そのホームページは突然現れた。さしたる目的も無く検索をしていたときのことである。
いくつか表示されたリストの中に、全く意味不明の記号の羅列されたページが見つかった。
その記号の羅列そのものにハルオは興味をひかれた。初めは単なる文字化けだと思った。しかしよく見ると、所謂文字化けとはどうも違う。
羅列された記号が全く見覚えのないものの羅列であることに気が付いたのである。
通常文字化けといっても、記号そのものには見覚えがあるものだ。表示された文章が意味不明のものであっても、記号の姿形まで変わってしまうものではない。
ハルオは、そのホームページのURLにポインタを合わせ、クリックした。
その瞬間、彼はいわれのない不安に襲われた。
マウスのポインタが時計のアイコンに切り替わった。時計の動きに合わせるように、不安感がつのっていく。
「触れてはいけないものに触れてしまった。」そんな感覚が膨らんでいく。
15秒ほど待ったであろうか。ポインターが通常にもどり、画面が真っ黒に変わった。
どうやらこの謎のページに到達したらしい。しかし、画面には何も表示されない。どこかに隠しリンクがありはしないかと、ポインターを画面のあちこちに移動させてみたが何の反応もなかった。
もう諦めて元の画面に戻ろうとしたときだった。画面の右上からゆらゆらと一片の雪の結晶のように、白い丸印が降りてきて、画面の中央でとまった。その白いマークにポインタを合わせてみるとリンクが設定されていることがわかった。
得体の知れない不安感は相変わらず彼を捉えていたが、反対に、どうにもページを進めずにはいられない衝動にも駆られていた。
ページの中央で彼を誘うリンクに、ハルオはアクセスした。
ページが動いたのかどうかよくわからなかった。
やがて真っ黒な画面にじわじわと文字が浮かびはじめた。
例の異形の文字列であった。
その文字列は一旦焦点を結ぶかのように見えたが、直前でぼやけはじめた。
次に浮かび上がってきたとき、異形の文字列は見覚えのある姿にかわっていた。
『7月15日
ついにそれは始まった。窓から外を見ると、未明から漂いはじめた霧は今や白い壁のようだ。
窓や扉の隙間から入り込んできたきりのために部屋の中まで霞んでいる。
この霧そのものがそれなのか、それの影響で霧が出ているのかわからない。
すでに電灯も点かず、電話もつながらない。
やってみればわかるだろうが、車のエンジンも掛からないに違いない。
どれだけの人々がこの事態に気づいているだろうか。深夜トラックのドライバー、終夜営業のコンビニの店員、24時間操業の工場の職員。
彼らは気づいたに違いない。 パニックに陥っているかもしれない。
しかし、彼らにしてもこの状態がいつまでも続くとは思ってもいないに違いない。
世界は変わってしまった。エーテルの力が世界を覆ってしまった。
想像を絶する世界、かつて経験したことのない時代がやってきたのだ。
今、沈痛なほどの静寂がすべてを包んでいる』
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