地球劇場第三幕
NZ RUN,どう?
1.持ち物リスト
一.パスポート,バウチャー,保険証,YH会員証,学生証,現金,T/C,パスポー
トコピー,クレジットカード,予備の写真2枚,
二.洗面道具,タオル,薬(1),つめ切り,耳かき,衣服(2)
三.テント,マット,寝袋,ストーブ,ランタン,ヘッドランプ,ナイフ,コッヘ
ル,コップ,ライター,ストラップ,まな板,洗剤,調味料,焼き網,軍手,
洗濯ひも,かさ,
四.カメラ,コンパス,三脚,フィルム,電卓,ビニールテープ,ラジオ
五.筆記用具,ガイド,日記,住所録,時計,会話集
六.自転車,輪行バッグ,工具,チューブ,ボトル,ボトルゲージ,鍵
七.ディパック,ウェストバッグ,フロントバッグ,サイドバッグ,
*(1)胃薬,風邪薬,消毒液,ばんそうこう,包帯,日焼けどめ,ビタミン剤
*(2)シャツ,下着,靴下,水着,レインコート,ジャージ,Gパン,トレー
ナー,帽子,サンダル,グラサン,保温力のある上着,
NZRUN 27.2〜20.3.1996
・〜3/1
木内;
いきなり市役所を10連休という離れ業で休んできた木内。海
外ははじめてだというのに,チケットの関係上,たったひとり先
に向かうことになった。不安そうな木内を名古屋空港まで送り,
必ず,感動の再開をしようって決めて,熱い握手で俺は木内を見
おくった。
2/28日NZクライストチャーチ到着。ドミトリーに泊り,一人
でチャリ屋を探し,買出しし,銀行を探し,大変だったみたいだ。
でもうらやましいことに,外人のネーチャンの下着姿をばっちり
見たとかいって,結構充実していたみたいだ。
佐野,馬場,杉山;
大谷トミノで見送りされた我々は木内から二日遅れでクライ
ストチャーチ入。なぜか2時間ほど早く到着し,予想外のラッ
キーに最初は随分喜んだ。
「これでちょっとクライストチャーチを見学できる。」
ところが,税関でテントを広げられ,えらい手間を食った。な
にしろ,俺のテントからはぞろぞろ虫が出てきて,とにかく税関
は大騒ぎになった。
「こりゃなんだ。」(税関役員)
「虫です。ごめんなさい」
「ばかもーん」
ああ,相変わらず素直に税関を突破できない男なのねえ。たっ
ぷり嫌みを言われた後,町の中心,カセドラルの前で休んでいる
と,どことなく日本人ばなれした男が近づいてきた。そいつの容
ぼうは,安っぽいTシャツに,半ズボン,サンダル。貧乏臭い。
「おまえそこでなにしてるよ。」
「休んでる。」
飛行機が二時間も早く着いたんで,飛行機到着予定時刻よりも
早い時間から広場にいた俺。木内とは劇的な出会いとはいかな
かった。なんとなく拍子抜けだったね。とりあえず,ここから一
生笑える話が始まったわけだ。
この日はこれからチャリ屋,銀行,買出し,バスのチケット,航
空会社,そんでもって,グループラン開始飲み会と忙しい。それ
でも,おもしろかった。街ゆく女は露出が高い。ブラジャー丸出
しの女のコが通ったときなんて,木内の目は,まさに一点集中。
最後にカセドラルの前で写真を撮って,この日は終わった。
明日から,本格的NZランが待っている。
・3/2 クライストチャーチ→マウントクックビレッジ(バス)
バスの中は,なぜか日本語のガイドが流れていた。ガイドのギ
ャグは最高につまらなかった。馬場はよく眠っている。無理も
ない,今朝は随分早かった。冷房の聞いた車内は寒いのか,半そ
で半ズボンの杉山は眠りにくそうだ。俺は,ぬくぬくとねたっけ。
なにしろ俺には,シンガポール毛布という,飛行機内でもらった
究極の薄手保温力抜群デザイングット的シロモノがあったけん
ね。NZのバスは楽だった。輪行しなくてもそのままバスの横っ
腹にチャリを積みこめるんだもん。余りの楽さに俺達は…。
Mt.クックビレッジには嫌というほどたくさんの日本人がいた。
雨にもかかわらず,サイクリストもいた(彼らは東北大学三人組)。
古い話だが,'95夏ツアーで俺は東北大の一人と合流したグルー
プランを行った(ほとんど拉致に近かったかもしれんが)。そん
な関係もあって,東北大には結構な思い入れがあって,結局俺達
は一緒に行動することになった。雨の中,買出しを済ませて,5km
離れた山小屋に向かう。山小屋の宿泊費は$12(\840,$1=\70)。
ドミトリー形式のきれいで快適な小屋だ。キッチンは広く,使い
やすい。めいめいくつろぎ,雨が止むのを祈りつつ,日が暮れた。
屋根が高く,丸太作りの山小屋のリビングルームで飲むコーヒー
はインスタントにもかかわらず,美味しかった。えっ?ビールの
方がうまかったっけ?
