「…………」
 蘭の手から渡された物と彼の顔を見比べて、思わずなにも言えなくなった。
「なんだ、これ??」
 そして問う。
 それは何とも可愛らしいラッピングのされた、小さな箱。
「なに、とは?」
「イヤ、だからこれは何なのか、って聞きたいんだけど」
 確かさっきまで蘭は(珍しく)凛達と買い物に行っていた。
 その証拠に、彼の手には紙袋が一つある。
 紙袋の中から出されたのが、今響の手の中にある物だ。
「今日はそう言う日なのだろう?」
 憮然と言ってのける蘭の様子に、響は不思議がる。
  ――――今日、は俺の誕生日、でもないよなぁ
 もっとも、響の誕生日であったとしても、あの蘭から何か贈り物をもらえるとは思えない。
 謎だ。
 とりあえず、カレンダーを見やる。
「…………………………」
 ますます響はおかしな顔をして見せた。
 今日は……
「バレンタインデー?」
 2月14日。
 と、言うことは……
「チョコ?」
 箱を指さし尋ねると、当然だろう、と言うように頷いた。
「……ありがとう」
 何か勘違いをしているんじゃないか?と思いながらも、この思いがけないことに嬉しさを覚えながら、
「コーヒー入れるな♪」
 と響はキッチンへ向かった。
 当然、2人で食べるつもりで、だ。
  ――――やっぱ、あまいものにはブラックだな。
 と、コーヒーを豆から煎れ始めた。


 箱を開けた響は再び絶句した。
 箱の中には大きなハート形の黒いチョコレート。
 甘い香りが実に美味しそうだ。
 だが、注目すべき点はそこではない。
 『義理』
 でかでかとチョコレートの黒い部分を埋め尽くさんばかりにホワイトチョコレートが乗っていた。
「らん……?」
「何だ?」
「『バレンタインデー』について知ってること、言ってみ?」
 響の煎れたコーヒーを一口のみ、蘭は「世話になった者にチョコレートを渡す日なのだろう?変な習慣もあるものだな」と言った。
  ――――違う、違うよ、蘭……。
 間違った認識にため息をつき、響はチョコレートを2つに割りわけた。