| 第七回 「 現実と現実の狭間には 」 準備委員の面々が会議室に集まっていた。会議テーブルの上には出展機の図面が広げられている。
「どこからどこまでが展示会用につくるの?」
タケボーがたずねた。
「えーと、ここまでが実機っすから、ここは展示会用に用意するんだと」
シンちゃんが図面を指差しながら説明する。
「で、実演が終ったワークはこっちにだして、ここで人がばらしてもどします。ばらしたワークはこのラインで上にあげて次の用意をします」
「時間はどのくらいかかると」と、今度はムータンと質問した。
「えっとですね・・・、ここからここまでだいたい2分くらいっす。で、ここで1分っすね」
「じゃあ、最短でどのくらいでまわせるの?」と私。
するとムータンがホワイトボードのところへ歩み寄ると、線を引き始めた。
「まず、何個準備するの?」
そこから、タイムチャートの作成がはじまった。
私と違ってみんなそろってまじめで、けっこう細かい。私なら「だいたいこんなもんか」で済ますところだが、彼らにかかると「1個5秒として、30個揃えるから・・・」となる。
適当でいいんじゃないの・・・とは言えない。計算の結果が大体見えてきていた。満足のいく結果にはなりそうになかった。
途中でやり直させた方がいいのか、結果を聞いてから再検討してもらった方がいいのか。この辺が難しいところだ。
「・・・30分ってとこやね」と、ムータンができあがったタイムチャートを眺めながら言った。
「どう?」
「インターバルいれると何回デモが打てることになるわけ?」
「インターバルを15分として1ショーが45分やろ、昼休みが1時間として、1日8回やろ」
「8回ね。少ないんじゃないの、どうシンちゃん、進行責任者としてそれでいいの」
シンちゃんはタイムチャートの写しを見ながら考えていた。
「少ないっすかねえ。・・・なんか言うでしょうねえ、おじさんたち・・・」
何人かの気の短いお偉いさん方は、現場のことなどあまり考えず、ショーの回数を増やせ増やせという。いくら事前に合意を得ていても同じことだ。
来場者数の推移や、全体の構成や進行のことなど考えない。いつも何かしていないと気がすまないのである。
開催期間中現場に居ると、その気持ちも多少わからないではない。
しかし、準備を重ね進行を管理し、デモ運転を支える裏方のメンバーと調整をしていく進行責任者にとっては決しておもしろいことではない。
「・・・10回はいけるようにしとかないと。できれば11回。それに昼休みの間のデモも考えておかないと」
メンバーはうなって俯いた。みなわかっていた。
「もう1回検討してみますか」
少ししてタケボーがあきらめたように言った。
結局ショーの回数はその日によって変えるが、多い日には11回。初日と最終日は客足をみながら9回か10回ということで決まった。
「裏方大変やろねえ」とムータンがため息混じりに言った。
私はひやかすように、
「過酷なプランを出しますねえ、今年のディレクターさんは」と続けた。
「お、俺っすかア?」
シンちゃんが頭を掻く。
「ところで、説明会の予定は?」と私はムータンに尋ねた。
「今度の金曜日の課会議のときに。P社にはその日の午後からということで」
「OK、じゃあ今日はそういうことで」
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