・3/3 Mtクックビレッジ連泊
雨。あめ。あーめ。でも,全然動いていない俺達は動きたくて
しょうがない。そんなこといっているが,俺と杉山が起きた時間
は9時。いやいや。NZの朝は遅いねえ。とにかくガツンと胃袋に
食パンをぶちこんで,インフォメーション(以下インフォメ)へ。
そこでマップをゲットした俺達は,大平原のダートをしゃかしゃ
か走って,ただただ氷河をみるためにペダルに力を入れた。そし
て,タスマングレーシャーTASMAN GLACIERに着いた。丘に登って
見た物は…
採石場か鉱山か?いやいや,氷河だ氷河。そう,俺以外はみんな
はじめてみるはずなのに,なんだこの失望した顔は。がっかり。
“これじゃ満足できん。”
「フッカー氷河HUKKER GLACIERへ行こう。」満場一致である。
でも,なぜか皆途中にあった巨大な滝に魅せられて,滑る岩に
必死でしがみついて,フォールトレッキングを楽しんでいた。け
つを出してる奴もいた。滝の上流ははるか雲の上。馬場はべた
濡れになりながらも,大喜びだった。
場所は変わって,キアポイントKEA POINTトレッキング。ここ
は,Mtクックの絶好の展望地のはずなんだが…霧。白い雲の世界
がここには広がっていた。杉山はハンガーノックで苦しんでい
る。ここでも氷河は見えない。なんとなくみんな沈んでみえる。
そんなとき,
「オー!」木内「オー!」馬場「オー!」杉山「オー!」佐野。
木内は「♪ようこそ,ここへCook Cook♪」,杉山は「Mtクッキ
ング」,馬場の頭の中には〔マイルドセブンの白い世界〕が,俺
達の目の前は,突如霧が晴れ,青い氷河が姿を見せた。写真を撮
る俺達。すごいぞこりゃ。 Mtクックは見えなかったけどね。
この日は日曜日で,法律によってお酒のTake
Away不可能だっ
た。知ったのは,この日の夕方なんだけど。くうう,残念じゃ。
夜空には,サザンクロスがさんさんと輝いていた。
・3/4 Mtクック→オマラマOnaranma
雨。あめ。あーめ。ええかげんにしてくれよお。昨日の南十
字星は一体…。それでも準備を黙々とする俺達。9時前にはパッ
キングを終え,雨が止んだのを見計らって出発。
う・つ・く・し・い。でかい。ひろい。白い水をたたえたプ
カキ湖にそって走る。皆走っては止まって写真を撮り,また走っ
ては止まるを繰り返す。それ程きれいだった。木内の日記によ
ると
“この湖面の美しさは僕の澄んだ心と似ていて僕はこの湖をす
ごく身近なものに感じながらゆっくりとペダルをこいでい
た。”
おいっ!木内。なんだこりゃ。まいいや。とにかくきれいだっ
た。60KM走ったところにある最初の街で昼食。食料品は思って
いたほどは安くない。ただ,野菜はすべて計り売りなので,無駄
がなく助かる。日本じゃ買えん変なものを買うのが,海外の楽し
みの一つである。
食事後,再び出発。午前中と同様,本当に何もない平原を走る
走る。地図上に街の名はあるが,実際街はなかった。木内を除く
皆はとにかく快調に走っていた。えっ?木内?なんかこの美しい
大地に汚点を残すようなことを…
まっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっすぐ。
こんな感じだ。二つ目の街で初キャンプ。この日はまじで90km
走って,街は二つしかなかった。キャンプ場は$8.5(\600)で,キ
ッチン,リビング,シャワー付き。こんな快適なキャンプ場で
ビールがまずいわけがない。まったく,オーブンまで付いてりゃ
あ,俺のピークワンなんて出番がないよ。
・3/5 オマラマOmarama→ワナカWanaka
曇り後晴。昨夜,テントの前室でごそごそ動く物体を木内が発
見した。なんだなんだ?木内は恐る恐るのぞき,その物体を見て,
俺を起こした。
「おい,佐野,起きてくれ。前室にでっかい蛙がおるみたいな
んだよう。」
俺は不機嫌そうに起き上がって,こっそりのぞいてみた。たし
かになんかいる。だけど,この大きさはとてもじゃないが蛙には
見えない。木内はヘッドランプでそれを照らした。な,なんと!!
それは,はりねずみだった。はりねずみが袋の中にごそごそはい
って,でれなくなっている姿だった。妙にラブリィである。思わ
ず杉山をおこして,むりやり見せてみたが,杉山は全然眠そうで,
「あー,そうですか。」
僕には関係内もんねぇって感じでぐうぐう寝ていた。
木内は相当恐かったらしく,袋ごとはりねずみを捨てに行った
が,おそるべしははりねずみ,すぐに戻ってきて,また前室でごそ
ごそやりはじめた。結局木内は全然眠れず,前日同様のアフリカ
ステップのような風景の中,きつそうだった。追い打ちをかける
ように,初峠がある。このリンディス峠,とにかくまっすぐで,お
いおい,ずっと先が見えるじゃないかかんべんしてくれよ,とい
ってもこぐしかない,ちょっと日本じゃお目にかかれないシロモ
ノだった。峠の頂上でイギリス人夫婦に茶をごちそうになり,馬
鹿ポーズを撮ってかなりいい気になりつつ,こりゃまたまっすぐ
の下りを楽しむ。今回は腹下りはいなかった。よくわからんか
ったのは馬場。力が有り余っているのか,昼飯時になぜか馬場は
急流に流されながら泳いでいた。そういえば,Mt.クックのふも
との滝のところでも馬場だけは裸になっていたっけ。露出症か
しら。
この日はキャンプ場がなく,110km走って街までたどりついた
という日なのだ。本来なら,皆疲れと腹へりで機嫌が悪くなるの
だが,木内の提案で始まった『NOVA'S DAY』のおかげで訳もわか
らずハイテンションになっていた。PM5時。この時から我々は一
切日本語を使わない,英語オンリーの世界に突入した。ナンチャ
ッテ英語だ。
この日は一品だしの日でもあった。おかげで,そろいも揃って
自分のメニューの名前さえつけれなかった。それでも夜のお話
しの時は,英語力を駆使して,中一程度ながらも,自分の10年前の
