体育科教育特論演習U
学習意欲を育てる学校づくりのヒントを求めて
元気が出る「教育改革」との付き合い方
〜総合的な学習の三つの課題を例に〜
『児童心理』学校を変えるコツ・創るコツ
立教大学 助教授 奈須 正裕
はじめに
すでに現場は改革疲れ?
誰のための改革なのか →子ども
教育改革の主体は誰なのか →現場教師
「やらされている」という感覚ではなく、しっかりと研究し、
自分のものとしたうえでやる
現在進行中の教育改革の動きをいくつか取り上げ、一人ひとりの現場教師がどのようにそれらと向かい、自分たちのものとし、自分がこれまで行ってきたであろう自律的、創造的な実践づくりの延長線上にうまく位置づけ、自身の教育実践をよりいっそう豊かなものとするのに役立てることができるか
総合的な学習で例示された三つの課題
1 横断的・総合的な課題
2 児童・生徒の興味・関心に基づく課題
3 地域や学校の特色に応じた課題
現場の対応
<カリキュラム開発の主体としてこの動きをとらえようと言う立場>
ねらいにおける可能な解釈範囲を探り、その範囲において子どもや地域の実情、自分たちが大切にしたいものなどを勘案し、内容を編成していく
<天下り的に行政文書のなかに唯一絶対の実体化した答えを探し求める立場>
ありもしないお上の意を汲んで実行する。具体的な記述である、国際理解、情報、環境、福祉・健康に着眼し、これら四つの例示イコール総合的な学習と発想する
ねらい「自己の生き方を考えることができるように」
三つの課題のうち、<児童・生徒の興味・関心に基づく課題>
<地域や学校の特色に応じた課題> の具体的イメージは?
大綱引きを復活させよう
仕事を体験しよう
スコープ設定の根拠
大綱引きの実践
<地域や学校に特色に応じた課題>
「地域文化」というスコープ
自分たちが暮らす地域の伝統・文化・生活習慣・政治・経済・産業・歴史などに
ついて理解と愛着を深めるとともに、構成員の一人として、それらのいっそうの充実ならびに諸問題の解決に主体的取り組んでいく態度と能力を育てる
仕事体験
<児童・生徒の興味・関心に基づく課題>
将来を展望しての職業的アイデンティティーの模索を課題とする「進路」というスコープ
労働の意味や社会的責任、人々が感じている喜びや苦労についての理解を基盤に、自分もその一員になっていこうとする態度を育てるとともに、将来的な『なりたい自分』を展望し、それに向かって適切かつ誠実に取り組もうとする態度と能力を育てる
このように、四つの例示以外にも必要と思われるスコープを学校で設定していく
具体に出会い、イメージさえわけば「ならばこんなものも」とアイデアが出てくるのではないか?
・ ワクワクしながら取り組む
・ ひとりよがりでなく、公共性をもったもの
・ 「こうでなければならない」でなく、「こんなこともできるし、あんなこともあり」という具合に可能な解釈の最大幅を検討する作業を進める
<教育改革の底流にある思想>
行政施策は、現場を縛るものではなく、公共性を保全しながら現場を自由に解き放つ
☆教師は「コマ」になるのではなく、「指し手」になる
☆楽しみながら実践
☆教師の特色を生かすこと
☆内容領域の設定には、可能な解釈の最大幅、融通性を持たせること
35で割り切れない時間割をどうつくるか
週固定時間割が使えない
「教科書の年間授業数の多くが35で割り切れない数に設定されているが、どうやって時間割を作成すればいいのか」
「週合わせ」はかえって疲れる
指導要領
「年間35週以上にわたって行うよう計画し、週あたりの授業時数が児童の負担になら
ないようにする」
「ただし、各教科等や学習活動の特質に応じ効果的な場合には、これらの授業を特定の期
間に行うことができる」(第1章 4の1)
「各学校においては、地域や学校および児童の実態、各教科等や学習活動の特質に応じて、
創意工夫をいかし時間割を弾力的に編成することに配慮するものとする」
(第1章 4の4)
↓
特定の時期に集中的に行うことが可能
具体的にどうすればよいのか?
各学期・各月ごとの週予定時間割、数週間単位での繰り返し固定時間割などの「数字合わせ」では、手続きがいたずらに煩雑なだけで、教師と子どもたちに何らの益ももたらさない。
時間割編成とは何か?
子どもたちの学びがいっそう深まる時間割にするにはどうすればいいのか?
