地球劇場 第20幕
伝染病・北山病患者達のゴールデンウィーク
ようこそ、当医院へ。当医院は、日本に一つしかない、北山病の専門医です。この病気は、ダウンレバー指定の伝染病で、北山川に来た人はかなりの確率で発症する軟病です。患者は、以下のカルテを読んで、自分に当てはまる症状を確認しでください。
カルテNO.1 外科 打ち身・筋肉痛
北山川は二つの顔を持つ、とても楽しいカヤック天国である。一面は、上流部ホワイトウォーター、他面は下流部のんびりカヌー。その境は、我々がテントを張っている瀞の里キャンプ場である。北山病患者は、上流部を漕いでは沈をして、川底の岩でごつごつ体中ぶつけてしまい、全身青あざを作ってしまう。また、下流部を漕いでは、流れがなるいので、ひたすら力漕し、普段の運動不足も手伝って、全身筋肉痛になってしまう。
まずは北山最初の難所・オトノリの瀬に皆で突入する。ここは三段の瀬になっており、約500mほどホワイトウォーターが続く。ここで沈をすると、川底の岩でケツの形が変わるほど打ち付けられる。気分的にも打ちのめされる。先頭を行くワタクシが、ふと後ろを見ると、まずはニイミサンが轟沈・即沈脱。そのうしろのまっつんも轟沈!しかし、二度失敗した後の三度目のロールでなんとか持ち直した!ニイミサンをレスキューしようとフネを拾う準備をしていると、上流から次々とフネと人が流れてくるではないか!キセイさん・ハタクンが必死の形相で流れてくる。そして、ババ、今年もか!そのうえ、すぐ後ろでラフトがフリップし、ラフトのクルーが全員流れてくるし・・・・。それを助けている隣で、沈脱したニイミサンが再び出航し、そのまま5秒後にまた即沈し、またまた沈脱し、急流の中で、流れ行く泥船を片手で引っ張りながら、その瀬の中に仁王立ちしていた。
「大丈夫ですか、新美さん!」トミタの掛け声に、「おう!楽勝!」引きつりながら答える。それを聞いたトミタは、ニイミサンをほっておいて、一人瀬の中で遊び始めた。一方、仁王立ちしていても、にっちもさっちもいかないことを悟ったニイミサンは、フネを岸に向かって無理やり押し流し、自身も急流を岸に向かって泳いでいった。信じられないパワーと根性である。オトノリの瀬の患者は、キセイさんとハタクン。二人とも、しっかり岩にお尻をぶつけたらしい。
![]() ここまで積みます!ハイエース! |
難関・ナイアガラを突破し、流れに身を任せて下っていく。ゴール直前の何もないところで、またもニイミサンが沈。セットをするもロールが決まらずに沈脱をする。本日の轟沈王の地位を不動のものにし、観光筏下りのゴール地点で昼飯にする。ここから先はババ・トミタ・ミホコ・ワタクシの四人で下ることになった。疲労神経が完全にいかれているようである。北山川のハイライト、滑り台の三角岩につくや、彼らは狂喜し、喜んでカヤックに乗って、滑走を楽しんでいた。最後、ワタクシの番である。いざ、座ろうとすると、ババが支持しているカヤックの向きが前後逆である!これは、後ろ向きで滑れと言うことか!何がなんだかよくわからない恐怖の後、ふっと一瞬からだが浮き上がり、そのまま後ろ向きでカヤックは落ちていった。載っている方は、前向きの方が圧倒的に面白いのだが、見ているほうは、後ろ向きに水面に突き刺さる姿は面白いと思われた。 疲労神経がまったくイカレテイルこの3人の患者を、なんとか田戸まで明るいうちに到着させねばならぬと、ワタクシはプレッシャーを感じていた。なにしろ、彼らときたら、瀬を見たら、「うっほー!」とか叫びながら突っ込んでいき、もみくちゃにされながらも懲りずに瀬に遊ばれているのだから、時間がどれだけあってもきりがないのだ。しかし、この川の水のきれいさを考えれば、瀬で遊びたくなるのも理解できる。これも、北山病の症状の一つなのだ。 |