話を4時間ほど語り合った。でもね,どう冷静に考えても日本語
なら一時間程度の内容しか無かったよね,みんな。
・3/6 ワナカWanaka→クィンズタウンQueenstown
朝のワナカ湖の景色は最高だった。俺は,キャンプ場であひる
に囲まれ,なんか変な気分だった。奴らと来たら,がぁがぁ言い
ながらよちよち歩いてやがる。可愛いと思ったのもつかの間,い
つしか奴らの鳴き声は
「えさ!えさ!」
ってかんじにしか聞こえなかった。
晴天の中,我々は走る。気持いい。と思いきや,ダート。ダー
ト。ずっとダート。約25kmの究極のの・ぼ・り。相当来てるな,
コリャ。ここで,木内がメカトラ発生。リアホイールが外れてし
まった。一緒にいたのは杉山だが,なにしろ今日は昨日からの
『NOVA'S DAY』。お陰で今日も英語だけなのだ。
杉山,「いやあ,英語しかしゃべれないのはつらいっすよ。」
とかいってるが,楽しそうだった。
てっぺんの景色は,うおおおなんてうつくしいんだあこりゃっ
てかんじだった。そんでもって,スーパーダウンヒル。相変わら
ず根性がないもんで,チキンハートの爆発におびえながら,それ
でも一応先輩としてのすずめの涙程度のプライドというものも
持ってるんで,笑顔をひきつらせながら下ったもんだ。
クィンズタウンのキャンプ場も他のキャンプ場同様,キッチン,
リビング,洗濯機に乾燥機,冷蔵庫にオーブン付きの快適な宿だ。
このキャンプ場でテントを張り,今まさに飯を食おうとしていた
俺達の前に現れた人物は,なんとあのシェルパ斉藤だった。知ら
ない人は雑誌Be-Palを読んでちょうだい。ちなみに,俺達とシェ
ルパの出会いは,シェルパが記事にしてくれたおかげで,Be-Pal4
月号に掲載されているんで,見たい人は声をかけてちょうだい。
俺達は周りの人に怒られるまで飲み続けた。シェルパ,むちゃく
ちゃええ人やった。シェルパはなんとなく寂しがり屋で,とてつ
もなく人間が好きで,なんとなく俺とだぶって見えた。
3/7 クィンズタウン連泊
木内,そういえばこいつって社会人なんだっけ。え??もう今日
帰るの。いやあ,すっかり忘れてたっけ。朝からシェルパを見送
ったばっかなのに,昼過ぎには木内も社会復帰するために飛行機
に乗り込むのねえ。
俺と木内は真っ昼間からレストランで飲んでいた。なんかよ
くわからんが,どっちから言いだしたでもなく,二人ともビール
を胃袋にゴキュゴキュぶち込んでいた。二人して結構酔ってし
まい,いい気分でチャリにまたがって飛行場へ向かった。旅をし
ていると,出会いの数だけ別れがあって,そんなときはついお酒
を飲みたくなる気持ちを,わかる人もいるだろう。(いや,けっし
て俺がアル中だからじゃないよ。)いつのまにか,酒がないと本
音が言えない人間になったのかもしれない。けど大丈夫だ。な
にしろ,酒だけは世界中どこへ言ってもあったからなあ。
3/8 クィンズタウン連泊
父上,母上,先立つ不幸をお許し下さい。 えいやあー!!!
この日は,晴れていた。実は,前日にラフティングとバンジー
ジャンプの予約を入れていた。知っている人もいるかもだが,俺
は泳げない。おまけに高所恐怖症である。そんな俺だが,馬場・
杉山の若い力におされて,また,なんといってもニュージーにい
るんだから的思考が働いて,勢いに任せての参加なのだ。
まずは,バスに乗って川の上流へ向かう。そこで,おうおう今
から戦でも始まるのかみたいなかっこうをさせられ,ラフト
(ボート)に乗り込む。メンバーは,日本人7人とおそらくバイト
と思われるワーキングホリデイの外人の女の子,そしてキーウィ
(ニュージーランド人)のキャプテン。こいつが随分くせ者だ。
とにかく,この男の指示に我々は従うわけだが,随分ナンチャッ
テいるのだ。はじめは,「イチ・二,イチ・ニ」って感じで声を
かけていたのが,いつの間にか,「でか・ちん,でか・ちん」とか,
「ちん・かす,ちん・かす,」とか,力を使っている時には勘弁し
てもらいたい掛け声をかけてくれるんだからたまんない。ワー
ホリの女の子も,突然,「でか・ちん is big ○○○○○.」なん
て言いだすし,ラフトの上は大爆笑だった。それでも最後の滝で
は,関西弁のにいちゃんがラフトから落ちて,滝にもまれにもま
れ,靴を奪われるほどの回転を繰り返し,命からがらといった感
じで泳いでいたりして,さすがのナンチャッテキャプテンも顔つ
きは真剣になっていた。
さてさて我々は,そのナンチャッテキャプテンに連れられてバ
ンジージャンプのつり橋へやってきた。高さは45mほど。近郊に
は100mを越えるバンジーポイントもあるそうだが,さすがにそん
なところには俺のチキンハートじゃ行けそうもない。馬場は,何
しろ恐いもんなんてこの世に存在しないという肝っ玉の座った
男なんで,もちろん反対したが,さすがに俺はそんな馬場の声に
耳を貸す余裕など全くなかった。はっきりいって,バンジー自体
にやる気はほとんどなかった。ただ,橋から飛んだ人間にのみも
らえるというバンジーTシャツには強い魅力を感じていた。俺
は,そのTシャツを着て日本に帰りたいという,その気持だけで
橋の上にたったんだ。
・・・・・死を覚悟した。文頭の言葉はこの時に出てきた。
後ろでは馬場が,向こうには杉山が,しかもカメラを持って
いる。
「棄権しよう。」頭の中をよぎる。しかし,棄権したら,な
んと,飛べない人間の証明として,チキンの絵の書いてあるT
シャツを買わされるのだ。それはいくらなんでも恥ずかしい。
係員のおやじ,何を勘違いしたか,カウントダウンを始めや
がる。
「スリィ・トゥワンゼロ!!!!」
はえええ。まだ心の準備があああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
ありったけの勇気を振り絞った自分がいつもよりかっこよく
感じられた。ふっ,見たか,馬場・杉山!!これが男の姿だ。
