「99、100!!」
うれしそうな声が耳を打つ。
木を剣代わりにして素振りをしている少年の声だ。
ちなみに、いつもの剣は友人に条件付きの勝負をして負けたため取り上げられ中。
カイリはいつもより重い流木に振り回されている少年を呆れたように見やる。
100回という数を振り切ったために満足そうにしている少年は、そんなカイリの視線に気づいていない。
「カイリ!100回達成〜!!」
どうもこの彼は友人がやることに負けまいとする気質があるらしい。
昨日も「毎日50回素振りしてるんだ!」と言った彼を鼻で笑った彼の友人。
それを見返すために100回に挑戦していたのだ。
子供っぽいな、と彼を評するけれどまだ十歳だし年相応。男の子は子供っぽいもの。ティーダも、ワッカも、他の同年代の子を見てもそう思う。
「おめでとう、ソラ」
「ありがと!リクに言ってこよーっと」
と、ソラが一歳年上の友人、リクがいるところへ走って行こうとしたところ、ちょうど目的の人物が現れた。
木の剣を持っている。
「あっ、リク!
へへーん、素振り100回やったんだ!」
本当に自慢げに胸を張っているが、リクの反応はあまり変わらなかった。
つまり、またしても鼻で笑われたのだ。
「何で笑うんだよ!」
「100なんてまだまだだ」
「それじゃぁ200回やるよ!」
「そんなことしたら遊べなくなるぞ?」
「う゛〜〜、リクは?リクは何回?」
「少なくとも100よりずっと多い」
軽くあしらわれたソラは唸ってリクを恨めしげに睨む。
カイリはとりあえず口を挟まない。
二人の喧嘩に入ればますます加熱してしまう。たまには仲裁できることもあるけれど、それはやっぱりたまになのだ。
「じゃぁ1000回やるっ!」
「やれやれ」
投げやりな対応にソラはじたんだを踏んでいる。
よくこんな話題で熱くなれるなぁ。
「じゃぁやったら前の約束守ってくれる!?」
約束?
カイリもリクも、ソラの言葉に首をかしげた。
「約束なんてしたか?」
「うん!まえの勝負の時!」
ああ、とリクは手を打つ。
「これ(剣)を返せってことか」
「ちーがーうー」
「なんなの?」
「俺とつきあって!」
「……どこに?」
「そうじゃないんだ、カイリってば鈍いなぁ。
普通付き合ってって言ったら恋人になってください、ってことじゃないか」
「んな約束してねぇーっっ!!」
珍しく余裕のない大声でリクが言葉を否定した。
それもそうだろう。
カイリは納得したように頷く。
「リクは覚えてないみたいよ」
「えー、言うこと何でも聞いてくれる、って言ったよ」
「俺に勝ったらだろう!
それで俺が勝った!」
「勝ったら言うこと聞いてくれる、って約束は覚えてるんだね」
「勝・て・た・ら・な!」
「リク、安請け合いはやめた方が良いんじゃない?」
「負けなければいいんだ」
「…………」
「よーし、素振りこれから1000回するぞー」
「………………」
「俺はそれ以上やってやる」
「……………………」
「絶対勝つから!」
「…………………………待って!」
「「どうした?」」
「リクに勝ちたいならまず私を倒してからにしなさいっ!」
「へ?」
「リクを渡すわけにはいかないもの、勝負よ!」
「いや、ちょっとそれは……」
いくら何でも女の子。
本気で勝負しようにもやはりどこか遠慮してしまうところがあるのだ。
しかし彼女は本気のご様子。
「私これから修行してくるわ!
毎日素振り10000回よ!」
と、リクが持っていたソラの剣を持って去って行ってしまった。
「カイリ、10000回って……」
「よし、俺も負けないぞっ!!」
ソラもまた流木を手に走っていった。
3桁からいきなり5桁に飛んだ修行の回数にリクは呆然とし、彼らを見送ってしまった。
「リクに勝ったら何でも言うことを聞いてもらえる」という噂が広まって、この後勝負の嵐が吹き荒れることなど、今のリクには想像もつかなかったのだった。
「とりあえず俺も素振りするか……」
目標は、10000回