動物愛護週間 (精霊×クラース)


「今日まで、人間たちが決めた動物愛護週間というやつだったらしい」
 そんなことを厳かな声で言われても、どうしろというのか。
 突然言い出した精霊王に、精霊たちは何の言葉も返せずにいた。
「『動物愛護週間』とはどんな事をするんですか?」
 シルフのもっともな問いにウンディーネ、イフリート、ノーム……以下クラースと契約を結んだ精霊たちが頷く。
 突然の招集の元、契約を結んだクラースではなくオリジンがこんな話しをするのだ。
 疑問が募るのも当然であろう。
 クラースからの呼び出しかと思って訪れてみれば、オリジンがドンと構えていたのがそもそも不思議なのだ。
 ちなみに、クラースはベッドに腰掛けてこれから何が始まるのかと目を丸くしていた。
「動物を可愛がろうという日だろう。
 『動物愛護』動物を人間と同一視しようとする理念に基づき、動物を大切にし、愛そうとする精神。
 とこの本に書いてあった」
 と、辞書を指し示す。
「つまり、なにをなさりたいのですか?」
「愛する精神が精霊にも有るという事を主に示すに良い機会だと思ってな」
 オリジンがちらりとクラースを見やる。
 それにつられて他の精霊たちの視線も移動した。
 ここで言われる「主」とは当然契約主のクラースの事である。
 精霊たちの談義が突然自分に向いた事にようやく気づいたクラースは、9対の視線にたじろぐ事となった。
「な、なんだ。皆してこっちを見て……」
「精霊にも感情があるのは承知しているな?」
「あ、ああ」
「一つの事に固執せず、世界を支える存在である精霊にも、実のところ執着はある」
「そうか」
「今、我々は幸か不幸か、同じ者に執着していてな。
 その感情は執着・贔屓を飲み込んで愛と言うものに変化している」
 オリジンのとつとつとした物言いにクラースは興味をそそられるどころか、嫌な予感をひしひしと感じていた。
「我々が愛している者が何か、分かるか?」
「…………」
 この会話の流れと視線から分からなかったらたいそう鈍感な神経の持ち主だろう。
 クラースはそんな神経を持ち合わせていなかった。
 だが、答えを平然と言ってのけるほどオープンな性格でもなかった。
 それを理解している精霊たちは返答を待たずに話を続けた。
「主よ、あなただ」
「私たちからの愛、受け取って下さいますか?」
 いったいどんな愛なのだろう、と思いながらも、真剣な表情の精霊たちに気圧され、Noとは言えなかった。
 小さくクラースが頷いたのを見て、精霊たちは母に甘える子の様に、愛玩動物を可愛がる目上の者のように、孫に対する祖父のように、思う存分スキンシップを図っていったとか。




「……動物は触りすぎると弱るんだぞ…………」
 だからスキンシップは控えてくれ。
 時折呟かれる抗議の言葉は
「小動物だったらだろう?大丈夫だ、主はそんなに脆弱ではない」
 とぺたぺた触りまくっている精霊王によって却下に至るのだった……。





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ブログ掲載SSでした。
一体これの何処が動物愛護週間なのだろうか……。