| 第二十九回 「 編集 」 スタジオ収録から一週間後、本編集に立ち会うことになった。
収録素材から使用部分を抽出して粗繋ぎをする作業を仮編集、それに効果やテロップなどを加えて完成版を作る作業が本編集である。
ここで出来あがったテープを白パッケージという。
台詞の入った部分は別として、あとからナレーションなどを乗せる部分は原稿に合わせて時間(尺)を決めて編集する。
ほとんどの繋ぎ作業はディレクターのSAKA氏のイメージですすめられていく。
「ここ、モザイクで、こうっ、ブワッとはじける感じで」と、SAKA氏から注文がつけられると、「こんな風でいいですか」と、オペレータが効果を実演してみせる。
「じゃ、次のカットの入りは逆に、・・・こんな風で」
ディレクターのイメージをオペレータがいかに実現してくれるか。そして、ディレクターとオペレータの呼吸、オペレータのテクニックと機材の性能がものをいう。これで、作業時間が数段に違って来るし、出来ばえもかわる。
だいたいの効果と繋ぎが終ると、確認作業には入る。
同時に私達クライアントの確認をとっていく作業でもある。
博士とキャスターが乗った宇宙船が、どこか未知の惑星の大峡谷の中をゆっくりと進んで行くシーン。彼女達の肩越しに、大峡谷の岩肌に巨大なモニターがあり、そこに当社の導入実績が映し出され、それを紹介しながら宇宙船は徐々に速度を上げ、未来のプラントへとワープする。
シーン導入部の最初に映る岩壁が、岩肌剥き出しで殺風景であった。
「ここ、寂しいですね」と、私はSAKA氏に指摘した。
「そうですか?」と、SAKA氏が首をひねった。
「うん。まだ、使ってない素材、ありましたよね」
「はい。あるにはありますけど」
他の導入事例はCG合成ではめ込まれた映像である。
何もない岩壁に編集で合成などできるのだろうか。SAKA氏の頭の中にはそのことがあったはずだ。
「もってきて欲しいなあ」
私は多少無理を承知で言った。
以前、もっと簡単だが似たような合成を編集で行ったことがあった。このときは一画面を合成するのに約1時間かかった。
ひょっとしたら今の一言で、2時間近く編集の時間が延びたかもしれない。
言ってみてから、私は少し後悔していた。
「じゃあ、やってみましょうか」
SAKA氏はそう言って、オペレータ氏と相談をはじめた。
はじめに画面をはめ込むためのブルーの枠をテロップでつくる。
そのブルーの枠を、岩壁の動きに合わせて動くように、サイズ、位置のデータをインプットしていく。オペレータ氏の手もとの動きがせわしなくなる。
次に素材から、はめこみ用の画像を選び、フリーズさせ、さらにテロップをうち込む。
最後にできた画像を先ほどのブルーの枠にはめ込む。このときにも動画に動きを合わせる。
その間やく30分。
SAKA氏が大きく頷き、私のほうを振りかえった。
「こんなもんでどうですか」とSAKA氏。
みごとに岩壁に画像がはめ込まれ、宇宙船の窓の外を流れて行く。他の事例の画面にも見劣りしない。
「出来ちゃいましたねえ。なんでもできるんだ」
私は感心してモニターに見入った。さすがはデジタルだ。アナログだったら素材のやりくりだけでも30分近くかかっていただろう。
私は、「もっと、いろいろ注文つけちゃっても大丈夫ですね」と笑った。
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