【  第7章 Affetto  】


 クレアの顔に巻かれていた糸が1本、10本と多くなり、バサリと解ける。クレアの顔の右半分が露わになった。しかし、クレアの眼はどこかに焦点を合わせることをせず、虚空を見つめていた。その顔に生気はない―クレアは事切れていた。
 「…………」
 クレアは、一言も喋らない。
 
「……クレアさん」
 「…………すみません。だけど……」
 全員、どうすれば良かったのか分からなかった。ただ、事切れた彼女に向かって謝ることしかできなかった。
 「クレア……おねえちゃん……」
 リネットもクレアの状態と周囲の心情を察知したのかしれないし、そうでないのかもしれない。彼女はそう呟きながらクレアのそばに駆け寄る。
 先ほどの藤原のように、なってしまうのではないか。
 もう一度生き返ると分かったとしても、リネットはそれを「いやだ」と感じた。
 「…………」
 クレアは話したり認識したりすることはできない……はずだった。
 動くはずのない右腕が、崩れ落ちようとした体の向きに反してリネットに向かって伸ばされる。視線が合っていないように見える。
 リネットはその手に間に合わせようと、徐々に走る速さを速める。人形である自分に、人間と同じような心臓があるかのように鼓動が不規則に速さが変わるのを感じながら倒れようとするクレアに走る。

 その瞬間のクレアが何を見ていたのか、分かる人物は誰もいない。
 けれども、走り寄るリネットに向かってクレアが抱きとめる感じで腕を動かしたように見えていた。

 そのとき、ふしぎなことがおこった。

 突然、クレアの着けていた【魔除けの指輪】が光りだす。
 そう、これは先ほどの下の階で【偶然、クレアがつけたあの指輪】である。
 「っ!?」
 
「な、なにっ?」
 「……クレア、おねえちゃん」
 リネットの小さな体にもたれかかるクレアの体は、不思議なことに、リネットに重さを感じさせなかった。まるでその空間だけ魔法がかかったかのように、ゆっくりと時間が過ぎたようだった。
 リネットがクレアを床の上に仰向けにしたときに【魔除けの指輪】の光が収まる。
 すると、見る見る内にクレアは息を吹き返した。久しぶりの呼吸で、クレアは少しむせた。
 
「……っごほっ! げほっ!」
 「クレアおねえちゃん!」
 「!!? クレアさん!」
 みんなが突然のことで驚く中、うっすらと開けた瞼の先で恋人の宇野真を見ていたのか、クレアは手を伸ばしながら呟く。
 「……真。一緒なら、怖くない、もんね」
 「クレアおねえちゃん……?」 
 それを聞き取れたのは近くにいたリネットだけだった。それ以外の人物たちは自分たちのしてきたことに後悔し、口々に謝り始める。
 「ぐぅ……すまない。本当にすまない……私の責任だ……」
 「何度も暴力をふるってしまい、すみません……」
 
「私も……体の方、大丈夫ですか?」
 目を開けて、あたりを確認したクレアは何のことかよく分からずにいたが、全員が暗い表情をしているのはいけないと思い、明るく振る舞う。
 「みんな、そんな顔してたらダメダメ。笑顔でいなきゃ」
 そういう声はまだ生気が少ないが、クレアの言葉と笑顔で三人は少し救われたような気がした。
 「でも……どうして? その指輪は魔除けの指輪のはずじゃ……」
 ふと、生き返ったクレアとその指輪について疑問が湧いたが、今の状況からでは分からないということと今は喜ぶべきときだということで深く追求するのをやめた。
 クレアは自分のすぐ近くにいるリネットを見ると安心したように笑顔になり、リネットの頭に右手を乗せた。
 「リネットも……無事でよかった」
 クレアの言葉、表情でリネットは嬉しそうに笑顔で返した。
 ふと、クレアは自分の右手にはめていた指輪に目が留まる。その指輪にあったルーンの3が少し薄くなっていることに気付いた。
 「(あれ? さっきより、読みづらくなってる……?)」