相当いいきになっている俺を横目に,馬場は爆転を決めた上,
上半身を川に突っ込むという離れ業を見せてくれた。かっこよ
すぎるぜぇ。続く杉山も上半身を川につけ(突っ込まれ?)ず
ぶぬれになって,それでもすがすがしい顔で帰ってきた。おい,
お前ら。なんか俺がめちゃくちゃ軟弱者みたいやんか。
エキサイティングな一日やった。俺は満足したよ。でも,馬
場・杉山の
「今度は100mバンジーに挑戦しますよ。」
なんていうひと言を聞いて,俺は二度とこいつらとは海外ツ
アーに来ないでおこうと固く誓ったよ。
その興奮覚めぬまま,俺達と一緒にアクティビティに挑戦した
千葉大のトライアスロン部の二人組,そんでもって,何回か面識
のある元福岡大サイクリング部部長のレンタ-バイカーを加えた
6人組は,またまた周りの衆に怒られるまで飲み続け,熱い夜を過
ごした。
NZの酒屋(Bottle Shop)は,非常に合理的だ。何が合理的か
といえば,ビールの売り方である。缶,瓶といったお馴染みの
ビールはもちろん,これに加えて,ペットボトルが存在する。と
いっても最初からビールがペットボトルに入っている訳でなく,
日本のバーなどによくある,生ビールの出るレバーみたいなもの
から,自分の好みのビールを注ぐ訳である。このペットボトルは
リサイクル・再利用され,資源の無駄がない。なにより,安い。
最後に馬場はこのビールのステッカーをもらい,随分はしゃいで
いたような気がする。とにかくこんないい制度は日本もまねし
てほしいねえ。
・3/9 クインズタウン→テアナウTe Anau
ね・む・い。朝5時40分。昨夜の酒も残っているが,俺達には
朝8時のバスに乗るというむっちゃ巨大な使命があった。慌ただ
しくパッキングをすまし,バス停で飯を食う。前回同様,バスに
そのままチャリを乗せ,自分達も眠い目をこすりながら乗り込む。
欧米では,なぜか乗客はバスの運転手側つまり前方に集まって乗
っているが,少しでもゆっくり眠りたい我々ジャパニー3人組は,
一番後ろに陣取り,座ったその時から眠りに落ちる。前回同様,
俺はシンガポール航空毛布を体に巻いてのお休みである。
10時20分にはテアナウにつき,即行テントを設置。ここのキャ
ンプ場も快適な上,日本人のスタッフまでいて,便利なことこの
上ない。ここテアナウで,俺がやりたかったことは,シーカヤッ
クでフィヨルドの海を突き進むことだった。俺が夢みていたの
は・・・・切り立つ崖,そびえ立つ山,泳ぐいるかとあざらし,そ
んな中を進む俺。ただし,シーカヤックは予約一杯で参加できず,
それなら,マウンテンバイクでフィヨルドまでいってやろうと
180kmの道を馬場と行く決心をした。この日の夜,俺達は明日へ
の期待と不安を抱え,弁当を作るなり,チャリの整備をするなり
してゆっくり過ごした。果たして,俺達は明日フィヨルドを拝め
るのか。満点の星空を眺めつつ,眠りにつく。
・3/10 テアナウ連泊。
180km,いくぜ。気合いを込めて,朝8時,キャンプ場を馬場とと
もに出発する。マナポウリ湖畔を走り,マナポウリにつく。ここ
からブラックマウントまで,逆風の中を走る走る。先頭を入れ代
わり立ち代わり,峠を一つ越えて,やっと分岐地点についた。因
にここの峠では,馬場をぶっちぎり,前回の峠の借りを返した。
しばらくダートを走ると,おや,ゲートがある。
『ATENTION CYCLIST』
なんだあ,この看板は?とにかくゲートを越え,ダートを登りは
じめる。すでに体はだるいのだが,フィヨルドを見るまでは,の
思いがペダルに力を込めさせる。お!,もうVIEW
POINTか。看板
を発見した。そこは,下りの登山道だったが,俺達はなにを勘違
いしたのか,勢いに任せて一気に下り降りた。恐かった。相変わ
らず,ミスター命知らず馬場太一郎はフルスピードでおりていっ
た。一番下った地点で俺達が見たものは,・・・・なんと,洞穴
だった。
おい!こんな穴を見るために苦労してきたんじゃねえ。
俺達は明らかに機嫌が悪いまま,ほとんど押して登山道を登り
きり,とりあえず,胃袋にガツンと食い物をぶち込んだ。
食事中,なんとも恐ろしい計画が俺達の頭の中で着々と進行し
ていた。
「帰り,ヒッチでええから,この先もっと進もうか?」
何気なくいったひと言に馬場は大いに気乗りし,俺達はまたま
たわはははとばかりに登りだした。この時,杉山のことはマッッ
タク頭になかったような気がする。それ程フィヨルドとは魅力
あるものなのだ。
うんしょうんしょ,必死で登る俺達に待っていたものは・・・
「バキッ!!」
なんだーなんだー。嫌な音とともに馬場の方を振り返ると,あ
あ!メカトラだああああああ。悔しがる馬場。泣くおれ。
そこで記念写真を一枚。敗れて帰ろうとすると,ぶううううと,
上の方からハイラックスサーフが降りてくる。いきなりヒッチ。
ゲット。分岐点まで行った俺達は,そこで再びヒッチ。つかまら
ん。何しろ三分間に一台程度の交通量しかない。三十分ほど頑
張ったろうか,向こうから,黄色いバンがやってきた。おお!!つ
かまえった。と思った俺達はまだまだ甘かった。それはなんと
個人タクシーみたいなもんで,キャンプ場までちゃっかり$20と
られてしまった。ちょっと待て!!メカトラした馬場はしょうが
ないがなんで俺まで乗って帰ってきたんだあ?怠慢こいてるんじ
ゃねえよ。
いろいろあったが,おもしれえポタリングだった。やべえ。な
んか馬場もかなりナンチャッテサイクリスト化してきたよ。
・3/11 テアナウ連泊
朝一番,馬場はヒッチをするためにキャンプ場を出発した。目
的地はミルフォードサウンド。そのあとすぐ俺と杉山はマナポ
ウリ湖に沿って歩くケプラートラックに向かった。天気はいま
いち。しかし,歩道はよく整備され,人はいなく静かで,光ごけ
(みたいなこけ)はきれいに光っていて快適なトランピングだっ
た。
5時間半にも及ぶトランピング,それは最高のひとときだった。
