メッセへの道
第三十四回 「 設営(3) 」

木工装飾の建てこみはみるみる進んだ。
特にベニヤの板に化粧を施す経師貼りの作業は、いつ見ても見事なものだ。
大きな経師紙を専用のトレイに沈めて水浸しにし、いかにも無造作にたたんで運んでいく。ベニヤの壁に立ち向かった職人は、その経師紙をぱたぱたと貼りつけ、手にしたブラシですいすいとしわを伸ばしていく。こともなげに。信じられないほど簡単に、経師紙はぴしりと貼りつく。
その作業の様子には何度見ても驚嘆させられる。
そして私はそんな職人達の作業に見とれているのだ。

そうこうするうちに、大型モニターが搬入されてきた。
1台1台はちょっと大きなテレビと変らない。縦が約40cm、幅約60cm。しかし、その全体がモニターなのだ。重ねたり、並べたりしてもほんのわずかな境目しか出ない。これを縦4台、横4台、合計16台並べる。

2.5mx1.6mの大型モニターが出現した。ここにCGをまじえた映像が流れる。絶対に人目を引くに違いない。
入場口から入った来乗客達は、この大型モニターを見つけて興味をひかれる。当然ブースまでやってくる。

ところが、近くまで来ると、モニターは3分の1も見えない。ブースの中に入らなければならい。
コンパニオン達が笑顔と共に配るパンフレットを受け取った来場客は、
ブースの入り口から、右手に他の客がくつろぐ接客コーナーを見ながら、シアターの入り口にはいる。中はパイプ椅子が8客据えられ、目の前に大型のモニターが構えている。

上映時間になると、入り口が閉じられる。そしてサラウンドのBGMとともに上映開始だ。来場客は途中退場できない。『しまった』と思ってももう遅い。最後まで映像を見なければいけないのだ。

ひどいプロモーションなら客も怒るだろう。だが、今回の映像には自信があった。
そしてエンディングでは実際に女性ナレーターがモニターの中のナレーターと掛け合いしながら登場する。エンターテイメント性も充分だ。
そして映像がおわり、女性ナレーターの案内で、入ってきたのとは反対の壁の扉がふたつ、いっせいに開く。そとからうちの社員が手で開いているだけだが、中からは自動で開いたようにも・・・。来場者にとっては予想外の展開。ちょっとした驚き。

どやどやと出ていく来場客達。そして、彼等が目にするのは、実際の展示機である。
女性ナレータのステージには60インチのプロジェクタ。
また、大きな展示機の上部を見やすく紹介するための吊り下げの小型モニター。

来場客は、ナレーションに合わせての実機のデモンストレーションを見たあと、製品パネルが並べられた通路を通って退場となる。
もちろん、その通路には当社のセールスマンが、お客を捕まえようと控えているのである。

私はほぼ形の出来あがったブースを、演出とデモンストレーション、ナレーションの内容を思い浮かべながら、何度も歩きまわった。