「蘭、もしかしてその格好で出歩くつもりなのか?」
「?何か問題でもあるか?」
 いつも通りの白ずくめの服。
 その格好で玄関に立つ蘭を引き留めたのは響だった。
「べ、別に変じゃないけど、普通の服は持ってないのか?」
 ワテワテと言い訳するように言いつくろっている。
 『普通の服』と言われ、蘭は首を傾げる。
「これしか持っていないが」
 と、言ってみてから少し間をおいて、
「ああ、『制服』なら持っているな」
 だからといって今日は休日。制服は可笑しかろう。
「……今から何処に行くんだ?」
「散歩、だが」
「よし。服を買いに行こう」
「…………人の話を聞いていたか?」
 散歩に行くと言っているのに。
 そう言う蘭の腕を引っ張り玄関まで連れて行く。
「だから散歩がてらに服を買おう、って言うの。
 嫌か?」
 その問いにしばらく沈黙していたが、
「別にかまわないが」
 と承諾した。
  

  

 日曜の公園は人が多い。
 それは当然である。
 響はこの無駄に白く派手な蘭を行かせる前にどうにか服を買おうともくろんでいた。
 が、蘭相手に早々簡単にことが運ぶわけもない。
「どこへ行く?」
 いつもの蘭の散歩コースを大きく外れて行こうとする響を蘭は呼び止めた。
「いつもこちらを通っている」
「………………先に服を買いに行かないか?」
 ニッコリ人当たりの良い、と称される笑顔で蘭に提案を持ちかけてみる。
 それが無駄なことだろうと知りつつも。
「行きたいなら一人で行け。ついてきたのはおまえだ。なぜ俺が道を変えなければいけない」
 ほら、やっぱり。
 予想通りの答えを頂いた響はサッサッと歩く蘭の後を追ったのだった。
 この公園は散歩にとても向いている。
 静かであり、木々が植えられ、季節折々の花が咲いている。
 実によい場所である。
 休日である今日、家族連れやカップルが多いこと多いこと。
 その半数以上が目立つ格好をしている蘭に向けられる。いや、格好のせいじゃなく彼の顔立ちのせいだろう。
 まだ普通の格好だったら目立たなかったかも知れないのに……。
 後ろをついていく響はそっとため息をつく。
 ただでさえ目立つ顔なのに、全身真っ白ではますます注目を集めるだけではないか。
「蘭、いつもはここをどのぐらい歩いてるんだ?」
 後ろから横へと移った響は尋ねてみる、が失敗したことに気付いた。
 蘭は時計を持っていないのだ。
「時計も買おうか」
 蘭が答える前に自己完結をした響はサイフの中身を心配し始めた。
  ――――とりあえず服を買うだけの金しか持ってきてないんだがなぁ。時計まで買えるかね?
 響の心配をよそにやはり歩いている。
 マイペースな蘭に呆れたようなため息をつき、それでも響はこの時間を楽しむことにした。
 どうせどんな格好をしていたって注目は集めるだろう。
 開き直ることにした。
「いやぁ、今日は良い天気だなぁ」
 たしかに良い天気である。
 ポカポカとした日差しの中のんびり歩く。
 平和なその時間を楽しむことにしたのだ。
 が。
「泥棒よーっっ!!ど・ろ・ぼ・うっっ!!」
 そんな叫び声が響き渡った。
 響は蘭を見、頷く。
 蘭も頷き返した。
 遠くからバックを持って走ってくる人物、おそらく泥棒だろうと思われるそいつに向かって駆け出した。
 蘭には一般の人の前で「  」を使わないように、と言ってあり、彼自身もそれを念頭においていた。
 「  」を使わずとも早く走れる二人はこちらに走ってくるその人物に立ちふさがることが出きる。
 しかし、実際前を塞いだのは響だけで、響に驚いた泥棒と思われる人物は速度を落とした。
 それを予測した蘭がすれ違いざまに捕まえる。
 腕をねじり、動けなくさせ、盗ったものだと思われるバックを手から落とさせた。
 その華麗な流れる動作に周囲から拍手が起こった。
「蘭、さすがだな」
 響も賞賛の意を示す。
 蘭は何も言わず、バックを取れと目で訴える。
「とりあえず誰か110番してくれませんか?」
「あたしがするわ」
 と現れたのは、なんと凛だった。
「五十嵐さーん」
 後ろから拓まで駆けてくる。
「二人とも、買い物に行ってたのか?」
「そ。楽しんでたのにこの人が……」
「五十嵐さんのバックをひったくって行っちゃって……」
 突然の予想だにしなかったことで反応が遅れ、追いつけなかったらしい。
「ま、警察に引き渡しましょ」
 未だに犯人を捕まえたままの蘭を手招く。
 結局今日服を買うのは無理そうだ。

  

  

    数日後
「蘭、服どうにかしなさいよ!!」
「変か?」
「変!!」
「他の服はもっていない」
「んじゃ、響の服を借りればいいじゃない!!」
「あ」