少なくとも,俺と杉山はそう思っていた。
キャンプ場に戻り,くつろいでいると,馬場も帰ってきた。馬
場いはく,
「スッゴイ晴れて,フィヨルドがきれいでしたよ。フィヨルド
から流れる滝の水で割ったウィスキーの水割りは最高でした
よ。」
そうだ!!!すっかり忘れていた。満足している場合じゃねえ。
俺はまだフィヨルドを見ていないんだった。ちくしょー。くや
しい。泳ぐイルカ,戯れるあざらし。いいねえ。ああああああ,
馬場がうらやましい。
でも,馬場はこの時,日本人の新婚さん夫婦の車に乗せてもら
ったらしい。きっとさんざん当てつけられて,モクモクしていた
に違いない。道理でこの日,馬場は一人用テントを選んだ訳だ。
・3/12 テアナウ→クイーンズタウン
起床朝5時。暗い。寒い。眠い。でも,朝7時のバスを逃したら,
いつ帰れるかわかったもんじゃない。なにしろ,この国のバスは
一日一本の路線がほとんど。あっても三本くらいか。とにかく
ドヒャドヒャばたばたとパッキングをすまし,いつものように前
輪を外すだけでバスの横っ腹にチャリを突っ込む。そして乗り
込んで寝る。これが俺達のバス移動日のスケジュールだ。そう
すると,おや不思議,気が付けばもうクイーンズタウンだ。
即行でテントを張り,そう,まだ朝の10時にもなっていなかっ
たが,この日は自由デイとなった。ただし,三時半には今日合流
するスーパーモンキーヘヴィ娘マリエールを迎えに行くため,空
港で待ち合わせという事だけ決めておいた。
杉山は洗濯にいそしみ,馬場はBBを修理するために街のチャ
リ屋さんに出かけていった。んで,俺はといえば・・なにを勘
違いしたか,MTBにまたがって,クイーンズタウンの丘とい
う目の前にそびえる小山を攻めていた。そんな気はなかったん
だ。でも,気が付けば,ダートをエッチラオッチラ登りきり,
頂上にいた。すーーーーーーーーーーーーーーーばらしく美し
かった。とにかく,シャッターを切る手が止まらなかった。
うっほ,うきー,やいやい,ててーん,びば!知ってる言葉
をどんなに並べても,あのワカティプ湖の美しさ,空の青さは
表現することができないよお。う・つ・く・し・い。満足その
後,待っていたものは・・
うっわわわわわわわわわわわわわわわわっわあわっわわ
すごいダウンヒルだなこりゃあ。ダート,急勾配,日影,そ
して,なんちゃってマウンテン・アヴァンティ。とにかく左手
の握力が無くなるほど激しい下りだった。もう,いかない。
マリエール,登場!!!!ほとんど滑走路といってよい出迎え者
用ベランダで,俺と杉山は精一杯手を振る。滑走路に降りたっ
たマリエールはそれに答える。木内が去ったこの空港で,やっ
ぱりあいつも滑走路を歩いて搭乗していたような気がするこの
すごい空港で,今度はマリエールがフロントバッグをもってや
ってきた。早速輪行解除し,キャンプ場に戻って飲み会に突入
する。キーウィワインがうまい。ペットボトル入のビールもこ
りゃまたうまい。マトンカレーもうまい。因に馬場はチャリが
復活せず,またまたヒッチで空港までやってきて,それからま
たまたまたヒッチでキャンプ場へ帰ってきた。露出の高いねえ
ちゃんに乗せてもらったらしい。くううう,うらやましい。ほ
んとに車に乗っただけなのかあ,馬場?
夜空には,どこまでも続く天の川がなみなみと流れていた。
あ,そうだ,明日も朝一番のバスに乗るんだっけ。俺達,今
まで何日チャリに乗って,何日バスに乗ってるんだろう。ちょ
っと数えてみるか。フル装のチャリに乗ったのが3日,バスに
乗ったのが3日。ナンチャッテサイクリスト,気合い入れてい
こうぜー!おう!
・3/13 クイーンズタウン→オタゴ半島Otago
Peninnsula
また朝からばたばたしてるなあ,こいつら。とにかくツアーに
参加するのが半年ぶりのマリーがばたばた。チャリが壊れてい
る馬場がばたばた。俺と杉山はなぜかばたばた。ばたばたばた
とバス乗り場に時間通りにやってきた我々だが,予想通りバスの
方は遅れてきた。またまた昨日に引き続き,前輪を外してチャリ
を乗せる。寝る。起きる。着く。太平洋に面したNZ最古の街,
ダニーデンは昼前から暑かった。あ,もうすでにウダウダしてる
ぞ。
馬場は今日もBBの修理に出かけるため,街へ消えていった。
残った三人は,久しぶりのフル装にヒイヒイ言いながらも,5km走
って大学に立ち寄る。ここは,NZ最古の大学であるが,我々の
目的は学食で飯を食うことだった。日本でもそうだが,大学と
いうものは非常に旅人にとって役に立つシロモノだ。夜はホテ
ルユニバーシティになり,昼は空腹を満たしてくれ,且つたま
には目の保養にもなる。ここの食堂で,俺はハンバーガーとフ
ィッシュアンドチップス,コーヒーをとって$6(420円)
だった。
腹が張れば眠くなる。芝生の上で寝転んだ後,ダニーデンに来
た目的の一つ,世界一急な坂をチャレンジしてみる。この坂の名
は,ボールドウィンの坂という。おい!!,ほんとに坂か?壁のまち
がいじゃないのか?インナーローで必死になって,傘末峠よりも
オロフレ峠よりも知床峠よりも気合いを入れたが,全然下の方で
力尽きた。さて,押しだが,重い。体全体で支えていないと間違
えなく,落ちてくんじゃないかと,冷や汗なのか,ほんとの汗なの
かよくわからん汗を垂らしながらたどりついた頂上,ここで信じ
られんことが起きた。
「恐くて降りれん。」・・・・心の叫びである。もちろん,舗
装されている道路を降りれないなんて,初めてだ。はるか下には
杉山とマリエールが「佐野さん,早くおりて下さいよ」ってかん
じで訴えてる。
えいやーっと降りる勇気はなくて,そのまままたまた押しで帰
ってきた。いや,押しというより,引きっていった方が的確だね,
ありゃ。
さてさて,念願・久しぶりのフル装サイクリングで,オタゴ半
島を走る。といっても20kmだけど。今日の目的は,オタゴ半島で