翌日は、下流にいくグループと、上流に行くグループとに分かれてのツーリングとなった。別当君は当然のごとく、上流に行き、見事に一沈脱をしたらしい。下流の方はといえば、子供を乗せてののんびりカヌー。北山川の深い谷の底を蛇行していく。瀬らしい瀬はなく、ひたすら漕ぎ続けるパワーカヌーである。ワタクシはといえば、カナディアンカヌーにこづえチャン(10歳)とアオイチャン(3歳)を乗せて、二人に漕ぎ方を教え、掛け声だけをかけながら、空を仰いでひたすらビールを飲んでいた。最高に気分がいい。カナディアンカヌーにはクーラーに冷えたビールがたっぷり積んである。積載量350kg、どんな荷物も何でも載せれるアリーは、空母の如く存在感があった。
ゴール地点まで漕ぎきり、子供達も含めて皆満足である。さて、撤収という段階になって、すごいことが判明した。なんと、タクマが車のキーを持ってきていないではないか!!どんないらないものでも積むことが出来るこの積載量を持つフネがあるというのに、こんな小さなカギ一つを忘れてしまうとは!ちなみに、タクマはアオイチャンの着替えも忘れてしまい、いかに、頭の中が北山病に冒されているかを実証した・・・。
カルテNO.2 胃腸科 DO依存症
北山病の大きな特徴は、食べ過ぎてしまい、胃腸が苦しくなるという症状である。
焚き火に吊るされたダッチオーブン(以下DO)で作られた料理は、筆舌に尽くせぬほどうまく、誰もがつい食べ過ぎてしまうのだ。
今回の夕餉のレシピは
・5/2 ジャンバラヤ(メキシカンピラフ、12インチスキレット) ちげ鍋(12インチDO) フライドチキン(10インチDO)
・5/3 ローストチキン(12インチディープ) フライドチキン(10インチDO) どて鍋(12インチDO) お子様カレー(10インチDO) スモークチーズ
・5/4 チリコンカーン(12インチDO) ローストポーク(12インチディープ) どて煮込みご飯(12インチDO) スモークサーモン サラダ
ババ・ユーキの怪しい料理人が、怪しい匂いを醸しながら、美味いメシをたくさん作ってくれた。ろこちゃんが、たくさんの食材を持参してくれて、新しいDOの境地を開いてくれた。夕方食べたふきのとうのてんぷらも最高に美味かった。そして、DO料理人たくま。彼の働きを語らずして、北山のレシピを伝えることが出来ない。彼はテン場に着くや否や、アオイチャンをそっちのけでいきなりDOを取り出し、いきなり仕込みを始める。今回、彼の作ったDO料理のなかで、特にローストポークが美味かった。また、ローストチキンは過去最高の出来と本人が言うように、焼き具合・味付けともに文句の付けようがなかった。そして、ひたすらフライドチキンを揚げては食べ続ける。このフライドチキンが壊滅的に美味く、例えば一日目、ニイミサンは三人しかテン場にいないにもかかわらず、しかも、一回につき、6本しか揚げていないにもかかわらずあまりの美味さに、がつがつと無言でいきなり3本たべやがった!暗黙の了解で一人二本のはずなんだが・・・、そんなことはおかまいなしで、けんか腰で食べなければならないほどのシロモノなのだ。
こういった料理を毎日食べ過ぎていると、胃拡張になり、そしてDO依存症になっていくのだ。北山病の典型的な症状の一つである。
カルテNO.3 小児科
子供達も、この川に遊びに来ると、北山病になってしまうのだ!
