「えーっと、質問しても良いかな、ジーニアスさん?」
「だめ」
即座の拒否に肩を落とす。
「ちょっとそりゃないでしょーよー」
「だめったらだめ。ほら、動かないで」
ゼロスは憮然としながらジーニアスの言葉に従い前を見たまま動かないよう心がけた。
が。
「いっ、いてててて」
先ほどからひっきりなしに引っ張り回されてる髪がまたしても痛みを訴えた。
一体何がしたいというのだろう。
ずっとゼロスの後ろについて髪をいじっている。
まぁ、いじっている、という優しい言い方が躊躇われるほどあちこちへ引っ張っているのだが。
「おいおい、いい加減にしてくれよ。一体何がしたいってんだ?」
「あーっ、動くからまたできなかったじゃん、三つ編みっ」
……今までのハゲを作らんばかりの行為は、三つ編みをしていたのですか。
……マジで?嫌がらせでなく?
少し信じられなく、ゼロスは自分の頭を撫でた。
「なんで器用なくせにこんなに三つ編みごときで手間取るかねぇ」
「うっさいな、僕らの髪見れば分かるだろ」
明らかに不機嫌になったジーニアスは自身と姉の髪を示す。
「銀髪がどうかしたか?」
「違う。長さだよ」
「…はーん」
言われてみれば、二人とも短く切っている。
せっかく綺麗な髪なのだから伸ばせばいいのに、と幾度となく思ったことを思い出す。
だが。
「それがどうかしたか?」
ゼロスの三度の問いにジーニアスはため息をついた。
「鈍感っ。ロイド並みの鈍感さだよっ」
「ちょっ、それは言い過ぎなんでない?いくらなんでもあそこまでじゃないでしょーよ」
「会話の流れから分からないならロイドと一緒。
僕たちが髪が短いのは二人してうまく結べないからなの」
憤然と言うジーニアスの理由に、ゼロスは一瞬あっけにとられる。
「何、髪伸ばさないのは『結べないから』なわけ?」
何という間抜けかつ、もったいない理由。
たったそれだけでこの髪を切っていたというのか。
「そうだよ。
だいたい、結ぶのなんて面倒くさいだけなんだから切っちゃえばいいのに」
おや、と呆れてる中ゼロスはある点に気づく。
「面倒くさい、のに俺様の髪は結んでくれようとしたんだ?何で?」
「そ、れは……」
「俺様のだから、なんだよなー。
んー、俺ってば幸せ者ーっっ」
「ばっ、アホ神子っ、勝手に自惚れてればっ!」
自惚れじゃない、とゼロスは確信していた。
その証拠に、背を向けたジーニアスの耳の赤さ。
自然と笑みも深くなる。
ゼロスは後ろから抱きついて、かねがね思っていたことを口にした。
「なぁ、髪伸ばせよ」
ジーニアスは顔色を戻し、怪訝そうに抱きついてきたゼロスを見やる。
「話聞いてた?さっきも言ったけど、僕は結べないんだって」
「俺様がずっと結んでやるからよ」
なんなら今からおそろいで三つ編みでもするか?
と、笑いながら言われた言葉に、またしてもジーニアスは赤面する。その言葉は、遠回しのプロポーズ?
それ以降、ジーニアスは髪を伸ばし始めたとか。