ペンギンを見る事なので,ついついペダルに力が入る。即行でテ
ントを設営し,荷物をおいて,ペンちゃんの待つビーチへ向かう。
ダートを走り,軽い峠を越え,我々三人はただただペンちゃんに
会いたい一心で,夕暮れ迫る半島で奮闘していた。もーもー牛が
なく牧草地も越えた。泣き砂のビーチも強行突破した。この地
点で,杉山とマリエールを置き去りにしてしまった。そう,それ
くらい俺の頭の中はペンギンのギンペーを見る事だけしかなか
ったんだ。岩場を恐る恐る注意して歩く。ペンギンのギンペー
はどこにいるんだ・・・・
「がうううう」
「うわあああああ,なんだ?なんだ?」
足下にいたのは,なんとあざらしだった。ぶひゅーぶひゅー彼
は俺を威嚇しながら,「ここは俺のテリトリーやもんねえ」とい
わんばかりにけつを向けて,しっぽをパタパタさせていた。
(おいおい,間違えて踏ん付けるところだったよ。)ギンペーは
いなかったが,随分面白い体験をさせてもらった。
日が暮れそうなので,キャンプ場に引き返そうとする。あ,俺
だけちょっとハッピーに浸っている。杉山,マリエールとも疲れ
だけが残ったって感じのペンちゃんツアーで,なんとなく,空気
が重苦しかった。そんな雰囲気を打ち破ったのが,馬場である。
チャリをチャリ屋に預けた馬場,そのチャリ屋で,代車をみつ
くろってもらい,ここまで追いかけてきたそうだが,道に迷った
らしい。その場場を助けてくれたのは,なんと馬に乗ったおねえ
ちゃん。馬場は,このキャンプ場まで,馬に先導されてやってき
たらしい。馬にまたがったおねえちゃんのけつを追いかけて走
る馬場の姿を想像すると,笑いがとまらん。笑わしてくれるねえ,
馬場太一郎。
マリエールの加入により,この日の晩飯は,男の料理に優雅さ
がプラスされた。キャンプ場でピラフを作るとはやるなあ。男
どものチャーハンとは違うところがさすが炊飯隊長だぜ。
・3/14 オタゴ半島→ダニーデン
ふぁあああああ,おはよう。久しぶりのゆっくりとしたモーニ
ングだ。朝起きた時すでに,太陽ははるか上の方に見られた。俺
達は優雅っぽい朝飯を胃袋の中にかきこみ,荷物をキャンプ場の
オバアチャンに預けて,それぞれの一日を過ごそうとしていた。
馬に先導されてキャンプ場にやってきた馬場は,朝一番で“あ
ほうどりの王様”を見るために半島の先端に向かった。日本語
ではあほうどりの王様であるが,英語でいえば,Royel
Arbatross
である。なんかかっこいいよね。ロイヤルアルバトロスでしょ。
因にこれを見た馬場は,まるでプテラノドンをみたかのように驚
いていた。
杉山&マリエールの二人は,朝からゆっくりしていた。二人と
も昨夜のピラフ作りに体力を使い過ぎたのだろうか。この最強
料理人コンビは,昨日ペンギンもあざらしもみれなかったせいか,
朝から手足がペンギン化しており,手がペンギンのように指をぴ
んと伸ばし,おしりあたりにつけてピヨピヨ言っていた。二人は
ピヨピヨチャリにまたがり,ピヨピヨペンギンツアーに参加し,
イエローアイドペンギン,愛称ホイホ(ホイホホイホって鳴くん
だって)を見てきたらしい。丁度ツアーのバスが帰ってきた時,
俺は二人と偶然出会い,目が黄色くなっており,手は相変わらず
ピヨピヨで,足取りまでよちよちしていて,しゃべる言葉はすべ
て「ほいほほいほ」と言っている姿に恐怖を感じたよ。
俺。なんちゃってたよ。MTBで必死こいてダートを走る。
走る。走るウウウウ。そこにいたものは・・・・なんと,あざら
しだった。なんでこんなところに・・。思いつつも,あざらしの
横にチャリを並べて,『丘の上のあざらし&チャリ』なんていう
ふざけた写真を撮ってみたりした。崖のしたにぺんぎんがい
る!!!と思っていってみると,どうもちがう。形は微妙に似てい
るんだが,小さいし,足が長い。NZのペンギンは随分違うなあ,
などと思っているうちに羽根を広げ,海の上を飛んでいった。驚
いた。こっちのペンギンは空を飛べるのか。おもわず,スピッツ
の『空も飛べるはず』を口ずさんだが,そんなはずはねえ。それ
はしゃぎ(鵜みたいな鳥)だった。そうそう,俺もホイホを見たん
だ。ツアーが終わった後,やっぱりホイホホイホって鳴いていた
っけ。杉山,マリエール,馬鹿にしてごめんなさい。でもね,ほん
とに‘浜を横切る姿’ってのは言葉に表せないくらいらぶりー
だったんだってば。
集合は,ダニーデンのインフォメーション前だった。ダニーデ
ンはNZ南島で二番目に大きな都市なんで,なんでもあった。今
日はここでキャンプだったんで,大手スーパーで買出しをする。
海外では,この買出しという仕事が最高に面白い。生活臭がぷん
ぷんする場所に身をおき,地元民に混じって,安物買いをし,ビー
ルをガツンをゲットする。スーパーで安売りされている食品は,
そこで需要の多いものがほとんどなので,それを買えば,そこで
の食生活をかいま見る事ができる。この国のスーパーで大きな
顔をしていたのは,“スープのもと”であった。常時三十〜四十
種類の素があり,俺達はどの日本人も買うように,いっぱい買っ
た。
因に,ここのスーパーでもっとも喜んでいたのはマリエールだ
った。彼女は主婦の血が騒ぐのか,目の色を変えて,自分の身長
の倍近くある棚と格闘していた。杉山はいつものようにウキ
イーとカートを片手にシリアルを選び,スープのもとを買い,サ
イドバッグを一杯にしていた。
この日は久しぶりにナンチャッテシェフ・佐野が登場し,うそ
くさ白身魚のナンチャッテソースがけをメインとするレシピー
でした。
・3/15 ダニーデン→カリタネKaritane
雨。雨。どしゃぶりの雨。ブルー。とにかくブルー。全員無
言のままブルー。いやいや,無言なのはわけがある。実は今日は
二度目の『NOVA'S DAY』なのだ。もちろん,日本語しか話せない。
今回は罰ゲームも設定されている。
OH〜,YEAH!! NOVA'S DAY, VIVA!! WAO!!
