俺とフレンは色々な物で勝負してきた。
大抵は俺が対抗意識を燃やして勝負を挑んでいたのだが、見かけによらず負けず嫌いなフレンは全力で応え、そして今のような俺の負け続きの状況ができている。
悔しいと言えば悔しい。
しかし、それはフレンが努力した結果でもある。
俺がした物よりフレンの物が今回勝っていただけの話し。
永遠にこんな状況が続くだなんて思っていない。
俺だって力を尽くす。己を磨き、目の前を走る彼と並んで歩くため。
次は勝つからな、と宣言すれば朗らかな笑顔で、待ってる、等と宣う幼なじみ。
その穏やかさは高みからの慢心ではなく、隣に立っている者としての期待からくるものだ。
そんな期待を受けているからこそ、フレンに勝つことを望んでいた。
「勝てると、ずっと思ってたんだ」
「ユーリ……」
己の非力を嘆く。
どうして、力がないのだろう。地面を苛立ちのまま殴る。土は削れ、手を泥で汚す。
フレンはすぐ側で立ち俺を見下ろしている。
嘆息をつく俺へ向けるその視線は痛々しげに細められていた。
そんな君の姿は見たくない、そう如実に語る瞳は悲しげだ。
ああ、俺はフレンの期待を裏切ってしまった。
その事実に、ギリッと歯を食いしばる。
「見るな……」
低く呟く。
そんな目で見られるくらいならお前は負けたんだ、と嘲笑ってくれる方がずっと楽だ。
しかし、フレンがそんなことをする訳がなかった。
「ユーリ、そんな事を言わないでくれ」
心配してるんだ、と手を伸ばされる。
「惨めになるから、見るなって言ってるんだっ!」
その手を叩き落とす。
「ユーリ……ッ!いい加減にしないか!
こんな事勝負でも何でもないだろう!」
さすがに怒り始めたらしい。フレンは手に持った紙を示して怒鳴る。
「よしてくれ……。俺は、剣でも、勉学でも、運ですらお前に負けたんだ……」
ぐしゃりと握りつぶす、ペライ紙。
そこにはおどろおどろしい『凶』と言う文字が描かれていた。
「こんなの遊びだろ!」
「遊びでも勝てなかったのか……俺」
フレンの大吉の文字を恨めしく睨む。
こんな、些細なことでも俺がフレンを抜くことができないなんて……。
「交換でもするかい?」
「余計惨めだ……」
鬱々と呟く俺にフレンは溜息を落とす。
「ねぇ、ユーリ。
そんなに君は悪運な訳でもないだろう?」
「無茶な罪状で投獄されたりするけどな」
「う……。
でも、全部大したことなく出てこられるじゃないか!」
「んでまた厄介ごとに巻き込まれて元の木阿弥」
「ううう……」
フォローしようとしたのだろうが逆に言いくるめられたフレンは眉尻を下げてしまう。
深く溜息を吐いてみせる。
「…………そうだ!
ねぇ、僕の大吉と、ユーリの凶を足して割ったら良くなるんじゃないかな?」
「………………………は?」
なにか、不思議なことを言い出したフレンに視線を向けるとキラキラと輝いた顔で解決方法を見つけたと喜んでいた。
「足して割る、なんてどうやるってんだ」
リンゴやみかんじゃないんだ。
運なんて足し算できる訳無いだろう。
「だから、一緒にいれば良いんだよ」
僕の運を分けてあげる。
うっとりするよな笑顔で言うフレンに、見惚れてしまった俺は頷いたのだった。
何も本気でショックを受けていた訳ではない。
もちろん、おみくじだなんてただのお遊び。
縁起担ぎに引いてみたものの、内容は眉唾物だった。
しかし、フレンとの間についた落差。
少しからかう意味を込めて、あんな芝居を打って落ち込んで見せたのに、なんでそんな笑うんだ。
ああ、やっぱり俺はフレンに勝てないのかもしれない。
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08年冬コミ時のおまけでした。