ロイドとミトスは無言のまま睨み合っていた。
それは恒例の光景となっているので今更誰も二人に触れようとはしない。
他のメンバーは無関心にテーブルを囲んで、紅茶を片手にクッキーを頬張っていた。
とはいえ、アルテスタの家には暗雲が立ちこめていた。
まるで二人の間には雷が走っているかのようだ。
「久しぶりに僕のジーニアスが来てくれたと思ったら……余計なコブまで付いてきたんだね」
「コブ扱いすんなよ、ジーニアスの親友である俺を」
始まった……。
ジーニアスを始め、リフィルやコレット、しいな、ゼロス、プレセア、リーガル、アルテスタはため息をついた。
ミトスをアルテスタの家に預けてから、何かしらと足を運んでいるのだが、ロイドとミトスの争いが起こらないときはない。
最初こそ、遠慮もあってか直接けんか腰になって向かい合うこともなかった。
そのかわり、ジーニアスの横に張り付いたり、話をしているのを邪魔したり、とあからさまに相手がジーニアスといるのを邪魔していた。
先ほどの会話からも分かるとおり、二人はジーニアスを取り合っているのだ。
「俺なんか昔からジーニアスの親友なんだぜっ」
「あれ、時間なんて関係ないんじゃない?僕だってジーニアスの親友だよ」
「俺の方がずっと長いんだ、お前なんかに負けるもんか」
「ふぅ、負け犬の遠吠えって惨めだよね」
「誰が負け犬だっ」
「あ、犬じゃなくって猿だっけ?」
「問題はそこじゃねーっっ」
アルテスタは諦めたような表情でクッキーを囓る。
手みやげとして渡されたこの手作りクッキーは絶品だった。
「うまい」
「あ、本当?紅茶の葉を入れてみたんだ。甘いのあんまり好きじゃなかったみたいだから」
「よく見てるの。儂は辛党なんだが、これはうまい」
「良かった」
「ジーニアスのクッキーは世界一なんですよ」
「コレット、世界一は言い過ぎだよ」
「謙遜しなくたって良いのに〜」
世界一と称される大量のクッキーは、七人もいればあっという間になくなってしまう。
当然、言い争いを続けている二人の分を取っておこうなんて気はない。
騒音に悩まされているのだ、それくらい当然と思って欲しい。
しかし、当人達にとってはそうではなかった。
「あーっっ、みんなして何全部食ってんだ!?」
「どこかで誰かのせいでジーニアスのお手製クッキー、食べ損ねた……」
「何だよ、俺が悪いってのか!?違うだろ、ミトスが悪いんだろっ」
どちらのせいでクッキーが食べられなかったか、の水掛け合い。
いい加減飽きない物か。
クッキーを平らげたメンバーは怒鳴る声に嘆息する。
「二人とも、落ち着いて……。食べかけで良かったらこれあげるよ。僕たくさん食べたし、ちょっと囓っただけだから」
ジーニアスがそうクッキーを差し出した途端、静まりかえる。
食べかけのクッキー。
言い争っていた二人の視線はそこに注がれたまま動かない。
「がきんちょ〜、ちょーっとそれはまずいんでない?」
「油に水を入れるようなもんだよ」
「へ?」
ゼロスとしいなの呆れた忠告はすでに遅かった。
「ありがとうっ、ジーニアス!僕が美味しくいただくね!」
「ちょ、待てよ!俺がもらうっ!」
「わからないの?これはお土産だよ、僕が食べて然るべき物じゃない」
「そんなん関係あるか!ジーニアス(の間接キス)は渡さないっ」
「譲らないよ!」
ギリギリと睨み合いが再び始まった。
「いつの間に僕の話になったわけ?」
「最初からそうだったわよ」
騒音はまだまだ止みそうにない。
「……もういいよ。ゼロス、食べる?」
「もらう♪」
クッキーはゼロスの口に入っていったとさ。