みんな,簡単な言葉しかしゃべれへんもんで,会話が続かない。
「TODAY IS RAIN.」「YES.」
ってかんじだ。ちなみに,午前中にもっとも日本語をしゃべった
のはワタクシ。馬場が雨の中テントをたたんでいるのを見て,手
伝ってあげようと思ったおれ。
「馬場,手伝おうか?」
馬場,実は結構困っていたくせに,顔を上げ,勝ち誇った顔で俺
にこう言った。
「What's say,Sano?」
佐野さん,なんていったんだい?それは英語じゃあないですよ
ねえ。こんなかんじか。くそお,親切心があだになってしまった
よ。にくらしい〜,むか!!
こんなやりとりがあったが,午前中はうだうだして過ごした。
雨の中,ぼちぼち行こうか,と思い出したのがすでに昼飯を食べ
た後。えいや〜。出発したけれども・・・
丘。丘。丘丘丘丘丘。加えて悪天候。もういやだ。っとおも
ったとき,小さな町に大きな看板を見つけた。
CAMP GROUND ⇒●KM
皆,一様に目を輝かせる。
おおおおお!!こんなところにキャンプ場が!!でもちょっ
と待てよ。何でキロ表示が塗りつぶされているんだ。期待と不
安が入り交じる我々。目の前の店『スーパーセブン』のおばち
ゃんに情報をゲットすべく聞いてみたらなんと・・
「Camping? oh,There,There!!」
「Where?」
キャンプ場?そこだよそこ。 どこだよ?
何と,キャンプ場は看板のすぐ下だった。でも,とてもじゃな
いが,それはキャンプ場には見えない。何とか俺は理解した。し
かし,これを皆に理解させるという大きな仕事が自分には残って
いた。今日は,すべてのコミュニケーションを英語でしなきゃな
のだ。
「Here is Camping.」
「What? Where? Why? Viva?」
納得してもらえない。何しろこのキャンプ場はまだ建設中で,キ
ッチンバストイレがある建物しかできてないのだから。もちろ
ん,利用者はゼロ。とにかくあの手この手を使って理解してもら
った。
テントを張ってみると,今までのどのキャンプ場よりも素敵だ
った。日本でもお目にかかれない。なにしろ,お湯の出るシャ
ワー付き,オーブン付きのキッチン付き,オーナーの好意でヒー
ター付き,冷蔵庫独占,ガスも独占,とにかく我々のプライベート
キャンプ場なんだからたまらない。ここぞとばかりに一品だし
を行い,くつろぎまくった。因に,ふだんの一品だしではお目に
かかれないものが登場した。な,なんと,マリエールスペシャ
ル・タピオカ&チョコレートプティングというまったりした,ず
っしり胃にたまる,デザートを作ったのだ。どれくらいキッチン
を占領したか,わかるよね,マリー。
カリタネ。カリタネの夜はゆっくり更けていく。
あ,そうだ杉山,ちょっと調味料カリタネ。おあとがよろしい
ようで。
・3/16 カリタネ→オアマルOamaru
晴。だれもいないキャンプ場で,とにかく会心の晴。こんな日
はゆっくり,そして優雅に朝食をとりたくなる。マリエールも杉
山も随分幸せそうだった。・・朝食終了時間,9時30分。
おお,いかんいかん。こんな天気がいい日は気合いいれて走ら
ねば・・・,といいながらも出発は11時をしっかり回っていた。
ああ佐野ラン・・・。
丘丘丘。ひつじひつじひつじ。気が付けば,ひつじの大群が隣
の農道を列をなして走っている。さすがだぜ。
一日のうち,もっとも楽しい時間の一つ,昼食。今日は,海辺で
たき火を起こして,なんでも焼焼の日。ただ,ちょっといきなり
だったんで,'95夏の奥尻島のような充実したたき火は無理だっ
た。たき火をすれば,たき火部長の出番になる。夏以来,すっか
りたき火の番人となった杉山が,早速たき火を集め,それを目に
も止まらぬ速さで組み上げ,俺の着火剤の出番をまだかまだかと
待っている。火の扱いに関しては部長の指示に我々は従うだけ
である。
昼食後も,エッチラオッチラ,登ってはおりを繰り返し,国道一
号線といいつつも,ほとんど車の通らない道をゆく。
おおおおおお!!なんだありゃ。先頭を走っている馬場が叫ぶ。
俺達の目に写ったのは,なんと,もみのき!(かな?)で作られた,デ
ッカイ鶏の形をつかさどったオブジェだった。
「おー!こりゃあ,すごい。」
皆声を揃える。ご丁寧に,その木のしたにはセメントで作られ
た卵のオブジェが!!しかも,そこは,卵屋さんだった。さすがNZ,
スケールがでかい。
オアマルのキャンプ場についた時,馬場が面白い情報をゲット
した。なんでも,今夜8時30分ぐらいから,野生のブルーペンギン
がかなりやすい金額で($4=約300円。)みれるかもしれないとい
う話をキャンプ場のおばちゃんから聞いたらしい。そうと聞い
たら,なにしろペンギン好きのマリエールのいるグループランだ
もん,速攻早めし,早風呂,早飲み,準備をして,マリエールなんて
目を輝かせながら,ペンギンのコロニーへ向かった。
待つこと約30分。暗くてほとんど見えない。アナウンスも,
「本日は,どうやら見えへんみたいやから,みんなとっとと帰っ
て,また明日おいで。今日のチケットで,明日も入場できるで
え。」なんていってやがる。俺達には今日しかないんだ。
おっ!!おっ!!おっ!!もう帰ろうかと思いきや,来た!来た!来
た!!!めっちゃくちゃラブリーな走りを我々に披露しながら,ペ
ンギンが海から帰ってきた。大喜びをする観衆を横目に,ペンギ
ンのギンペーは,つまづきながらも,走って巣に帰っていった。
ちょっとあの姿はラブリー過ぎるよ。
・・・帰り道,みんな手がペンギンになっていた。
・3/17 オアマル→ティマルTimaru