 全員が一度安心したところで下の階に続く階段を見てみると、不思議なことに水は迫ってきていないようであった。
 「とりあえずは安全ですね」
 
「まだ来ていないだけかもしれないですが……」
 「ひとまず、先ほどのようなことがもうないか、あたりを見回してみよう」
 部屋を見回してみると、霧島は<壁の一箇所に絵が描かれている>ことに気付いた。それは、ずっと低い位置からあたりを見回していた大鬼も気付いた。
 
「あら? あれは……絵?」
 霧島と大鬼はその絵に何かを感じて近づいて行った。大鬼は某傭兵の如く、這い蹲って近づいていく。
 その言葉に気付いたマルクスも霧島と同じ絵に向かって行こうとした。そのとき、匍匐前進しながら進む大鬼を見て、医者として責任感を覚えて再度、精神分析を行おうと感じた。
 マルクスは大鬼の前まで走り出し、肩に手を乗せて必死に語りかける。
 「大鬼さん……立つんだ! 立つんだ! 今は一人でも多くの力が必要なのだ!」
 医者としての責任感だけでなく、もともとマルクス本来が持っている情熱もまた言葉を熱くさせる。
 「頼む! 君の力を貸してくれ!」
 一昔のロボットアニメにありそうなセリフによって、大鬼は2本の足で大地に立つことができるようになった。大鬼は自分の先ほどまでの姿を少し恥ずかしそうにマルクスに話す。
 「はあ……はあ……すみません。精神的に参ってしまって」
 「こんなところにいればそんなこともある。私は君が再び立ち上がってくれたことが嬉しい」
 横になっていたクレアも身を起こし、リネットと一緒に、全員で壁の絵の前まで移動した。
 その壁は、<絵は古代ローマを彷彿とさせる風貌の人間が、壁に彫り込まれるようにして描かれている>ことが分かり、下には「小さな鍵穴」があった。霧島は絵ばかりに注目していて気付けなかったが、彼女以外はその鍵穴は「クレアが持つ鍵と一致しそうだ」というのが分かった。
 「……あの鍵穴、この鍵が使えそうだね」
 クレアは腰にぶら下げている鍵をちゃらっと全員に見せてからベルトから取り外し、絵の前まで行く。
 
「え? それ使えるの?」
 「ふむ。確かにそんな気がするな」
 「そうですね。でも、どの鍵を挿せばいいんでしょう?」
 どの鍵を使えば良いか誰も分からない。しかし、大鬼は下の階で箱を開けるときの謎解きを連想した。
 「また絵の謎解きか……」
 クレアも同じことを思いついたようで絵をジッと見る。クレアもまた、「この絵は箱のときと同様にルーン文字が関係するのでは?」と思った。
 「(きっとルーンがまた関係しているのだけど、この人物は男? 女?)」
 「クレアさん、治療しながらでも考えることはできるかな? こんなボロボロではいけない」
 「え? ああ、ありがとう、マルクスさん」
 マルクスの適確な治療によってマリオネットに襲われる前と同じぐらいまで体を動かるようになったとクレアは感じた。
 「すごいね。ありがとう!」
 「ふむ。なら、次は霧島さんも診なくてはな……」
 クレアは絵を前にして、あぐらをかきながら再び思考に耽る。
 マルクスは色々と傷付いた霧島の治療をしようと道具を取り出した。
 「霧島さん。あなたも治療しましょう」
 
「ありがとうございます」
 「(霧島さん、随分深々と腹に拳が突き刺さっていたからな……)」
 そんな考え事をしながら進めていたせいか、使わないはずの医療器具を取り出していた。更にはその器具が手からすべり落ちる。
 「あぁ! 手が!」
 ―ザクゥ
 「すべったぁ!!!!!」
 
