| 第三十五回 「 設営(4) 」 私はほぼ形の出来あがったブースを、演出とデモンストレーション、ナレーションの内容を思い浮かべながら、何度も歩きまわった。
開催前日。今日は午後からリハーサルである。朝から当社の社員達も備品関係の搬入を始めていた。
P社のメンバーと私は照明やスピーカーのセッティングに指示を与えていた。
照明はブースを華やかに演出する重要な要素である。
まず社名ロゴのサインに効果的に照明が当たるようにセッティングを行う。アクリルのロゴを入れた箱に照明を入れてサインを浮かび上がらせる「行灯」といったものがよく使われるが、製作費が高くつく。
しょっちゅう展示会やイベントを行っている企業なら、使いまわしが利いてかえって安上がりだが、当社のように2年に1回の展示会ではコストが合わない。
カッティングシートというビニール素材のシートでロゴを作り、これに照明をあててサインを目立たせる。
「こんなもんでどうでしょう」
照明機材の業者がはしごの上から尋ねた。
「いいですね。これでお願いします」と、私は答えた。
「じゃ、最後に展示機のところ確認して下さい」
P社のGUNちゃんが私をうながした。
一番問題なのがこの照明だった。展示機の上部をCCDカメラで撮影するための照明だ。装置全体に影やハレーションが出ないように調整しなくてはならない。
実機の見栄えと、モニターに映る様子を見比べる。
なかなかうまくいかない。
「もうちょっと右へお願いします」
照明が効いているのかどうか分かりづらい。照明の前に手をかざして振る。わずかに影が動く。
「あんまり効いていませんねえ」
私としては今一つ納得いかない。しかし、もう何度もくりかえしている。
「こんなところにしておきますか」
私はあきらめて、照明にオーケーを出した。
あとはブース内を歩きながら、壁面やパネルをライトアップしているいくつもの小さな照明をチェックする。
床や壁を効果的に照明することによって、ブース全体が広い展示場の中で明るく浮き上がるのである。
壁面照明をチェックしながら、私はシアターブースに入った。
大きなモニターの前で、AV器材業者のオペレータが一人で画面調整をしていた。
16台のモニターが一つの映像を映し出すのである。垂直、水平、明度、彩度、そして色調をひとつひとつ調整し、16台すべてを同調させる仕事である。かなり手間のかかる面倒な、しかし、重要な仕事である。
せっかくの映像も、モニターのうちの1台だけが赤っぽかったり、画像がずれていたりしたら台無しだ。
私はしばらくその調整作業を眺めていた。モニターのカラーパターンは1台をのこして調整が完了していた。最後の1台の調整も間もなく終るだろう。
私はシアターブースを出た。接客ブースではレンタル品の椅子やテーブルがセットされ、社員たちの手で、備品や飲料などの搬入が行われていた。
昼までには設営作業も終了するだろう。午後からはナレーターが入ってのリハーサルが行われる。
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