世界移動

 ミトスに身体を乗っ取られている間、ロイドとの戦いに敗れたクラトスはダイクさんの家で身体を休めていた。
「クラトスさん、何か食べたいものない?」
 ロイド達のおかげであの建物から脱出できた僕が一番気になったのがこのクールな人。
 包帯が巻かれている身体、希薄なマナ。
 体調は明らかに悪そうなので、少しでも栄養のある物を食べさせてあげたかった。
 そう言う僕に、クラトスさんは静かに笑って
「ありがとう。ジーニアスの作ってくれる物なら何でも」
 と嬉しい事を言ってくれた。
 では、期待されてる事だし腕をふるいますか!
「食べる気になってくれて良かったよな、本当」
 ロイドがニコニコと嬉しそうに笑っている。
 そんな事を言うってことは、やっぱり前まで食欲なんて無いほどの重傷だったのだろう。
 実の父親とわかって、しかも戦わなくっちゃいけなかったんだから、クラトスさんが回復しているのを見るのは、ロイドにとっても喜びなのだろう。
 栄養たっぷりで、食べやすい物を作らなくっちゃ!
 と、意気込んでいると、ロイドの朗らかな声が続いた。
「あの時のクラトスってば見てられなかったよなぁ。
 あの酔いっぷり!!」
 ……………酔?
「ろっ、ロイドッ。それは秘密にしておいてあげようって言ってたじゃないっ」
「そうだぜ〜、まっさか天使様が空飛ぶ乗り物にめっぽう弱くって醜態をさらすなんて、がきんちょに知られたら振られちまうかもしんないって言ってたろ〜?」
 ゼロスのその説明口調は何だろう。
 妙にニヤニヤしているのも気に掛かる。
 僕がクラトスさんを振る?
「何で船やタライが平気だって言うのにレアバードだとああなのかねぇ」
「気の毒ではあったけど……ちょっとした見物のようになっていたわね」
 しいなと姉さんふたりしてフォローに回ろうとしない。
 なにかしらフォローをするメンバー達、今回ばかりは…、と言うように呆れて笑っている。
 クラトスさん自身も恥じ入って何も言えないようだった。
「えっ、何?僕のいないときに何があったって言うの?」
「ジーニアス、人には隠しておきたい事の一つや二つ有るものなんだ」
「ってロイドッ!お前が率先してばらしたんだろうにっ!」
「そうだっけ?」
 つまり、クラトスさんがとんでもなく空飛ぶ乗り物に弱いって事だろうか。
「格好良いクールなイメージもあれを見たらいっぺんに吹き飛ぶぜ〜」
 乗り換えるなら俺様なんてお勧めよ♪
 とゼロスがにじり寄ってくる。
 つまり、みっともない姿がレアバードに乗る事によって晒されたというのか。
 でも……
「何言ってるの、格好良いからクラトスさんを好きになったんじゃないよ。
 もちろん、格好良いけど、好きになった理由はそれだけじゃないんだからね!」
 だから乗り物に弱いくらいで嫌いになるわけがない。
 そうみんなの前で言い終わると、とたん顔が恥ずかしさによって熱くなっていく。
「ジーニアス……!」
「クラトスさん、僕、クラトスさんの事が好きなんだからね。
 弱いところも含めて」
 そう改めて告白をしたのだけれど、なぜだかクラトスさんは傷ついた表情をした。
 な……何か変な事を言っただろうか?
「ロイドに負けたのがいけなかったんだろうか……それとも……」
 ブツブツと呟いているクラトスさん。
 横で大笑いしているロイドとゼロス。
 僕はその落ち込みようをどうすればいいのか分からなく、あたふたするだけだった。
 
 ……変な事言ったかなぁ?