比較して判断する傾向
↓
自分の持てる力を精いっぱい出して取り組んだとしても、その結果が一般的な基準より劣っていると、本人はもとより、まわりの人間も成功とは認めない
↓
能力のあまり高くない子は、めったに成功できない
↓
能力の低い子は失敗を繰り返し、そのたびに、意欲が減退し、ますます失敗してしまう悪循環
子ども自身の考え方を変える
┌─────────────────────────────────┐
│ 成功した → 自分自身でたてた目標に挑戦し、それをなし遂げたとき │
└─────────────────────────────────┘
*目標に無理がない限り、努力さえすればどんな子でも成功感を味わうことができる
目標の立て方
(高すぎる目標)
もともとできそうにないことに挑戦しているのであるから、できなくても失敗感が薄く、取り組み方もいいかげんになりやすい
(低すぎる目標)
簡単にできてしまうので成功するが、成功感はあまり強くない
(中程度の目標)
「がんばればできそう」という目標であれば、当然努力して取り組む。その結果うまくいけば、成功感は非常に強い。失敗したとしても、「もう少し努力すれば成功できた」ということで「今度はもっと努力して挑戦してみよう」という気が起こり、次への学習への意欲づけになる。
目標を立てさせる場合は、
┌───────────────────────────┐
│ 「がんばればできそう」という、中程度のものにさせると、 │
│ 成功感が強く、意欲づけも高まる │
└───────────────────────────┘
中程度の見きわめ方
・何をやる課題なのか
・同じような課題に取り組んだことがあるか。その結果はどうであったか。
・自分はその課題に対してどれくらい理解しているか。
・どのように取り組んでいけばできそうか。
課題に成功すれば → 少し目標を上げて挑戦する
課題に失敗すれば → その原因を考える
・目標が高すぎたのであれば少し下げる
・やり方がまずければ修正する
・努力が足りなければ、さらに努力して再度挑戦する
*これを繰り返しているうちに
目標設定の仕方がうまくうなる
成功感を味わう機会が増える
学習意欲が高まる
行動ストラテジー(学習計画方法)の獲得
いつも人から指導されて行動しているのでは、本当の力にはならず、自主的な学習態度も身に付かない
いつでも実践できるようにするためには、行動ストラテジーを身につけておくことが必要である
(1)課題設定
人から与えられた場合、自分から設定する場合
(2)場面の探索(目標たてるための下準備)
・課題の性質や内容について把握する
・どのように取り組めばよいか
・他の人がやったもの、やっているものは、それを参考にして自分の取り組み方を考える
・自分の今までの経験や能力と比較
・他の人のでき具合を考慮して挑戦可能であるか、限界はどの程度か
(3)目標設定(目標の高さを決める)
・経験や場面探索の情報
・自分はどこまでやりたいかを考え、要求水準をある程度満たせる程度の目標
・がんばればできそうな程度の目標
(4)挑戦する
最大の努力を払って取り組む
(5)結果を知る
・課題に対する到達度が十分かどうかを検討し、十分であれば課題に対する挑戦は終了する
・不十分であれば、目標を少し上げ、再度挑戦する
挑戦可能な限り、十分と判断できるまで繰り返す
・失敗した場合は、その原因について考える
・努力不足が原因であれば、再度努力して挑戦する
・努力したにもかかわらず失敗した場合には、目標の高さや内容について検討する
高すぎた場合には、少し目標を下げて再挑戦する
・目標に特に問題がなければ、場面探索が十分であったかを検討し、不十分であれば、もう一度探索をやり直す
課題の与え方
成功感を与え、学習意欲が高まるような課題の与え方
(1)子どもの現状に合った課題
・課題は一律ではなく、できるだけ子どもの状態に合わせたもの
・能力、環境を的確につかみ、挑戦可能な程度や形で
(2)見通しをもてる課題
・いつまでに、どの程度やればよいのか
・その課題をやることにより、どんないいことがあるのか
*長期的な、または、短期的な見通しがもてるような課題
(3)やることがわかりやすい課題
何をすればよいかがはっきりとしていること
(4)やっていることがわかる課題
どの程度できているかわかるようなものがよい
途中の状態がわかるということは、見通しをもつこと
(5)やりきれる課題
やりきれる程度にするためには、全体量をおさえるか、
または、子ども自らが選択できる形にしておく
(6)適度の困難さをもった課題
適度の困難な内容が含まれているとやりがいもあり、成功感も強くなる
(7)子どもの特性に合わせられる課題
書いたり読んだりすることが好きな子もいれば、体を動かして調べたりするのが好きな子もいる。それぞれ の子の特性に合わせて選択できる余地のある課題だと、意欲的に取り組みやすい
(8)選択できる課題
子どもの特性に応じた課題を用意し、選択の余地を与えてやる
評価のしかた
自分がやった結果について、適切な評価があると、成功感は高まる
(1)すぐに評価する
できるだけ早い評価をしてやること