大地は、前日まで寝込んでいたくせに、ワタクシが北山川に行くというと、オオ泣きし、「僕も連れて行ってくれ」と訴える。お医者さんに、「普通の生活に戻していいよ」と言われると、母子ともに飛んできた。彼女達にとって、普通の生活とはキャンプなのだ。
別当家のベイビー・アーチャンは、喜んで連泊していった。それは決して、お父さんの別当君がひたすらカヌーに夢中になったため、帰る時間がなくなってしまったからではないはずである・・・。
トミタ家は一家総出で川の上に乗り出していた。キュウイ2の後ろ席にトミタ自身が座り、前座席には奥さんのゆきちゃんが、生後10ヶ月のタノシ君を抱っこしており、二人の間には3歳のテントがミニパドルを持って乗り込んでいた。命知らずの怖いものなしの家族である。しかし、楽しいと思っているのは夫婦だけで、ツーリング中に二人の子供は完全に昼寝していた。
平均年齢16歳のトミタ家キュウイ2を横目に、ワタクシの操るアリーは平均年齢14歳。10歳のこづえちゃんと3歳のアオイチャンが力漕する。昨年、下流の小川口まで、こづえちゃんの叔母にあたるろこちゃんと一緒に下ったものである。歳のせいか?、ろこちゃんとは小川口までのツーリングだったが、こづえちゃんとはそのはるか下まで漕いでいった。彼女は10歳にして、叔母を超えたのである。その瞬間、彼女は英語で叫んだ
「オーバー・ザ・オバ」
ひたすらカヌーを楽しんだタクマパパは、昼飯時に凄い事に気がついてしまった。なんと、アオイチャンの着替えを持ってこなかったのだ。そのせいで、アオイチャンは、なぜかスッポンポンで立っていた・・・・。
北山病は、子供をも狂わせる・・・。しかし、根本的な原因は、いつもその親にあるのである。親が北山病に冒されている場合、手の施しようがない・・・・。
カルテNO.4 調薬科 バカに塗る薬はない
名医と呼ばれるワタクシだが、バカに塗る薬はない。よく言われることだが、バカは死ななきゃ治らないのだ。
| N氏は、4月27日の長良川カヌーで、なにをどう間違えたのか、太陽光を浴びた部分(腕及び首)に人間のモノとは思えない発疹が出て、オマケに目を真っ赤にして北山川にやってきた。本人は極度にひどい日焼け及び結膜炎と思ったらしく、ちょっと変かな?と思いつつ、それでも一日目は撃沈王の名をほしいままにし、二日目は筋肉痛になるまで激槽していた。結局、「スティーブンスジョンソン症候群」という、死亡率30%、年間発症数300件という、宝くじ並の確率の病気にヒットしていたことがわかり、周囲を驚かせた!瀕死の状態だったにもかかわらず、なぜか、翌週の気田川カヌーにはキャンプだけとはいえ、参加していた!まさに、処方する薬はない! ゴールデンウィークの前半から、ポンちゃんと大地は熱を出して、完全に寝込んでいた。なんとか回復してきた5月2日、ワタクシはすでに北山川に向かっていたのだが、ポンチャンは病院に行っていた。その小児科の先生に、「普通の生活に戻してもいいですよ」と言われて、翌日、T氏とともに、北山川にやってきた。彼女にとって普通の生活とはキャンプのことである。 そのポンチャンを乗せてきてくれたT氏は当初は不参加を表明していた。理由は一番下の子供の風邪であった。5月1日、北山病の禁断症状が出始め、密かに家庭内工作を始める。5月2日、末期症状になり、上の子供(あおいちゃん)のみを連れて、北山川に行くことにする。自分自身、子供を一人連れて行くことで、遊びに行くことを正当化したようである。この病気は、一度かかると、家族を顧みなくなる、とても恐ろしい症状が特徴である。U氏に塗る薬は、現在どこにもない。ただ毎年、北山川に行き、症状を押さえ込むだけである。 |
![]() 患者達 |
S氏。5月4日の夜中1時に名古屋を出発し、同4日の朝7時ごろ、北山川に到着する。そのまま上流をカヌーし、夜はバカ騒ぎをし、そして、翌5日の朝6時に帰っていった。それ以前に連絡もなく、突然来て、突然帰っていった。ただし、ビールだけは、たらふく飲んでいきやがった!
今にも壊れそうなランドクルーザー。北山川に来るまでに、途中で沈をしても、誰も不思議に思わない。そんな車で四国から4人もやってきた。10時間やそれくらいはかかるというのに・・・・。そこまでして、ここに集まるのか。
北山病とは、かくも恐ろしいものなのだ。この病にかかったバカどもに塗る薬は、現在何もない。
カルテNO.5 精神科 アルコール依存症
朝6時に目を覚まし、起きてまずはビールをプシュッ!と開ける。ちびちび飲みながら、朝飯のベーコンをダッチオーブンのフタで焼く。卵を落として、目玉焼きにし、隣でババタイチローが作っている怪しい料理をつまむ。川面にフネを浮かべると同時に、またプシュッ!と音がする。漕ぎ終った後の爽快感に包まれて、またプシュッ!とあける。テン場に戻ってきては、料理の前にプシュッ!と音を立てる。風呂に入れば、気持ちがいいといっては飲む。メシを食べるときには、満面の笑顔で乾杯をする。こんなダウンレバーな面々に処方するものは何もない(敢えて言えば、保険に加入するのをお薦めする)。北山病にかかると、こういうひとときを一年に一度は過ごさないと、発狂しそうになるから困るのだ。発狂するわけにはいかないので、また来年もここにこようと、固く誓って、今年も解散するのであった。もう一度、北山!アンコール アンコール アンコール アルコール アルコール アルコールアルコール アルコール アルコール・・・・・・・・・
完