春の東大山

2004年4月の記録

 4月の大山環状道路の開通を待って入山する。 この道路の開通により大山南面や東面の入山が少し楽になる。 除雪後にできる道路脇の雪の壁は低く、今年の寡雪を物語っている。 土曜日の夕方に鳥越峠入口の駐車場に入る。休日なのに車が1台停まっているだけだ。 天気は曇天で、夕暮れには小雪が舞い始めた。

 日曜日の朝、5時に起きる。まだ暗く、天気は雪である。 様子を見るために少し寝る。当初の予定では槍尾根を考えていたが、 この時点で烏ヶ山往復に変更を決めた。しばらくすると車が着き、 数人のパーティーが山に向かって行った。天気は相変わらず雪が舞っていたが風はなく、 視界もさほど悪くない。十分行動できると判断し、やっと重い腰をあげ食事の支度をする。 少し出発が遅れたが、烏ヶ山往復には十分な時間である。

 鳥越峠へはブナ林の中に緩い斜面が続く。このルートはたいていスキーを使っていたが、 今日は雪がくさることはないと判断し、つぼ足にした。ブナは雪を付け寒々とした感じで、 いつものこの林で感じる暖かさがない。明瞭なトレースをたどり1時間ほどで峠に着いた。 峠のすぐ下は部分的に雪が切れていた。

 峠からもトレースはあったが、新雪にところどころ消えていた。 それでも雪は固く行程の支障にはならない。 1箇所尾根の続きぐあいが解らないためにルートを間違えた。 すぐに気がつき、たいしたロスにはならなかった。 しばらく行くと先行していたパーティーが引き返して来た。 たぶん時間的には頂上まで達していないと思った。 案の定、すぐ先でトレースが無くなっていた。 ちょうどブナの樹林が尽きるあたりで、この先はブッシュがでたやせ尾根となっている。 樹林の中では豊富だった雪が急激に減り、ところどころ夏道がでている。 ブッシュには海老の尻尾がびっしりと付き、海老の尻尾を落としながらの歩行となり、 ズボンがたちまち濡れてしまった。

 最後の頂上に突き上げる急な登りは夏道がほぼでている。 崩壊箇所も難なく越えて、以外に簡単に頂上に着いた。 風もなく、ひっそりとした頂上だった。反対方向の鏡ヶ成からのトレースもなかった。 どうやら今日の烏は私一人だけの山らしい。平らな岩の雪を払い、 ここに腰掛けてしばらく休む。そして来た道を戻った。

 天気は午後から回復という予報だが、回復の兆しはない。 大山は東西南北四つの顔を持った山と言われる。私は東側からの姿が好きだ。 特に鳥越峠から烏ヶ山にかけての稜線からの大山に心ひかれる。 実は今日のルートもこの景色を期待していたのだが、残念である。

 明日は槍尾根を登る予定だったが、 鳥越峠からの雪の付き方を見て三の沢からのルートに気持ちが変わった。 下山後車を三の沢出合に回す。駐車場はほぼ満車だった。 しばらくすると雲の間から晴れ間が見えてきた。 三の沢上部も岩場の下部が見えたが稜線は依然雲の中である。

 米子の知人が入山中との情報から偵察がてら登ってみることにした。 せっかくスキーを持ってきていたのでシール登高で登った。 疲れないようにゆっくりゆっくりと歩いた。 若いスノーボーダーがジャンプ台を作って遊んでいる場所を過ぎると静寂が戻った。 最後の堰堤を越えると大パーティーが右岸の急な斜面で雪上訓練をしていた。 これ以外に登山者は見当たらなかった。雪はどこまで付いているのかは解らない。 しかし沢は落石が散乱していて、雪量は少なかった。 トレースも入り乱れるというほどは付いていなかった。 下山はスキーがよく滑りアッという間であった。


 月曜日は5時半に起きる。すでに明るくなった時間である。 大山方面に薄い雲があるものの上々の天気である。 簡単な食事をして6時20分出発。本当はスキーを担ぎ上げたいのだが、 今の体力を考え置いておく。固い雪にゆっくり歩いたが行程ははかどる。 最後の堰堤の上でアイゼンをつける。振り返ると谷間を雲海が埋めていた。

 傾斜がきつくなるとトレースは新雪で隠れてしまった。しかし早朝の沢の雪は固く、 登高ははかどった。途中でアイスバイルを出し、両手ストックで歩いた。 そして槍ヶ峰直下で雪が消えた。雪のある時のルートである槍上部の肩に突き上げる 浅い沢型は不安定そうな岩屑がつまっている。槍の下部のコルにでるルートも同じ状態である。 そのために中間の斜面にルートを取った。 比較的傾斜の緩く見えたこの斜面は登ってみると急であった。 うっすらと積もった新雪の下は浮石が多く、草付を拾って登った。1箇所数歩に少し緊張した。 ここを乗越し、肩へ斜上する草付きバンドが見えた時に朝日が射した。 しばし立ち止まり、はずむ息をととのえ新雪に輝く槍尾根の景色を楽しんだ。


 槍ヶ峰に登ってしまえば剣ヶ峰まで簡単である。 積雪季には大きく発達する雪庇も剣ヶ峰にあるだけだ。 南側は急に落ち込んでいるが北側は比較的緩い斜面になっている。 頂稜の少し北側が新雪と旧雪の境になっており、ここが歩きやすい。 雪庇を避けて大山最高峰の剣ヶ峰に立つ。平らな場所がないので天狗ヶ峰に戻り、 出発後初めて腰を下ろし休憩する。風もなく静かな頂である。周囲を見渡しても登山者の姿はない。 登ってきた尾根、剣ヶ峰からここに降りる稜線に私のトレースが見える。 これから向かう北側の尾根にはトレースがない。自分だけの世界にいる幸せを感じてしまう。 山は白いが、麓の香取開拓村の畑は緑がある。 しかし近くの枯れ木には立派な海老の尻尾が付いている。

 ここからユートピア目指し下降する。ここの新雪は湿っていてすぐにアイゼンが団子になってしまう。 時間は十分にあるので慎重に下る。すぐに下降路の振子沢の源頭に着く。 一気に下降というところだが、そうはならなかった。ここも雪が最悪で、1歩で団子になってしまう。 かかとの蹴りこみが聞かず、2、3歩歩いてはピッケルで雪をたたき下ろしながらの下降となった。 ところどころに旧雪が出ていて、ここは団子にならない。 旧雪を拾いながら上部の急斜面を下り終わると、やっと雪がよくなった。 そして地獄谷の広い河原に降り立つ。 駒鳥小屋が見えるとトレースが現れた。

 ブナ林の中にはトレースが入り乱れている。歩幅の小さなものを選んで登り出す。 時々見上げる空が青い。直上し左へトラバースするようになると鳥越峠は近い。 最後の急斜面を登って狭い峠に着く。 あとは緩いブナ林の中をのんびりと下るだけだ。


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