今年は凶作の年なのだろうか。
待っているのになかなか出てこない。
実らない。
「どーしてかなー」
ヤシに似た木を見上げてソラは呟いた。
いつもならその呟きを聞いてリクかカイリが「なにが」と聞き返してくれるのだが、残念ながら今日は二人ともこの島に来ていない。
というか、ティーダもワッカもセルフィも、だれも来ていない。
理由は簡単。
雨だからだ。
さすがに雨と風で海が荒れる嵐の中、ボートでここまで来ようなんて気にはならないのだろう。
「どーしてかなー」
ソラがここまで来たのはパオプの実のためであった。
いつもならあの星形の実がすでになり、いくつも実を落としているはずなのに、今年はまだ一つもなっていない。
今までにないことで心配になったのだ。
木のてっぺんには花が二つ。
きっとこれで実もなるだろうけど、この風と雨だ。どうなるか分からない。
例年通りだったらこの雨期にかかる前だったのに。
「今年は無理なのかな」
とりあえず雨風から花を守るために大きめの布を手に木に登り始めた。
風の抵抗が大きくてなかなか登れない。布がまた風をうけて邪魔をするのだ。それでも上へと手を伸ばす。
ズルッ
濡れた木の皮は滑りやすくて。
突風の煽りもうけて。
落ちた。
頑張ったせいもあり、高いところから落ちることとなってしまった。
思わず目をつぶってしまいながら浮遊感と落下を感じた。
うわーっっ
地面に強くたたきつけられると思ったけれど、なにか地面とは違う感触が??
それでも衝撃はあり、痛いものは痛い。
「いったーっっ」
「それはこっちのセリフだ」
「え?」
気が付けば、下にリクがいた。
「な、なんでいるの??」
「外見たらどっかのバカが船こいでるのが見えたんだよ。
いい加減どけっ」
どうやらリクを下敷きにしたことで衝撃は緩和されていたようだ。その代わり、被害はリクの方が大きかった。
「ごめんっ、大丈夫!?」
「痛いに決まってるだろ!
ったく、こんな日に一体何やってんだ!?」
大人だって船を出さない。いや大人こそ出さないのか。その嵐の中、あのボートでこの孤島に来たのだ。無謀と言っても過言ではない。
リクはそれを承知していながら来てくれたらしい。
「だって……」
それを嬉しく思いながらも、ここに来た理由を言ったら怒るだろうなぁということは予想が付くのでなかなか言い出せない。
ああ、雨が痛い。
「だって?」
リクの催促の言葉も痛い。視線が鋭いんだもん。
「パオプの実、心配だったんだ」
「はぁ?そんなことか」
やっぱり、呆れられた。怒るを通り過ぎたのかな。
「そんなことで悪かったね」
ふくれて言うと、
「悪い」
と断言した。容赦ない。
「とりあえず、場所移動するぞ」
「あ、うん。歩ける?」
「平気だ」
リクはそう言って立ち上がろうとしたけど、ふらついて倒れてしまいそうで、思わず手を出してしまった。「大丈夫じゃないじゃん」
「うるさい、誰のせいだ」
「……俺」
「分かってるなら反省しろ」
「うん」
そんなことを言いながらとりあえず小屋に入った。隙間から雨と風が入ってくるけどまだまし。
「で、なんでパオプの実をいちいち気にしてるんだ?」
「今年さ、なるの遅かったでしょ」
「そうだな」
「もしかしたら、今年ならないかもしれないじゃん」
「それで?」
「だから、ならなかったら困るじゃん!」
「だからなんで?
別に困ることはないだろ」
「食べれないじゃん!」
「そりゃぁなければ食べれないだろうし」
「困るじゃん!」
「困るか?」
「いつか一緒に食べる人を見つけるんだから!」
「今年じゃないだろ。どう見積もっても」
失礼!今年見つからないって言いたいの。
「これから先あるかもしれないじゃん」
「じゃぁ今年にこだわらなくたって良いだろ」
「これから先ならなかったらどうするの!?」
「んなことあるわけないだろ」
「え、そう?」
「そう」
「なーんだ」
納得した俺を見てリクは大きくため息をついた。
そんなに呆れることかな?
「それで、どうするんだ?
この嵐、この後がピークだぞ」
「帰れないね」
「わかってんのか」
「ここで過ぎるの待とうよ。カイリもいないで二人、って久しぶりじゃん」
「……まぁ、いいけど」
実らないと思ったけど、そんなことないらしい。
恋人を結びつける木の実は、リクの言うとおり、毎年毎年その星の形になった。
それを教えてくれた人と、嵐の中心配してきてくれた人と食べさせあえるのは、いつになるのかなぁ。
リク、パオプの実を一緒に食べたい人、あの年にもう見つけてたんだよ。