| 第四回 「準備委員 」 4月。年度もかわり、展示会出展準備も本格的になってくる。
出展機も前回出展した装置のマイナーチェンジに決定した。結局、得意先に納入予定の機械を展示することになった。
支店内の実行メンバーが決まった。
リーダー兼調達品関係担当にムータン、進行演出担当兼出展機担当にシンチャン、映像及びカタログ制作担当にタケボー、制作監修及び造形、美術担当が私DONKYが勤めることになった。
シンチャンはメンバーの中でも一番若い、元気な明るい青年だが、出展機の納入先になるお客様の担当営業でもあり、スケジュールや期間中の機械へのダメージが心配でしょうがない。
タケボーは、もともと技術屋で、頭も良い。落ち着いていて、しっかりしているように見えるのだが、けっこうトボケたところもある。
車とカートが趣味のまだまだ若いがパパさんである。
ムータンは自分でも言っているとおり、新しいものを作ったり、文章を書いたりするのは苦手。そのかわり、几帳面に記録をとったり、スケジュールを調整したりというのは上手な実務屋サン。
まだ、30代の中盤だけれど、ちょっとオジサンが入ってきている。
以上のような体制で98年の展示会の準備に臨むことになった。
「出展機の図面あるだろ?」
事務所の会議室での打ち合わせである。わたしは、シンチャンにたずねた。
「図面っすか?
本チャンのレイアウトしかないっすけど」
「うっと、それでいいよ」
シンチャンは分厚いファイルの中から1枚の図面を取り出した。
「これ?」
「はいっ」
「これどっからどこまで持ちこむの?」とタケボーがたずねた。
シンチャンは図面を広げて説明してくれた。
「本当に?」
私は思わずうめいた。
「これじゃ、小間の半分使っちゃうじゃない」
「P社は知ってんの?」と、ムータンが私に尋ねた。
「知ってるわけないっしょ。俺だって今日始めて見たんだから」
「まずいっすか?」
シンチャンはなんとなく自分に責任があるような気分になっているようだ。
「まあ、予定とはだいぶ違うけど・・・。その図面じゃわからないし、機械の図面を取り寄せてくれないか」
シンチャンはすまなそうに、最近少し後退気味の頭を掻いて見せた。
「まだ、これしかないんです」
「なんで?」
「いや、いろいろあって」
「まあ、よくあること」と、タケボー。
「・・・だね」と、ムータンが相槌を打った。
確かにうちの会社にゃよくあることだ。
製作期日ぎりぎりになっても図面が揃ってないなんてことはざらにある。
「とにかく、このレイアウト図だけじゃどうにもなんない。設計のケツ叩いて図面とりよせて。実際、納期もいいとこでしょ。・・・しっかし、こんなにでかいのか・・・」
気が重くなった。展示機なんて何でもよかったんだ。今度の企画には自信があったんだ。小間数は削られる。展示機は馬鹿みたいにでかい。スペースが足りなくなる。
準備委員会はとりあえずスタートをきった。
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