| 第二十四回 「 キャスティング 」 ロケーションが終わり、初夏はやがて盛夏へ。
私達の準備作業も佳境に入っていた。
ムータンは会場での運営プランに、タケボーはカタログの制作に、シンちゃんは現場でのナレーション原稿とデモ運転のプラン作りに、そして私はブースの装飾とVTRのナレーション原稿作りに。
そんな中、私の出張中にVTRの出演者のオーディションが行われた。
この出演者のキャラクターを決めるのに少し議論があった。
最初のプランでは、博士と取材をするちょっとイケイケっぽい若い女性キャスターがCG合成でシステムや装置を紹介して行くと言うものであった。ではどんなキャスティングにしよう。
ディレクターのSAKA氏の案では博士は年配の男優を使おうと言うものだった。
「なんなら外人なんかもインパクトがありますよ」と、代理店のS部長が言った。
「それは無理だ」私は即座に答えた。
「だめですか?」
「だめだめ。社内、絶対通らないって」
男優は以前使った事がある。イベント会場での映像ではそれなりに効果はあったと思う。しかし、普段セールスが持って歩くには、その芝居ッけが鼻につく。そのせいか見せる方が小ッ恥ずかしい。
まして外人など。
結局博士役は少し落ちついた知的な感じの女性で、もうひとりは初めのイメージの通りにいこうということで決まった。
私がいない間に行われたオーディション。さしたる苦労もなくそのときの様子を想像することができる。
にやけているムータン。シンちゃんの鼻息が聞こえてきそうだ。
タケボーは相変わらず飄々としている。
「僕らで決めちゃって大丈夫っすかね」
シンちゃんは今にもよだれを流しそうだ。せわしなく首をふる。
「DONKYが任す云うたんやけん、ノープロブレムやろもん」
ムータンの目もすでにイッている。
VTRのMCである。P社もイベント以上にカメラ映りを意識して人選している。彼らも事前に書類を見せられている。
イベントのナレータ達よりも明かに美形である。声の通りや説得力、原稿覚えやアドリブの乗りのよさと言ったイベントで求められる資質の重要性はやや低いと言えるだろう。
確かに私は彼らに任せた。というよりも、P社のS氏とディレクターのSAKA氏に任せていたと言ってよい。
私が彼女達を初めて目にしたのは八月も末になってからである。
翌月のスタジオ撮影を前にして衣装あわせが行われたときである。
場所は市ヶ谷の私学会館にP社が用意した会議室である。
わたしは待ち合わせの時間よりわずかに早く着いた。廊下にP社から教えられた部屋を見つけたが、まだ誰も到着していない。
さて、どうしたものかと考えているとエレベーターホールの方から一人の女性が歩いてきた。
身長は私よりすこしばかり低いようだ。均整のとれたスタイル。やや落ちついた雰囲気の、ショートヘアの美人だ。手にスーツケースを提げている。
目があって、お互いに互いを確認し、軽い会釈を交わした。
「こんにちは」
「こんにちは」
「まだ他には来ていないようですけど、中で待ちますか?」と、私は彼女に尋ねた。
会議室には他に誰もいない。今室内に入れば私達は二人きりになるわけだ。もちろん気のまわし過ぎと言えばそれまでだが、一応彼女に気を使ったつもりである。
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