「きゃあぁぁ!」
 ……霧島を余計に怪我をさせてしまう。
 「す……すまない! 余計に怪我をさせてしまったようだ……」
 
「も、もう! 気を付けてくださいね?」
 もうそれ以上霧島を診ていけないだろうと感じたマルクスは、先の戦闘で傷付いた藤原を診察しようとする。
 「き、気を取り直して藤原さん……診せなさい」
 「え…………(どうしよう)」
 先ほどの光景を見ていた藤原は困惑した様子であったが、ズイッと近寄るその迫力に負けた。
 「……お願いします」
 マルクスは逸る気持ちを押さえるようにして藤原の容態を診はじめる。
 「(さっきの見ちゃうと不安だなぁ……)」
 医者として失敗してはならない。そんな不安からだろうか。治療に集中できず、藤原に対して適切な治療が行えなかった。
 「(うそ……だろ……)」
 「…………(何も起きなかった。ヨカッタ)」
 自分の後ろで何が起きているか気にする様子もなく、クレアはどの鍵が良いのかを悩んでいた。
 けれど、やはり大ざっぱな性格のせいか、使う理由は箱のときと同じように半分投げやりになっていた。
 
「(うーん……。この絵の人物が『追放されている』ようにも『嘆いている』ようにもみえないからなぁ……。
 絵は『人』としてか見えないから「マン」の鍵でいいかも)」
 クレアは「5(マン)」の鍵を鍵穴に挿しこんだ。

 

 すると、ふしぎなことがおこった。
 鍵穴から縦にまっすぐの線上の光が差し込む。ゆっくりと壁は左右へと動き、人間一人が通れるくらいの光の入り口が出現した。
 「開いた……」
 「これは……?」
 自分の前で起こった現象に戸惑い、クレアはただその入り口を見るしかできなかった。しかし、そこは光が見えるだけで何も見えない。
 
「どういうこと?」
 「なんだこれは? 先が見えないぞ」
 現れた新たな入り口に向かって、藤原と大鬼の二人が何歩か前に歩き出す。
 「先に行きましょう……」
 「進みますか」
 その声に倣って、マルクスも進もうとした。
 突如、一同にリネットが声を掛ける。
 
「行ってしまうのですか?」
 「……え?」
 誰もがその声に驚き、リネットに振り返る。
 「え? どういうことですか?」
 
「…………」
 出口のように見えるその入り口を前にして、リネットは進もうとする人たちを引き留めようとはしない。しかし、黙ってその場で立ち尽くしていた。
 「リネット……?」
 リネットは「今にも泣きだしそうな表情」をしている。そして、クレアの服の袖をチョンと引っ張っている。
 小児科の医師である藤原は表面上で分かることをリネットに話しかける。
 「もしかして、さみしいの?」
 「ど……どうしたのだ……! 君も一緒に来ればよいではないか! 先は出口ではないのか?」
 「あなたも一緒に行きましょうよ?」
 「君も来ていいんだぞ?」
 リネットを心配して誰もが『提案』を行う。しかし、リネットは誰の言葉にも答えることがなく、黙っている。一番近くにいるクレアも心配になり、リネットの目線に合わせてしゃがみこんだ。
 「リネット、そんな顔をしてどうしたの?」
 「…………」
 それでもリネットは答えることをしない。
 クレアは目の前の少女が何を考えているのか、自分の大好きな漫画を読んでいる時のように、その表情から察しようとする。
 少女のその泣き出しそうな顔からは<本心から行って欲しくないようで、他にも何か言いたそうにしているが言葉が見つからず戸惑っている>ように感じた。
 また、まるでリネットの母親のような気持ちになったのだろうか。クレアはリネットの言いたがっている本音も気付いたようであった。
 (
「お母さまに会いたい……けれど私ひとりじゃ、会えないのです」
 そう言いたいような顔をしている。

 考えてみれば、彼女の元々の体は肉体と魂とがバラバラにされていた。
 その肉体の代わりを、自分たちが補い、今の彼女<リネット>がある。
 「(そうか。そうだよね……。ずっとひとりだったんだから、会いたいって気持ちが強くなるよね)」