(2)個人の目標に対して評価する
「その子の目標に対してどうであったか」でなければ効果はない
(3)目標の評価をする
高すぎていないか、低すぎていないかということをチェックする
目標に対する評価があると、目標を立てる能力が高まり、自分ひとりでも意欲的に取り組めるようになる
(自己教育力)
(4)過程を評価する
・十分努力したか、どこまで進歩したかということを評価し、努力を認める
・完全に目標に到達していなくても、それに近づいていれば認める
*その子の今までの状態をきちんと把握
2 失敗回避傾向を弱める
失敗回避傾向とは何か
うまくいかないのではないか、失敗するのではないかという不安から課題に取り組みたくないという動機のこと
失敗回避傾向が強い者
・ふだんできることでも、試験のように自分の能力が試されている場面ではあがってしま い、本来の能力を十に
発揮できない
・答えがわかっていても、間違えはしないかと、自分から挙手をし発言するといった行動 をしない
★かつて失敗に対して、ひどい評価を受けた経験を持っている、成功経験よりも失敗経験 の方を多く積み上げ たために形成された特性
★過去に個人が経験した失敗の質と量、失敗に対する親の評価のしかたによる養育態度によって影響を受ける
などさまざま
★GAMIの失敗回避傾向と学業成績との相関 r=−0.4前後
学習意欲(自主的学習態度・達成志向等)と失敗回避傾向との関係
達成動機づけ訓練の開発と、失敗回避傾向の低減のための訓練の開発が必要
失敗回避傾向の強い子どもの特徴
・失敗をしたくない、失敗したらどうしようという気持ちが強い
・表情には自信がなく、行動には積極性に欠ける
・答えがわかっている簡単な質問に対しても、ほとんど挙手をしぶる
・朗読では小さな声で読む
・指名されてもなかなか答えなかったり、答えてもおどおどした小さな声
・難しい問題に直面すると、いつまでも考え込んだり決断がくだせずに一つの問題にいき づまる
失敗回避傾向を弱めるために
<教師からのはたらきかけ>
(1)情緒的な人間関係
子どもと教師との関係が情緒的に安定していること
(2)失敗回避傾向を低減する教師の指導技術
・応答の順番がわかっていたり、予知できる指名の方法
・テストを実施する際にも予告し、テストの準備と心の準備をさせておく
「今度のテストは、何日に行います。よく勉強しておいてください」
・「これから行うテストは、みんな一人ひとりが何を知っているか知るためであり、先生の教え方の参考にする ものであるから、リラックスして受けて下さい」と緊張を弱め、リラックスさせる教示を与える
・「順番どおりに解かなくてもよいから、わかるものから先に解いてやるようにしなさい」
・どのような手だてをとったら成功し、どうしたら失敗するか、また、成功や失敗の可能性を十分に予測でき、 目標に至るためにさまざまな障害をどのように克服していのか、はっきりとした見通しをもたせる
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│ 見通しやすじみちや手だてをもたせることは不安傾向を低減する
│
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(3)フィードバック、評価方法
<うまくできた場合>
うんと賞揚してやり、自信を持たせ、成功の喜びを強めてやる
<うまくできない場合>
しかったりけなしたりせず、今度はできるであろうと成功への可能性を意識させる
正しくない答えが発表された場合
・すぐさま他の子どもに指名を移し、他の子どもから正答を引き出してはいけない
・誤った子どものどこに間違えの原因があるのかをはっきりさせ、誤りを修正しておく
「○○ちゃんは、みんなを代表して間違ってくれたけど、おかげで、みんなの考えも深 まってよかったね。○
○ちゃんに感謝しようね」
<子ども集団からのはたらきかけ>
(4)グループ指導
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│ グループでの学習は、不安を軽減し、学習の効果を上げる │
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・評価が自分に対する個人的評価から離れるために、のびのびと活動できる
・発表や意見もグループ全体を集約したものであるから進んで述べることができる
・小集団(4〜6人)であれば成員の発言も活発
・討論や共同作業を通して、情緒的な結びつきを強め、多少の失敗は克服しやすい心理的 な好ましい状態に
なる
(5)発表学習
・課題に対する考えをあらかじめ、ノートや記録用紙に書かせる
・小集団での討議を経させておく
・机間巡視などの機会に「この表現はうまいよ」とノートや記録を見ながら励ましておく
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│ 発表場面でも失敗を恐れない雰囲気づくり │
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課題研究(第6回 6月8日)