「僕がクラトスさんのこと、どれだけ好きか知ってる?」
間もなく就寝時間か、という時、幼い恋人が突然口にした問いは、実に幼い事。
しかし重要なことであった。
「随分と、唐突だな」
「いいでしょ、別に。それでどう?」
一体どんな答えを期待しているのだろう。
言葉で言い表せと言うのだろうか。
「ふむ……」
「……もういいよ」
落胆したような声のトーンに多少焦りを覚える。
深く考えすぎたか。
「すまない、あまりに唐突でどうすればいいか見当がつかなくてな」
「真面目だなぁ。そこが良いとこでもあるんだけどさ…」
ふぅ、と、もはや諦めの入ったため息をつかれると弱い。
話の続きを促すことにした。
すると悪戯を思いついた子どもの顔をして両手を広げて見せた。
「こーんなに!だよっ」
その姿に一瞬よろめく。
自慢げに言うその姿は可愛らしいことこの上ない。恋人の欲目を差し引いても、とびきりの可愛さだ。
それを愛おしく思う反面、沸々と悪戯心が芽生えてくる。
「では、私はこれだけだな」
と、己の手をあらん限り伸ばしてみる。
当然背丈で勝っている私の手で作られた円の方が大きさが勝っている。
私の行動を見たとたん、それはずるい、と目線が訴える。
ちょっとした悪戯心だ。たまには大目に見てくれ。
さて、どう出るか。と眺めていると、思いついたようにその場で飛び跳ねていた。が、どちらにせよ身長差が縮まらないので意味がないと悟ったらしい。またしばらく考え込んでしまった。
悪戯が過ぎただろうか。
ジーニアスを思う気持ちなどそう簡単に表せる物ではない。
そう正直に言って謝ってしまおうか。
そんな事を考えていると、ジーニアスの表情が変わった。
一瞬無表情になり、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
窓の外を指さし、顔を正面から見つめて静かに言った。
「じゃぁ僕は、あの星に行くくらい、クラトスさんのことが好きだよ。愛してる……」
指さされた星はデリス・カーラーン。
だから、僕も連れて行って。
小さく付け加えられた言葉。
その言葉と同時に、あらん限りの力で抱きしめてくる。
ああ。
どれだけ好きか、という問いは不安を表していたんだな。
小さな体を抱きしめ返して
「それは……敵わないな……」
頭を撫でる。
嗚咽が静かな部屋に響いた。
何も言えず、何も言わず、時間だけをすごした。
もうデリス・カーラーンへ行くことは伝えていた。
そう、行くことを。
けして連れて行くとは言わなかった。
「さみしくなるね」と言いながら、笑顔だった。どんなに虚勢を張っていたのだろう。
しかし、連れてなど行けない。
待っていてくれ、と言えるほどこの地を離れるのは短くもないだろう。
だが……。「私も、愛している。あの星に行って、帰ってくるほどに」
必ず、お前の元に、お前の元だけに帰ってこよう。