変貌 (セネモゼ&ジェイモゼ)
「…………何処の化け物ですか」
「なんじゃと!」
ジェイのつぶやきにモーゼスらしき人物が反論している。
本当に、何処の化け物なんだか……。
横で見ていたセネルはため息をついた。
二人から化け物と称されているモーゼスは、まるで子供が化粧で悪戯をしたような顔になっていた。
もしくはオカマの厚化粧。
方法が悪いのか、素材が悪いのか……。何とも言えない。
「お前たち、一体何してるんだ?」
「勝負しとるんじゃ!」
「何の」
「どれだけ女性の事を分かっているか、ですよ」
「……どうしてそれがこんな喜劇に?」
ジェイとモーゼスは己の顔に化粧を施し服こそいつも通りだったけれども女装をしていた。
「女性がする事を上手くできた方が女性の事を分かっている事だろうと提案したんです」
お前が提案者か。
セネルはジェイに冷たい目線を送った。が、ジェイにはきかなかった。
「ワイの方が分かってるにきまっちょる!」
と、オカマ顔のモーゼス。
「僕は情報屋ですよ?山賊に引けを取るわけがないでしょう」
と、美少女ジェイ。
勝敗は明らかだった。
「モーゼス、お前の完璧な負けだ。早く顔を洗ってこい」
セネルによる判定は正当な物だ。誰の目にも明らかなのだ、どちらの女装が堂に入っているかなんて誰に聞いても答えはジェイだろう。
「なんじゃなんじゃ、セの字はワイよりジェー坊を選ぶんじゃな!」
モーゼスはそう言い捨てて走り去っていく。おそらく顔を洗いに行ったのだろう。
それで騒動は終わりかと思いきや、他意のない言葉は残された二人にとってとんでもない爆弾だった。
「セネルさん?」
「…………なんだ?」
「いつからモーゼスさんに選ばれるような立場に至ったんですか?」
「俺がジェイを選んで、モーゼスが嫉妬するようになった……ついさっきからかな」
モーゼスの捨てぜりふはまるで、自分以外を恋人が贔屓したから嫉妬している、というような反応に見えたのだ。
もちろん、それは違う。
ただモーゼスは勝負に負けたと言われたのが悔しかっただけなのだろう。
しかし、恋は盲目。
ちょっとした言葉にも過敏に反応してしまう物なのだ。
「じゃぁ俺はフォローに行ってくる」
「フォロー?」
「ああ。女装が似合わなくても良い。むしろ似合わないお前が好きなんだと言ってくる」
「それは告白でしょう。行かせるとお思いですか?」
うっすら化粧を施した美少女と見間違えられそうなジェイは黒い笑顔を浮かべて、くないをかまえる。
それにセネルも含み笑いを返して駆けだした。
化粧を落としたモーゼスが勢いよく駆けてくるセネルとジェイに
「俺はそのままのお前が好きなんだっ!」
「女性を知らなくても僕が男を教えてあげますよっ!」
爆弾発言をかまされていたのだった。
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ブログ掲載SSでした。