衝動的台湾旅 【2日目】


2002年10月11日(金)

@台北駅でパニック
 
朝7時半頃に目が覚め、ベッドから下りる。周りは皆眠っているので、静かに部屋を出てシャワーを浴びに行った。一人旅は時間に追われないから嬉しい。約1時間後、荷物をまとめ、他の人達がまだ眠っている中、宿を出て、国鉄の台北駅に向かった。
 早速時刻表で高雄行きの特急「自強号」の出発時間を確認する。一番近いので9時55分だったので、すぐに「台北→高雄 自強号 9:55」とメモを取り、そのまま切符売り場の係員に渡した。レジには「845元」(約3130円)と表示され、白い1000元札を渡すがつき返され、もう1つの青い1000元札を渡すと、切符とお釣りの155元が返ってきた。
 この旅行に出る前、3年前に台湾に行った妹が白い1000元札を2枚持っていたので、両替したのだ。そして、台北の空港で両替すると1000元札は青かった。この3年間の間に札が変わっていたのだ。しかも、受け取って貰えない。今日は平日だが、明日明後日は銀行は休み。電車に乗ってしまうと屏東まで6時間はかかるから、着いたら銀行は閉まってしまうだろう。
 今しか両替出来るチャンスはないと思い、慌てて駅内に銀行はないかどうかぐるぐる探したが、見当たらない。人に聞いても言葉が通じない。電車の出発まで後30分。駅のインフォメーションセンターを見つけ、そこで聞いてみる事にした。若くてカワイイ女の子が受付をしていた。僕は英語で尋ねた。
「日本語か英語話せますか?」
 すると彼女はたどたどしい口調で、
「日本語なら少し話せます。ゆっくり話して下さい」
 僕は事情を説明した。すると彼女はラミネートに入った地図を出して、三越デパートの裏に銀行があるからそこに行って替える様に言った。僕はお礼を言ってその場を去った。

 重たい荷物を抱えて、混雑した横断歩道を渡り、10分後、銀行を見つけた。警備員にお金を替えて欲しい旨を伝えると、日本の銀行と同じ様に順番待ちの紙を取って、ソファに座って待つように言われた。番号は23番、今は19番の接客中。焦りが募ってくる。
 電光掲示板に22番の表示がされ、もうすぐだと思っていると、何やら放送はあるが、番号は変わらない。だが、次の放送があると別のおばさんが立ち上がった。彼女の紙を見ると24番だったので、僕は慌てて、片言の中国語と身振り手振りで、「自分は日本人だから放送が分からない」事をアピールすると順番を譲ってくれた。そして旧1000元札を2枚出すと、ものの5秒程で両替してくれ、おばさんにお礼を言って銀行を出た。

 再び走って駅まで戻った。出発まで後10分。銀行を探したお陰で朝から何も食べていなかったので、セブンイレブンで肉まん2つとペットボトルのスポーツドリンクを買い、3分前にプラットフォームに辿り着いた。一軒落着。

A台北〜高雄 列車の旅
 台湾が誇る特急列車「自強号」の先頭車両は、韓国の超特急「セマウル号」とそっくりだった。車内に入ると、「HYUNDAI」の文字があった。やはり、韓国製なのだ。椅子は簡素な作りではあるが、足が十分に伸ばせるスペースはある。通路を挟んで2席ずつと、新幹線などに比べ、車体が小さいのが分かる。
 席に着くと、早速肉まんにかぶりつき、列車は出発した。             
 車窓からの風景は本当に日本と変わらない。駅から離れると田園風景に、再び駅に近づくと街、その繰り返しである。列車の中も日本とほとんど変わらない雰囲気だが、所々にいる団体の話し声、時折鳴る携帯電話を取る人達の話し声が、周りに気を使っている様子は全くなく、かなり大きい。それでも、ガイドブック等を眺めたりしていると眠気は自然と訪れてくるものである。
 途中、2度ほど車内販売があり、美味しそうな駅弁が売られていたが、ついタイミングを逃してしまい、空腹の時間を過ごす。高雄に着くまでの辛抱だ。
 日本の同じ様な風景も、台中を過ぎる頃には椰子の木が目立ち始め、そのアンバランスさに心地良さを覚える。
 大阪から台北までのフライト時間よりも長かった列車の旅は、退屈ではあったが、意外に早く時間が過ぎた様に思えた。

Bいざ屏東へ
 高雄駅に到着した。時計は2時を回っている。早く屏東へ行きたい気持ちもあるが、まずはここで腹ごしらえをしようと駅前の食堂に入り、壁に貼られたメニューを指差し、肉飯らしきものを頼んだ。すぐにそれはやって来たが、普通の小さなお茶碗にひき肉が乗せられていた。20元(約74円)と安いが、さすがにこれだけでは足りないので、追加で30元(約111円)のアサリ汁を頼んだ。肉は甘辛く煮込まれてあり美味かったが、それよりも追加で頼んだアサリ汁は最高に美味かった。味付けは塩コショウとショウガだけだが、アサリのだしがしっかり出ている。列車での疲れが少しずつ取れていくようだ。50元コインを食堂のおばさんに渡して店を出て、駅で屏東行きの切符を買った。
  屏東行きの普通列車も日本の車両に似ている。横長の椅子が両端にあるスタイルだ。乗客はおばさん、小さい子供を連れた母親が多い。平日のこの時間は確かにそうだろう。30分程で屏東駅に着いた。
 駅の公衆電話からペイに電話をかけた。
「今、屏東駅に着いたんだけれど」
「そう。そこからセブンイレブン見える?」
 後を振り向くと、横断歩道を渡った所にセブンイレブンが見えた。
「うん、あるよ」
「じゃあ、10分後に着くと思うからそこで待ち合わせね」
 そう言ってペイは電話を切った。そして僕は2,3分歩いてセブンイレブンに行き、そこで待つ事にした。その間、いろいろな女の子が行き交った。だが、誰もこちらを向こうとはしない。そして30分が過ぎた。いくら何でも遅すぎると思い、もう一度携帯に電話した。
「今どこ?」
「駅よ」
「僕もずっとセブンイレブンにいるんだけれど」
「どこのセブンイレブン?」
「駅から右手の交差点を越えた所だよ」
「そのセブンイレブンじゃないわよ。駅の中にもセブンイレブンがあるの」
「そうなんだ。全く気付かなかった」
「あなたのいるセブンイレブン、分かったわ。今からそこに行くから待ってて」
「うん、分かった」