 クレアは笑顔で泣き出しそうなリネットの頭をなでる。突然のことで、リネットは涙目でキョトンとしている。
 「クレアおねえちゃん……?」
 「うんうん……。私たちが行ってしまうのはいやなんだね。あなたの顔を見ればよく分かるよ」
 「…………」
 「……それに、私たちは待っている人が『あっち』にいるけど、あなたを待っている人、お母さんは私たちのことも待っているんだね」
 「クレアさん……それはどういうことだ?」
 「…………」
 「リネットちゃんのお母さんは私たちのことを待ってるんですか?」
 リネットは泣きそうな表情で全員を見ている。
 「……リネットちゃんはお母さんに会いたいって言ってたな」
 大鬼の言葉で全員がリネットがずっと下の階でそう言っていたのを思い出す。
 今までの塔のしかけから、クレアは何となく察していた。恐らく最初の階の、あの階段のしかけと似たようなものだ。
 リネットが母親に会いに行こうとすれば自分たちも行かなくてはできない。
 「…………リネット。あなたのお母さんは「あなただけでは会いに行けない」んだね」
 「そうなのか?」
 マルクスもリネットの真意を知ろうと膝をついてリネットを見るが、泣きそうな彼女から読み取るのは少し難しかった。ただ、なんとなくそうじゃないかと思う。
 「こんな時に、君の気持ちさえなんとなくでしか理解してあげられないなんて……私は医者失格だな……」
 泣きそうになっているリネットを見ていたクレアは、言葉を待たずにリネットをそっと抱き寄せる。
 「リネット……あなたはお母さんに会いたいのよね?」
 耳元で優しく問いかけられるその言葉に、リネットはコクッと頷く。「うん、うん」とクレアも頷きながら頭をポンポン、あやすように触る。
 他の一同もその答えに賛成したように、お互いに顔を見合わせる。
 「……それならもう少しここに残ってお母さんに会いに行かないとですね」
 「しかし、他に扉のようなものがあるのか?」
 クレア以外はどこにそのような扉があるのかあたりを見回していた。
 リネットから体を離したクレアはリネットに向かい合って、しっかりと伝える。
 「……分かった。私、あなたのお母様に一緒に会うわ」
 「俺も残るよ。子どもの願いをかなえるのは獣医の副業だ」
 
「私だって……こんな子に寂しい思いをさせるわけにはいかないわ」
 その言葉に、リネットの表情は一気にパァッと明るくなった。
 一緒に来てくれるのが分かると、リネットははしゃぐ子どものように、クレアの手を引っ張る。
 「こっちです! あなたがいれば私も通れます!」
 出口の反対側に向かって歩き出すリネットとクレアの後を四人も追う。しかし、リネットがそう言った先にあるのはただの『壁』であった。
 「こっちにお母さんはいるのかい?」
 藤原が不思議そうに二人を見てそう言った。が、リネットの耳には入っていなかったらしく、答えることはなかった。
 一見してもよく見ても何の変哲もない壁だが、リネットは「壁に向かって消えてしまう」。それは引っ張られていたクレアも同じである。
 
