夜も更け、同居人の面々も今頃夢の中だろう。
草木も眠る丑満時。
響はベット横にあるスタンドのみを付け、単語帳をめくっていた。
椅子に座った体制がいい加減辛くなったのだろうか。リラックスした様子で書き記された綴りを眺めている。ふとそれから目を離し時計に見やると、
「あー、もうこんな時間か」
今がどれだけ遅い時間か気づいたらしい。
そろそろ寝るか、とスタンドに手をのばしかけそれをとどめる。水を一杯飲んでからにしようと部屋をあとにした。
暗いキッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、そのまま一口飲む。実は喉が乾いていたらしい。そのまま半分ほど飲み干して冷蔵庫にしまう。
目的を達したことだし部屋に戻ろうと視線を上げた先に、白い影が。
「うわぁって、なんだ、蘭か。驚かすなよ」
「そっちが勝手に驚いたんだろう。それに、気配を隠した覚えもない」
確かに、別段゛音゛を隠している様子もない。
疲れたのかもな。
「早く寝ろ。どうせろくに寝ていないんだろう?」
ずばり的中。
夜は遅くまで勉強、朝は朝食を作るために早起き。そんな生活は睡眠時間は最近四時間をきらせた。
ジッと蘭に見られて気まずくなった響は視線をそらす。
沈黙の圧力は、強い。
蘭からかけられるプレッシャーでつくづくそう思い知った響。
「分かった、寝る」
響は半端脅された形でフラフラと部屋へ戻ろうと踵を返した。
う〜ん、眠くはないんだけどなぁ
変に夜更かしの習慣をつけてしまったものだから眠くはならないようだ。それで疲労はたまるから損をしている気分になる。
そんな考えを読みとったのか、蘭が後ろから着いてくる。
「?」
「眠れないんだろう?」
どこまでも自分を理解しているらしい蘭に響は目を見開いて、
「そうだけど……、ハハッ」
「どうした?」
笑った響を不信気に見やりつつも、部屋までついて行く。
そして、
「入れ」
「入れって、おまえねぇ」
響のベットを指さし命令をした。
「ベットに入って目を瞑っていれば寝られる」
とのこと。
蘭はそんな響を無理矢理ベットに押し込めて、椅子に陣取った。
「…………」
「……見られてると寝にくいんだけどね」
「そうか」
「いや、だから……」
「寝られないんだろ?」
「うん、まぁ」
「………………」
「………………」
薄暗い部屋で、蘭が溜息をついたのが分かった。
カチッと言う軽い音と共に電気がついた。
蘭がつけたのだ。
どうしたんだろう?と響が蘭の方を見やると、蘭は一冊の本を持っていた。
「読んでやるから、寝ろ」
響はその言葉に一瞬目を見開き、微笑を浮かべた。
「何だ?」
「何だか子供みたいだな、って」
「嫌なら止めるが?」
「いいや、読んで欲しいな」
響の言葉に蘭は本を開いた。
本当に子供に返ったみたいだ。
響はほくそ笑むと、布団を引き寄せた。
流れてくるだろう声を予測して。
良く、眠れそうだ。
「あれ?響は?」
「まだ寝ている」
「めずらしいね、響が起きないなんて」
「昨夜、特別に遅かったみたいだからな」
「………何で?」
「さぁ、どうなんだどうな。
ただ寝られないと言うから本を読んでやったんだが、そのせいらしい」
「いったいなによんだの?」
「化学とやらの参考書だ」
「そりゃぁ、受験生の響には寝れない内容だわ」
「受験生とやらだからこそ、だったんだがな」
そうして響はうなされていましたとさ。