【プロローグ】

 現代日本・・・夜。
 四人の男女たちは、ふとお酒が飲みたくなった。
 それはストレスから来るものか? はたまた、ひとりで飲みたいのか?
 理由は人それぞれだ。
 最近、見慣れないジャズバーができたので今日はそこで飲もうと、それぞれが店に足を運ぶ。

 店の前で腕時計を見ながら待っていた女性、宇野安寿は和装の男性を見つけると笑顔で手を振った。その左肩にかかっているトートバックには、学校帰りなのか、筆記用具やノートの類がちらりと見える。
 「おーい。とーきーむーねー」
 『ときむね』と呼ばれたその人、真田時宗はその声に気付いた。彼も軽く手を振り返しながら安寿に近づく。
 「おー、今着いたところだ」
 「それはよかった。今日はこっちまで出向いてくれてありがとうね」
 「気にするな。たまには和風じゃないところで、新たなインスピレーションでも欲しかったからな」
 「ふふっ。またお師匠さんの愚痴でもいっぱい出しちゃいなよー」
 肩をすくめながらそう言う真田を安寿は笑いながら話しかけていた。

 同じとき、少し離れた場所で上機嫌で歩いてくる女性がいた。
 故郷の日本には久しぶりに帰ってきて、おいしい酒があれば深夜になってでも行くほどのグラスホッパーだ。一晩に何件ものバーに行くのは日本特有の飲み方であると知っていても、それをやめられないというものだ。
 「ここのバーテンの腕はどうかなー? 美味しいお酒が飲めるかなー?」
 この前日、別の店で酒を嗜んでいる時にたまたま隣にいた客から「このあたりに新しくジャズバーができた」と聞いた。酒好き、新しい店にも興味のある彼女はそれを聞いて行かない理由がなかった。
 入り口で屯っているようにみえる若い男女がいた。
 やはりバーはカップルで来るものなのか、とまだ二十四の彼女は考えてしまった。
 「……おお、カップルがいる。やっぱりおひとりさまは珍しいかな」

 その反対側から、大柄の男性がポケットに手を突っ込んでジャズバーへ歩み寄ってくる。
 
「ジャズバーなんて久々に来たな……お?」
 前々から来ようと思っていたジャズバー。その近くで楽しそうに話をしている二十代前半の男女がいる。和装の男性は落ち着いた雰囲気を出している。相手の女性は見た目やカバンから見えているルーズリーフからして学生のようであった。
 「学生か? 仲が良い事で」
 最近は疲れることがあり過ぎた。
 自宅に置いてきた『あれ』のことを思い出す。一人ではなく、職場の誰かを連れてくるべきだっただろうか?
 「誰か誘うべきだったか?」
 ――いや。話したところで信じてはもらえないだろう。
 「……ま、今日はのんびり飲むか。最近は疲れた」
 向かいから歩いてくる一人の女性の存在に気付きながら、そのまま店の入り口に向かって行く。
 「(何か視線を感じるな……)」

 「わぁ。いろんな人が入っていくねー」
 「そうだね。おっと、入り口で立ち話もなんだ、入るかね」
 「うん」
 四人はジャスバーの入口へ向かって行く。一番入口に近かった安寿がドアを開ける。
 すると……――
 
 「……う……これは? ……あ……んじゅ」
 真田はその頭痛と吐き気に耐えられずに、意識が途絶える。それは、他の三人も同じだった。
 「んだ……これ?」
 「あ、れ……?」
 「うっ、きもち、わるい……」
 突然、酷い頭痛と吐き気。誰もそれに耐えることができなかった。

 果たして、彼らの運命は……?

 

 

 


  とっつぁんさん作成シナリオ  「月の宮殿」

    どうぞ、最後までお楽しみ下さい

 

 

 

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