「なっ! お嬢さんが消えたぞ!」
 
「え? 消えた? 一体どこに?」
 
「リネットちゃん!」
 「消えた……?」
 通り抜けた壁の向こう側から、クレアはみんなの声に戸惑い、立ち止まった。リネットも同じように止まって、クレアを見つめる。
 「リネット、みんながまだ入れてないわ。ちょっと体を半身にしましょう」
 リネットはこくりと頷くと、クレアは上半身を壁からニョキと出した。
 「みんな、こっちこっち」
 「…………」
 クレアはどこか今の状態を楽しんでいるのか、自由になっている左手―パペットが付いている手―で四人に向かって手招きをして誘導している。
 「あ…………はい。大丈夫ですかね……?」
 「まあ、現にクレアさんは無事ですし……」
 「壁をすり抜ける? なにそれすごい!」
 クレアの現れ方に驚きつつもひとまずは無事であることが確認できた。
 「……いた」
 マルクスはついにこの日が来た、と確信した。
 マルクスは、来日してから多くの日本人たちから言われていたことが嘘なんだと信じていたことが証明されるこの瞬間を、興奮さながらに叫ぶ。
 「NINJAは実在した!」
 全員がその叫びに驚く。また、マルクスと同じぐらい興奮し、目を輝かせる人物が、マルクスの目の前にもいた。
 「え!? NINJA!? マルクスちゃん、そいつどこっ!?」                    (  ドーモ  )「(今、誰か返事をしたような……?)」
 マルクスの言葉でNINJAを探すクレア。その姿を見て、自分が会いたくて仕方ないNINJAはまだ会えていない、と少し落胆する。
 「なんだ……クレアさんがNINJAではなかったのか。ではトリックだな」
 マルクスはクレアが突き抜けている壁に向かうとその壁に手を触れてみる。その手はすり抜け、物質的な感触はなくスカスカとしている。
 「ほう……これは……不可解だ」
 そう言いながらも、マルクスはズカズカと進んで行く。
 「すごいすごい!」
 子どものようにはしゃぐ霧島、少し不安そうな藤原と大鬼もマルクスに続いて壁の中へと入って行った。
 「これで全員入ったな……ん?」
 マルクスが六人ともいるのを確認してからもう一度壁に手を透かしてみようとするが、壁は元の固い壁になっていた。
 「(……後戻りはできない、か)」
 今更どうにもできないことを嘆くよりも、これから先の事を考える方が大切だ。そう考えたマルクスはこのことを伝えることを止めて目の前の階段を上っていった。
 クレアは自分の手を引く少女のことを思った。
 「(もしも自分たちがいなくなったら、この子はどうなるだろう?)」
 幸せになれるのだろうか。寂しがらないだろうか。この子が私たちにしてくれたお礼は何ができるのか。
 いろんな疑問が浮かび上がってくる。
 クレアは何かを決めたように、階段を上る足を止めた。それに気付いたリネットは振返り、不思議そうな顔で尋ねる。
 「? どうしたの、クレアおねえちゃん」
 立ち止まった二人に他の四人も足を止める。クレアは視線をリネットの視線に合わせ、話し始める。
 「リネット。さっき、あなたに「私たちはあっちに待ってる人がいる」て話したよね」
 「はいなのです」
 それを聞いて、クレアは右手にはめていた指輪を抜いて、リネットに見せる。その顔は柔和な、女性そのものの表情であった。
 「私たちは何回もあなたに助けられた。だから私もあなたにできることをしてあげたいの」
 「? どういうことですか?」
 「さっき、この指輪に私は助けられたから、あなたにもこれを」
 そう言うと、リネットの親指に銀の【魔除けの指輪】をはめた。それを見て、リネットは嬉しそうな声でお礼を言う。
 「わぁ! ありがとうなのです、クレアおねえちゃん」
 それ見ていた周りの人たちも微笑ましくしていた。
 「うむ。きっと君を守ってくれるだろう」
 
「良く似合っていますよ」
 大鬼は無言で頷いていた。
 クレアは笑顔でいるリネットに続けて言葉をかける。
 「それに……あなたの待つ人が「お母さん」だけじゃさみしいじゃない」
 リネットの小さな手を両手で包み込むと、言葉を続ける。その顔には母性がにじみ出るような笑顔が隠れていた。
 「私たちもあなたの待つ人になってあげたい。だから忘れないで。私たちはずっと一緒よ。
 みんな一緒なら怖くない。だからみんな一緒にいましょう」

 「うん」
 その言葉を純粋に嬉しく思ったのか、リネットは初めて会ったときと同じようなニパーとした笑顔で答えた。

 六人が長い階段を上り切るとほの暗い部屋に辿り着く。壁側にはガラクタとなった人形の部品や斧や鋸に槍のような凶器が積み上げられている。
 奥の方へ目をやると黒い棺にもたれ掛かるようにしてうつ伏せになっている人影に気づく。人影は黒々とした長い髪で顔は見えないが、それを人影だと確認すると、リネットは「お母さま!」と叫びながら向かって行った。

 

 

  <NEXT>    【  第8章 ラストダンス  】

 

  <BACK>