モーゼスが戦闘で負傷してしまった。
どうやら歩くことが出来ないようで、座ったまま動かない。
その隣ではセネルとジェイが何やら言い争っているが、ろくでもないことであろうから、放っておこう。
「大丈夫か?」
「足が動きそうにないんじゃ。爪術でパパッと治せんか?」
すまなそうに、だが期待に満ちた目線を受けるが残念なことに、
「すまん、まだTPが足りないんだ。もう少し待ってくれれば何とかなるが」
俺は期待に添えなかった。
戦闘でTPを使いすぎていたのだ。
「そりゃぁ……まいったのぅ。ここで止まってるわけにもいかんじゃろ?かといって……」
言葉を一時切って言い争っている二人をチラリと横目で見やる。
「あいつらにおぶわれるのも癪じゃ……」
セネルとジェイの言い争いの内容をよくよく聞き取れば、「自分がモーゼスをおんぶする」と主張しあっているようだ。
普段からモーゼスとより親密になろうと牽制しあっている二人のことだ、ここでポイントアップを狙っているのだろう。
しかし、いくら鈍感なモーゼスでもこの言い争いに嫌気がさしているようで、少しでも遠ざかろうとしている。
「なによりも二人してワイより背が低いからのぅ。いくら力が強かろうとメンツに関わる……」
と思いきや、ただの見栄だったようだ。
それでも真剣に悩んでいる姿がなんというか、モーゼスらしい。
「じゃぁ、俺が背負うか?」
俺の提案にちょっと考えたようだ。
「……そうじゃな、ウィの字だったら体格も同じくらいじゃから問題ないか」
結論はすぐに出た。
気の変わらないうちに、とモーゼスを背負う。
身長はそうも変わらない男だというのに、槍を振り回して戦う山賊の頭だというのに、妙に軽く感じる。
「お前、ちゃんと食べてるか?」
「なんじゃ!?ウィの字もそがぁなこと言うんか!?」
「も、と言うことは他にも言われたことがあるって事か……。もっと食べることだな」
「よけいなお世話じゃ!」
「……なんならこのまま落としても良いが」
「すまんっ、ワイが悪かった!」
謝りながら必死にしがみついてくるモーゼスの行動は、まるで子どものようで思わず笑ってしまった。
「笑うな!」
すこし陽気なあの日のことだった。
「ちょっと、セネルさん!言い争ってる場合ではありませんよ!」
「なにがだ、ってウィル!横からかっさらって行くな!」
「……お前達、もっと早く行動することだな」