おお!!ゴージャス。朝から随分凝ったもん作ってるなあ,みん
な。腹いっぱいでもう満足だよ。
おかげさんで,もうすでに10時回っている。まっいいか。
ズンドコズンドコまっすぐな道をゆく。フラットで天気もよ
く,気分のいいサイクリングが続く。なにーもない。なにもない
んで,河原で昼飯にする。馬場は買出しに失敗し,ピークワンを
出してパスタを作っていた。俺は俺で,ガツンとエネルギーをチ
ャージする。さあ出発という時に,ぐるるるるるっと聞きなれん
音がおなかから・・・。
食べりゃ出る非常にわかりやすい単純明快的胃袋はどうやら
キャパシティを越えたらしい。3人に先に行くよう指示し,NZ
の河原に穴を掘る。この美しい大地に汚点を残す訳にはいかな
いので,しっかり埋めておいた。5年後に木が生えているかもだ。
午後は天気が悪い中を力走。とにかくちゃきちゃきと走り,キ
ャンプ場にチェックインし,力を込めた飯を作る。因に今日のレ
シピは・・マッシュルームごはん,マトンスープ,なすのあんか
け,サラダ,そしてタピオカデザート。シェフの杉山,マリエール
ありがとうね。今日も美味しい飯が食えました。
この日の夜,究極の作戦が計画された。その名は,『地獄の
170kmラン行くとこまで走ろう嫌になったらやめよう最後くらい
はしっかり走ろうプラン』だ。ティマルからクライストチャー
チまで,馬場,杉山,俺の3人は朝の7時にキャンプ場を出発する。
マリエールは10時頃のバスに乗り,クライストチャーチから30km
離れたブルンハムという町で待ち合わせをするというプランだ。
うまくいくのか。皆,心に何かを秘めながら,眠りにつく。
・3/18 ティマル→クライストチャーチ
170kmである。暗いうちからパッキングを済まし,夜明けとと
もに,マリエールを残して出発した。
馬場と俺で,先頭を代わる代わる交代しながら力走する。もう
すでに馬場のスピードにはかなうはずもないのだが,なんとなく
先輩の意地みたいなものがあって,老体にむちを打って頑張る。
後ろにいれば楽なのに,馬場のペースが落ちれば先頭を入れ代わ
り,
「どうだ!まだまだ俺も若いだろう。はあはあはあはあ」
と言わんばかりにとばす。でも直ぐ抜かれる。
追い風の影響もあって,80km離れたアシュブルトンAshbruton
には3時間でついた。この時点で俺達はかなり満足していたし,
絶対着くような気がしていた。ところが次第に風が強くなり,昼
飯を食うころから,強風横風に変わってしまった。どれくらい風
が強いかといえば,立ちションが,驚くほど飛ぶのだ。これは.俺
も馬場も実験したので間違えないデータだ。
とにかく横風が強くて,まともにまっすぐ走れない。橋の上な
んて,川から砂が風に乗って飛んできて,まともに目もあけれな
い状態になっていた。こんなんじゃ,着かないだろう。そう思い
始めたころ,再び追い風に変わった。この風が半端じゃない。
速い。速い。は・や・い。時速40kmで2時間近くを走ったのは
初めてだ。強烈な初体験だ。これだけハイスピードだと,テンシ
ョンもとにかくハイで,マリエールを拾った後もみんな機嫌がい
い。俺と馬場は途中でビールを一杯引っ掛けたほどだ。筋肉に
随分染み渡った。
満足にあふれながら,3週間ぶりにクライストチャーチのカセ
ドラルの前の広場で記念撮影をする我々。この170kmランが俺の
学生時代最後のランだと思うと,ちょっとセンチになってしまう。
いやいや,俺のケッタ人生はまだまだ始まったばかりか。
キャンプ場の近くにラグビー場を見つけた我々は,その入り口
で風を避け,打ち上げに入る。うまい。疲れているが,やっぱり
うまい。気が付けば,ビールが6リットル,ワインが一本,見事に
空になっていた。え?気が付いてない?そうだ,結局酔いつぶれて
その競技場で眠りについたんだっけ。最後まで,佐野ランは佐野
ランだよなあ。
ただ,走った満足感と,無事だった安心感と,おもろい仲間達の
お陰で,心地よい気持になっていたのは私です。
満足!!このひと言につきます。
3/19 クライストチャーチ
昨夜の飲みの残りか?だるい体をゆっくり動かし,晴天のもと
テント,寝袋らこのツアーでよく働いてくれた愛用の品々を干し
つつ,パッキング。
3週間,自分の足として働いてくれたチャリにも感謝しつつ,レ
ンタサイクリング屋へ行き,チャリを帰す。たった3週間でも随
分愛着が沸くものだ。チャリショップCYCLONE
CYCLEのおっちゃ
んもええひとで,俺達の無事を随分喜んでくれた。
写真を焼いた。値段は日本と同じくらい。ただ,サイズが違う。
皆,その写真を見ながら,一寸前の記憶を遡っていた。旅という
一連の行動の中で,もっとも楽しい時間の一つであると俺は思っ
ている。
夜は街に飲みに出かけた。一軒目はあまり雰囲気がよくなか
ったので,二軒目に行く。結構いいところだ。酒がうまい。
クライストチャーチの夜は早く,11時にはほとんどの店が閉ま
る。それでも,俺達は満足して安宿に帰った。
この日は,ほとんど眠らず,ゆっくりNZを思い出していた。
この旅も,とりあえず明日には終わる。
ただ,旅が終わる訳ではない。まだまだ,始まったばかりだ。
・3/20
まずは,マリエールが去っていた。
シンガポールのチャンギ空港では,3週間行動をともにした杉
山と馬場が去っていった。
俺が言いたいのは,ただ,心を込めた
「ありがとう」
だけです。
自分の中に,一生自慢できる宝物がまた一つできた。そして,
『一生つきあっていく友達』
がまた増えた。
そんでもって,固い友情と,雄大な自然と,感謝の心を教えてく
れたNZに心を込めて,ありがとうを言いたい。
3月22日 佐野裕之