Cペイ
 待つ事5分、スクーターに乗った女の子に、
「トモサン?」
 と声を掛けられた。紛れもなく彼女がペイである。メガネを掛けた素朴な感じの女の子であった。髪の毛は最近の日本人女性と同様、やや茶色く染めている。握手を交わした後、ヘルメットを手渡され、後に乗るように言われる。台湾のスクーターは50CCでも結構大きく、シートも2人乗り出来る様になっている。
 僕はまだ宿を決めていなかったので、ホテルに連れて行って貰う様に頼んだ。女の子のバイクに乗せて貰った事等なかったので、新鮮な感じがする。
 連れて行って貰ったホテルは駅の目の前にある、「飛馬大飯店」だった。日本のラブホテルと同じ様に、部屋の写真がパネルになって見ることが出来る。聞いた話によると、台湾の大体のホテルには「休息」があり、ビジネスホテルとラブホテルの境目がないらしい。
「どの部屋がいいですか?」
 フロントの女性に聞かれたので、一番安い部屋、と答えると、朝食付きで980元(約3630円)と言われる。「おおしろ」の倍以上したので一瞬ためらったが、ペイに迷惑を掛ける訳にもいけないので、オッケーし、鍵を受け取ってエレベーターで8階の部屋に行く。
 アルミ製の安っぽい扉を開けて部屋に入る。部屋は清潔だが薄暗く、カーテンを開くとトイレとバスルームが丸見えになっている。だが、エアコン、テレビ、冷蔵庫、トイレ、バスタブ、給湯器がついており、日本のビジネスホテルよりは広い。
 荷物を下ろし、ペイと少し話をした。彼女は日曜日まで休みだが、休み明けに試験があるらしく、今日しか空いていないそうだ。将来は小学校の先生になりたいらしい。僕は彼女の事を全然知らないが、よく喋る明るい感じの子で良かったなと思った。 屏東の街は何も見所がないらしく、どこにも連れて行ってあげられないというので、まずはコーヒーでも飲んで、その後、夜市に行こうと提案した。
 鍵をフロントに預け、彼女のスクーターの後ろに乗る。まず、スターバックスに入り、同じアイスコーヒーを注文する。今日は僕が払うつもりだ。1つ105元(約390円)と日本のスタバより高い。窓際に腰掛け、そこで1時間程度話をする。
 
  外も暗くなり、次に夜市に連れて行って貰う。規模は割と大きく、見ているだけでもなかなか楽しい。僕は前の台湾旅行で夜市に全く行かなかったが、台湾の夜市は毎日がお祭りみたいで本当に楽しい。日本の夜店は、イベントの時にしか見られないが、自分の行きたい時にいつでも行けるのが魅力である。
 ペイに勧められて、牡蠣オムレツを食べるが、味はまあまあ。だが、ボリュームは結構あり、これだけで昼食にはなる。僕はコーヒーも牡蠣もちょっと苦手なのである。
 台湾名物、パパイヤ牛乳を飲みながら、夜市を出、大きな寺に入る。この寺にはエレベーターが付いていたが、そこには中国語で「学生はエレベーターを使ってはいけません」と書かれていた。理由をペイに尋ねるが、何故か分からないそうだ。
 次にCDショップに入る。僕は海外に行くと必ず寄るのがCD屋なのである。日本のCDも結構置かれていたので、ペイに尋ねてみた。
「日本の音楽って台湾で流行っているの?」
「音楽だけじゃないわ。ドラマもアニメもファッションも全てよ」
 それを聞くとやはりちょっと嬉しい。台湾と香港では日本のメディアはかなりポピュラーな様である。ペイが勧めるので、アメイと言う女性歌手のベスト盤を買った、318元(約1176円)と日本に比べると遥かに安いが、どうしてもタイ等の物価と比較してしまい、高く感じる。

 そのままスクーターのある場所に戻り、ホテルまで送って貰い、ペイは家に帰って行った。わずか4,5時間だったが楽しかった。部屋に入る前に駅前のコンビニに行き、おにぎりとおでん、コーラを買った。
 部屋に戻り、テレビを見ながら2度目の夕食にする。おにぎりは酢飯だった。暑いから腐りやすいのだろう。テレビのあるチャンネルでは、「日本で大人気のやせ薬が台湾に上陸!」と言う宣伝が繰り返し行われ、「ある日本人女性は、110キロから40キロまでにダイエット成功!」という実例(?)を流していた。やはり日本ブームなんだなと思った。
 暫くすると電話が鳴ったので、心当たりはないが取ってみた。すると中国語で、
「小姐・・・・・・・・・・(以下聞き取れず)」
 と電話の向こうからおばさんが喋っていた。間違いない、「女の子はどうだ?」と言っているんだろう。
「不要」
 の一言で、電話が切れた。

 明日は高雄を観光したいと思うが、移動ばかりでさすがに疲れた。                                                  

台湾の特急列車「自強号」
台湾版キオスク
屏東駅前
飛馬大飯店