単元を基盤とした時間割編成
<学習の実質的まとまりである単元に着目し、その具体的な活動展開の流れを基本軸としながら各週ごとの時数配分を決めていく方法>
・ 年間の学校行事を洗い出し、各学期、各週に学級で使える授業日と時数を明らかにする
・ 各学年、学級で、教科書等を参考に各教科で扱う単元・題材名を決め、季節や時期、行事との関連、総合的な学習との関連などを考慮しながら単元配列を工夫する
・ 年間指導計画表(表2)を作成する
○ 総合的な学習の優先
○ 場所による制限のある音楽、体育、理科
○ 2時間続きの方が効果のある教科
・ 何曜日の何時間目に何をするのかの時間割表を作成
・ 毎週金曜日に次週の時間割をプリントし、配布する
★ 単元展開の実態に応じての柔軟な修正・変更が許容されるようにする。
子どもとともに毎週つくる時間割
<毎週末に子どもと相談しながら次週の時間割をつくる方法>
低学年
子どもがやりたい活動を聞きながら教師が中心になって次週の時間割を決める
高学年
・ 朝や帰りの会の際に、子どもたちで相談
・ 輪番制で係りの子どもが原案をつくり、全員で調整
・ 教師は、子どもの思いやこだわりを尊重しつつ、活動のねらいや内容、必要な時数を勘案しながら適切な助言を与える
・ 時間割はプリントし、配布する
・ 大コピーを学級の前方に掲示
<子どもたちの変容>
1 自分たちが取り組みたい活動について明確な意志を持つようになった
2 学びたい時期に十分学ぶことで、充足感や達成感を味わうことができ、学びへの関心・意欲・態度が高まった
3 自分の学びに見通しをもてるようになった
★ 「生きる力」の要素である「自ら学び、考える」につながるものであり、この時間割の工夫がある 種の「学力」を育てた
★ 月ごとに中間決算をし、それを子どもたちに提示しながら調整する
☆ 子どもと教師との信頼関係
☆ 子どもとともに時間割をつくることにより、自己責任
個に応じた指導で基礎・基本の確実な習得を@
〜学習速度の差に応じる〜
時数削減以上になされた「厳選」の意味
「厳選」が時数縮減率よりも高い3割程度の削減として実施
「ゆとり」を生かして指導に工夫
↓
「厳選」された内容を確実に身につける (文部科学省)
「ゆとり」
↓
単なるブランク(空白)になるのでは?
↓
学力低下
★ 基礎・基本を身につける指導はどうすればいいのか?
一人ひとりの学びにていねいに寄り添った指導、個に応じた指導の導入
「各教科等の指導に当たっては、児童が学習内容を確実に身につけることができるよう、学校や児童の実態に応じ、個別指導やグループ別指導、繰り返し指導、教師の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善し、個に応じた指導の充実を図ること」
学習指導要領 総則の第5の2の(5)
みんな違ってみんないい
<通常の学習指導>
個人差を無視し、一定のペースで行われる
「まんなかよりちょっと下」のペースで実施することは現場の経験則
学習の速度のおそい子は、指導ペースについていけない
子どもは一人ひとりさまざまに違っている。違っていていいし、違っていることがその子の学習に有利に働くようにすべきである。少なくとも、不利にはたらかないように策を講じなければならない。
完全習得学習(マスタリー・ラーニング) ブルーム
1 ひとまとまりの学習内容を学級単位の一斉指導で教える
2 学習成立状況を把握するためのチェックテストを
3 理解や習熟の不十分な子どもに対しては、治療的な補充指導を。すでに、学習が成立している子どもに対しては、発展学習やいっそうの定着を目指した学習指導
* 準備に手間(チェックテストやコース別教材の開発)
* 一人では難しい作業
はげみ学習
計算や漢字などを中心に通常の配当学年にとらわれず、6年間に学ぶ内容を系列化して細かいステップ(100前後)に分け、その子の学習速度に合わせて学べるようにしたシステム
チェックテストで自己採点
全問正解 できない問題
↓ <つまずきの治療>
次のステップへ ・教師に1対1で教えてもらえる「講座」
・音声テープやビデオ
すべてのステップ終了 ・パソコン *自由選択
「リトルマスター」
・ 教師の点検の手伝いやつまずきの治療
・ 計算の速さや応用力を狙った「力だめし」
・ より発展的な学習内容の「オープン・エンド」
★ 4年生の子どもが6年生の内容を学んでいたり、5年生が4年生のところをやっていたりする
★ 卒業時には、ほとんどの子がクリアーするか、いくつかのステップを残す子どももいる
(学級単位の一斉指導と並行して実施されているので、学習の機会は保証される)
☆ 学習できる場と雰囲気作り
☆ 学ぶことの意味
「学習は、親や教師のためでなく、自分のために行う」
「友達との競争が大事ではなく、自分の進歩、向上が大切」
「学習の早い人、遅い人がいるが、自分のペースを知りながら、自信を失わずに学習を行っていくことが大 切」
☆教科の授業との関わり