メッセへの道
第三十三回 「 設営(2) 」

場内に工事用照明が灯りはじめた。
館内放送が流れ、それまで重く閉じていたシャッターが徐々に上がり始めた。
場内に外の明かりとともに新鮮な冷気が流れ込んで来る。
いよいよ設営が始まった。この2日半でこれまでの準備の成果が実るのかどうかがほぼ決まってしまう。

広く見える場内だが、展示小間の区画割が施され、実際に工事車両が通れる通路はそれほど広くない。
そんな会場の中に大型のレッカー車が乗り込み始めた。
その後ろを大小のトラックが続々と入ってくる。
たちまち場内にはトラックが狭い通路を切り返しをしながら進む音や、誘導の声、エンジンの音などの喧騒が満ちて来る。

「お、来た来た」
工事の現場を支援するためにサービス工場から出向いてきているイノさんが、いちはやく私達のレッカー車を見付けた。
少しでも作業のしやすい位置を確保してレッカー車を誘導しなければならない。まして通路をはさんだ反対側の小間は、私達の小間の3倍はあろうかという広さだった。
搬入の資機材も多いに違いない。
そんなところに場所とりで負ければ、工事がやりにくくなるのは明らかだ。
シンちゃんやムータンは、小間に敷き詰めて余ったカーペットのロールを小間の境界に置いたりして、場所とりをしていた。

トラックが入り、あちこちでレッカー車のブームが伸び始めると、あたりはディーゼルの排気ガスでむせかえらんばかりになる。
私達の小間でも荷降しがはじまった。
機械の据付工事が先行している間、私にできることは何もないと言ってよい。
私は小間の隅に陣取って、工事の進捗を眺めていた。

昼が過ぎた頃には、大方の荷降しが片付いていた。
大物の据付が終り、レベルの調整や配線工事などが始まっていた。
「おはようございます」
P社のGUNちゃんが現れた。
「順調ですか」
「うん、だいたい予定通りですね」
パイプ椅子に座っていた私は、長身のGUNちゃんを見上げた。
「もうじき、造形の工事業者が入ってきますけど、予定通りでいいですか」
「うん」
私そう言ってタバコを取り出して火をつけた。
本来館内は禁煙だが、設営工事の混乱の中で誰が取り締まると言うわけでもない。
ディーゼルの排気ガスをしこたま吸って、口の中はざらついていたが、それでも私の目の前の灰皿代わりの空き缶は吸殻でいっぱいである。

やがて木工細工やベニヤ板を満載したトラックが入ってきた。
いよいよ造形装飾の工事である。