随分と成長したつもりだったが、久しぶりに出会った年上の親友は10センチ以上も背が高かった。
七年前の、十歳と十四歳の身長差はさすがに大きかったが、急激な成長を迎えたはずの十七になってもまだこれだけ差があるとは……。
「……ガイ」
憮然とした呼びかけにも、こいつは無視することなく振り返った。
「どうした?」
やはりその顔は俺よりも上にあり、やや首をかしげて見下ろしている。
それは感じていたことを裏付けるものだった。
10センチ(四捨五入)の差は大きい。
「お前、成長しすぎだ」
「は?」
理不尽な事だと思いつつも、非難の言葉をぶつける。
誰が想像したであろうか。記憶の中のガイは十四歳で、今の俺よりずっと低かったのだ。
最近170代に入り、密かに喜んでいたというのに、184だと?
全然縮まっていないではないか。
「何食ってた」
「何って……、お前なぁ」
ガイは呆れたように頭を掻いている。
ああ、食い物だけで成長が変わるとは思っていないさ。
現に、食生活も何もかも違ったはずのレプリカも同じ体型なのだ。
家の豪勢な料理を食っていたとしてもこの身長差は同じだっただろうさ。
だが、
「もっと牛乳を飲んでおくんだったか……」
とも思うのだ。
俺の呟きを聞き、ガイはようやく合点のいった表情を作った。
「身長の話、か?
まだ十七だろ、これから伸びるさ。ファブレ候も長身の方だから」
「これから、か」
だが、今からそんな伸びが期待できるだろうか。
少なくとも185にはならねばならないというのに。
「人によっては二十歳でも伸びるって言うからな。
まぁ、そんな深刻に考えるなよ」
そう軽く笑い飛ばしたガイを睨み付ける。
深刻、だと?深刻にもなる。
幼い頃からの目標だったんだぞ。お前を超えるのが。なのにニョキニョキ伸びやがって。
ガイは俺の恨みのこもった視線に困った顔をしていた。
「一体俺にどうしろって言うんだよ」
縮めるもんなら縮め。
そんな馬鹿なこと口に出せるわけがなかった。ガキじゃないんだから。
「あ〜……とりあえず、料理は栄養満点にしてやるから……」
沈黙している俺に背を向けてそそくさと立ち去ろうとする。
ああ、そう言えばもう飯時か。
すっかり主夫と化しているガイは、料理をしに行ったらしい。
その背中を見て、衝動的に体が動いた。
「!お、おい……?」
後ろから抱きしめる。
軽く抗議の声が上がるが、すぐに諦めたようでため息をついていた。なすがままにさせてくれる。
頭半分大きいその体は意外にも両腕に収まった。収まりはしたが、包み込めはしない。……それも仕方がない。
ああ、これがこいつの温かみか。
腕から胸から、接触した部位からガイの体温を感じる。
だが、なんて微かにしか伝わってこないのだろう。厚手の服がうっとうしい。
項に顔をつける。
そうすることで少しでも体温を感じ取ろうと。
しかしその瞬間、ガイは乱暴に離れていった。
耳まで羞恥のためか赤く染まっている。
「なんだ、何か期待でもしたか?」
「あほっ」
今自分がどんな顔をしているか、よく分かる。
この目の前の自分より大きい男を愛おしく想い、だからこそ上位に立ちたくて悪戯に笑っていることだろう。
そんな俺にガイは一言罵倒を捨て置き、立ち去っていった。
顔を赤くしているガイの後ろ姿を見送りながら、思う。
いつか、そう遠くない未来に背を追い越して後ろから抱きしめて包み込めるようになる。
そうしたら、その耳元に愛を囁こう……。